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相手を尊重すればこそ

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店主の身に降りかかったことは、世の中の多くの人達にとってはとんでもない不幸としか思えないものだったのかもしれません。

ただ、『これを不幸と思わなければいけない』というのは、きっと、違うんでしょうね。『みんなが不幸と思うはずだから、不幸だと思うのが当然』というのが、実は本当の不幸なのかも。

そのことによって救われたのなら、当人にとってはそれでよかった。なのに他人があれこれ口出しすることで、せっかく救われたのに余計に煩わされてしまう。

救いが救いでなくなってしまう。

それじゃ意味がないんでしょう。

ハカセは、あの店主にとって救いになった話だったから、こうしてウルにも話した。

『そういうことか……』

ウルも、納得していました。

こうやって、<普通>というものに囚われすぎないからこそ、ハカセもママも幸せを感じられていたんでしょう。加えて、五つの<かぷせるあにまる>に分かれてしまっても、そのこと自体は受け止められてる。

だから、店主が自分の身に降りかかったことを受け止められているのも分かってしまう。

ここで勝手に憤って、『可哀想!!』と声を上げたりするのは、あの店主にとってはそれこそ大きなお世話なんでしょうね。

ハカセは、相手を尊重すればこそ、店主の判断を受け入れた。だからこんな風に、ただの世間話のように話せる。

『まったく……ハカセらしいよ』

ウルは改めてそう思いました。そして、自分が安心するのを感じました。ハカセがハカセのままなのを、こういう形でも実感できて。そして、

『ああ、こうやって一緒に出掛けて良かったな……』

とも。

自分の考えに拘るのは大事かもしれない。だけど、だからってそれを他人に押し付けようとするのは軋轢の元。

ハカセは自分の生き方を考え方を守りながら、でも、それを誰かに押し付けようとしていない。

それはつまり、ミコナに対しても一方的に押し付けようとしないというのも表しているんでしょう。

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