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いつものカフェ

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目的の物も手に入れて、ハカセは再びバイクに乗って、ウルが言った<いつものカフェ>へと向かいました。

それは、ハカセとママが何度もデートの時に立ち寄ったカフェでした。

ママがそこのパンケーキがお気に入りで、ハカセは、結婚してからも自分の用事に付き合ってくれたお返しにという形で一緒に行ったことがあったのです。

ただ、ママが亡くなってからは、辛くて行くことができなかった。何より、中年の男性が一人で行くにはいささかハードルも高かったし。

今回だって、他人からはハカセ一人に見えるでしょう。けど、ハカセ自身はウルが一緒なら平気でした。

「良かった。まだあった」

記憶を手繰ってカフェがあった場所に行くと、少し外装は変わってましたが、店名もそのままに残っていたことに、ホッとします。

そのカフェは、お客のほとんどが女性で、男性もいるものの、皆、女性が同伴でした。

そんな中に、『猫背で痩せっぽち』という冴えない風貌の中年男性が一人で入ってくると、さすがに少なからず視線が集まります。

それでも、露骨に嫌悪感を露わにするお客もほとんどいなくて、ハカセ自身、ウルが一緒ということで気にすることなく店員の案内で席に着きました。

店員も若い女性でしたけど、こちらは、ハカセの行きつけのさっきの店とは違って、愛想良く迎えてくれます。と同時に、ハカセの肩に乗ったウルを見て、「くすっ♡」と笑顔を浮かべたりも。

なのにハカセはそれには気付かず、不慣れな様子でメニューを広げました。

「では、注文がお決まりになりましたらチャイムを鳴らしてください」

店員の女性が精一杯の営業スマイルでそう言っても、ハカセは、そちらに視線を向けることさえなく、

「あ、はい…」

小さく応えただけ。

そんな相変わらずの姿に、ウルも少々苦笑いだったのでした。

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