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模範的な解答

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それは、()を含んだ計算の順序の問題でした。ミコナはそれを、順を追って式に表し、解答しました。すごく模範的な解答でした。

「はい、正解です。素晴らしいですね」

マインはとても嬉しそうに笑顔で手を合わせて声をあげました。その上で、

「この問題は、ここが、よく間違えられます。()の中が先に計算されるんです。割り算掛け算よりも先にです。それを、よく覚えておいてください」

ミコナの解答を用いて、丁寧に説明していきます。その様子がどこか可愛くて、ミコナはマインのことが好きでした。その分、ちょっと、頼りないところもあるけれど。

生徒からも、

『マインちゃん』

と呼ばれていて、威厳という意味では残念なところもありつつ。

そんなマインが、

「それでは今から小テストを行います」

と口にすると、教室全体が、

「えーっ!」

とどよめきました。いつもの光景ですけど、ミコナは慌てません。小テストで出る問題は、彼女にとっては、何も難しくないからです。それこそ、ちょっとしたゲームのようなものでした。

どよめく生徒たちの中で平然としてるミコナを見てマインは、

『ミコナさんは、いい子すぎます。そういうところが、逆に、見てて不安にさせられますね』

そんな風にも思っていました。すごく<いい子>だった生徒が、思春期の頃を境に豹変することがあるという話は、教師になる前にも、教師になってからも散々聞かされてきて、それで、ミコナを見てるとその話が頭をよぎってしまうのです。

だからマインは、ミコナのことをとても気にかけてくれていました。何か少しでも不穏な様子があったらすぐにでも対処できるようにと、注視していたのです。担任になってからずっと。

だから今日も、授業が終わると、ミコナのところにやってきて、

「ミコナさん、どうですか? 調子は。何か辛いことはありませんか?」

そんな風に声をかけてきてくれます。

だけどミコナの方は、まったくいつも通りなので、

「はい大丈夫です。ありがとうございます」

笑顔でそう返しました。

なのに、マインは、さらにぐいっと顔を寄せてきて、

「本当ですか? 無理はしていませんか?」

と、再度、訊いてきたのでした。

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