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凶暴な獣

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その遺跡に棲み付いたという凶暴な獣は、<大トカゲ>だった。

体長は人間の大人の倍以上、体重はそれこそ三人分以上。なのに動きは素早い上に硬い鱗に覆われて、一人や二人じゃ簡単には勝てない相手だ。

だけど、

「俺達なら、大丈夫」

アーストンは自信満々だ。

何しろ、不死不滅の魔法人形である私がいるからね。私を囮にしてその隙にアーストンとジルとカインとセリスで総攻撃すればいい。

それを『酷い』とか『ズルイ』とか言う人間もいるかもだけど、関係ないよ。私自身がそれを望んでるし、一番確実なんだから。

アーストン達は、もちろん自分のためでもあるけど、同時に、私のためにも冒険者を続けてくれてるんだ。だったら、死なない滅びない私が囮役をするくらい、なんてことない。

何より、そういう、確実に生き延びる方策を確実に取れるような者じゃなくちゃ冒険者は務まらない。生きてる人間を囮に使うのは<非情>の誹りを受けるのも当然だとしても、私はそうじゃないからね。

死なない滅びない私のためにアーストン達が危険に曝されるのは本末転倒だよ。

でもまあ、冒険者じゃなくて研究者であるスリガンが、

「お気を付けて」

と私を案じるのも、まあ、当然なんだろうけどね。

それでも、

「大丈夫…」

私はきっぱりと言って、アーストン達と一緒に遺跡へと向かった。

もちろん、先頭は私、続いて槍を構えたアーストン、そしてナイフを手にしたカイン、ボウガンを手にしたセリス、そして殿しんがりはアーストンと同じく槍を構えたジルという布陣。

普段は剣を使うことの多いアーストンだけど、大型の獣が相手だとやっぱり間合いが取れる槍が有利ってことで。剣も腰に下げつつね。

でも今回は、まず、<大トカゲ>がどの程度のものかを確認するのが目的。事前の情報だけだと、大きさや数が食い違ってたりってことがあるから。

こういう慎重さも大事。無謀な冒険者は長生きできない。

だけど私には関係ないから、どんどん先に進む。

すると、崩れた壁の陰から、のそり、と現れたものがあった。<大トカゲ>だ。

大きい。話に聞いていた以上の大きさだ。何しろ<大トカゲ>は、百年くらい生きる上に死ぬまで成長し続けるらしいから、過去には、体長は大人の三倍、体重は大人五人分とかいうとんでもないのもいたそうだ。

今回はそこまでじゃなかったけど、大きいのは間違いない。

でも、アーストン達は慌てない。

「よし、三人は高いところから攻撃だ! 足元には気を付けろ!」

大きすぎる<大トカゲ>は、高いところに上れない。

それを活かした戦法なのだった。

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