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こういう<気持ち>と向き合う時には
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「……」
ハカセに縋りついて泣くミコナを、ウル達は黙って見守りました。ガーはもらい泣きしてましたけど。
ただ、こういう時は辛辣なことを言ってきそうなオウも、羽を組んでそっぽは向いてましたけど、何も言ってきませんでした。
さすがに憚られたのかもしれません。
そうして十分ほど泣きじゃくるミコナを、ハカセはただ優しく抱き締めます。ミコナが落ち着くまで、気持ちをすっかり吐き出してしまえるまで、ただただ待ってくれました。そういうハカセだから、ミコナは安心して信じられるんです。
ハカセ自身、自分の気持ちについて他人からあれこれ指図されるのが苦手でした。他人の都合に合わせて自分の気持ちを切り替えるとか、どうすればそんなことができるのか分からなかった。
もちろん、いつまでも落ち込んでいるわけにはいかないのは分かっていました。分かってるけど、それを他人からとやかく言われても、その通りにはできない。
自分のペースで、自分が納得できる形で、自分の気持ちと向き合いたかった。
愛する女性を守ってあげられなかった不甲斐ない自分自身と……
自分がそうだから、ミコナに対してもあれこれ指図しない。特に、こういう<気持ち>と向き合う時には。
そうして、泣けるだけ泣くと、自然と収まってきました。ミコナの涙と鼻水とでハカセの白衣がぐしゃぐしゃになって、ようやく。
でも、いいんです。白衣はまた洗えばいい。汚れたって洗えるからこその白衣です。
泣き止んでただハカセの白衣に顔をうずめてるミコナに、
「どう? 落ち着いたかな……?」
ハカセは穏やかに問い掛けました。あくまで『問い詰める』感じじゃなくてです。するとミコナも、
「……うん……」
って。
だけどそれからまた五分ほど待って、ようやくミコナが顔を上げられたところに、
「顔を拭け……」
タオルを持ってきてくれたのは、オウだったのでした。
ハカセに縋りついて泣くミコナを、ウル達は黙って見守りました。ガーはもらい泣きしてましたけど。
ただ、こういう時は辛辣なことを言ってきそうなオウも、羽を組んでそっぽは向いてましたけど、何も言ってきませんでした。
さすがに憚られたのかもしれません。
そうして十分ほど泣きじゃくるミコナを、ハカセはただ優しく抱き締めます。ミコナが落ち着くまで、気持ちをすっかり吐き出してしまえるまで、ただただ待ってくれました。そういうハカセだから、ミコナは安心して信じられるんです。
ハカセ自身、自分の気持ちについて他人からあれこれ指図されるのが苦手でした。他人の都合に合わせて自分の気持ちを切り替えるとか、どうすればそんなことができるのか分からなかった。
もちろん、いつまでも落ち込んでいるわけにはいかないのは分かっていました。分かってるけど、それを他人からとやかく言われても、その通りにはできない。
自分のペースで、自分が納得できる形で、自分の気持ちと向き合いたかった。
愛する女性を守ってあげられなかった不甲斐ない自分自身と……
自分がそうだから、ミコナに対してもあれこれ指図しない。特に、こういう<気持ち>と向き合う時には。
そうして、泣けるだけ泣くと、自然と収まってきました。ミコナの涙と鼻水とでハカセの白衣がぐしゃぐしゃになって、ようやく。
でも、いいんです。白衣はまた洗えばいい。汚れたって洗えるからこその白衣です。
泣き止んでただハカセの白衣に顔をうずめてるミコナに、
「どう? 落ち着いたかな……?」
ハカセは穏やかに問い掛けました。あくまで『問い詰める』感じじゃなくてです。するとミコナも、
「……うん……」
って。
だけどそれからまた五分ほど待って、ようやくミコナが顔を上げられたところに、
「顔を拭け……」
タオルを持ってきてくれたのは、オウだったのでした。
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