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第二幕
世間は俺の代表作としてあの映画を評価するかもしれないけど
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そうだ。
『客の意見には耳を傾けるべきだ』
とか言ったって、そのほとんどはただ罵りたいだけの、自分のストレスを誰かに転嫁したいだけの、戯言なんだ。本当に有益な<意見>なんてごく一部でしかない。そしてその有益な意見は、他の何の価値もない罵詈雑言に埋もれてしまう。
それじゃ逆に意見ってのを掬い上げにくくなるだけだろ。なんで、
<アニメや映画の演出や脚本や役者の演技の出来が分かるくらいに利口な奴>
がそのくらいのことも分からないんだよ。演出や脚本や役者の演技の出来が見抜けるその目で、
<無数の罵詈雑言の中に埋もれる貴重な意見>
ってのがどれほど無駄になるかを見抜いて見せろよ。
それができない奴の意見が本当に有益なのかよ?
そんなだから結局、
<貴重な意見に耳を貸さない、無神経で鈍感な奴>
しか残れないんじゃないのかよ。
そうだ。リンネとしての演技を見ても分かるはずだ。千裕さんにはきっと<才能>があった。モデルとしての才能もあったと思う。だけど、才能があっても無神経で無責任な奴らからの罵詈雑言に耳を傾けてしまう優しさがあったから、潰されてしまったんだって気がする。
「千裕さん……大丈夫かな……」
「涼くん……」
俺が千裕さんのことを心配してても、芙美は俺を気遣ってくれた、
「私が涼くんの心を守るよ」
って言ってくれる。そんな芙美のおかげで俺はモデルの仕事を続けられた。だけど、千裕さんには……
映画の方は、結局、興行収入五十億円に届く勢いのヒット作になって、続編も決まってしまった。
だけど、その続編は、リンネも、あの俳優さんが演じたキャラも出さない方向で作られるらしい。ゲームの方で新しいキャラが追加されて人気が出てるのがあるから、そっちを出すんだって。
俺も、また、ディーク役で出ることになった。その分の契約も今度正式に結ぶことになる。
本音を言わせてもらうと、俺としてはもう、勘弁してもらいたかった。世間は俺の代表作としてあの映画を評価するかもしれないけど、俺にとってはただの悪夢だよ。仕事ならちゃんと役目を果たすつもりだけどさ。
俺と芙美も三年生になって、いよいよ進路について準備を始めなきゃいけない時期に入ってきた。まあでも、俺も芙美も、それぞれ同じ大学の文学部と薬学部を目指すことに本決まりになったんだけどな。
加えて俺は、モデルの仕事も続けるよ。学業に支障がないように社長には配慮してもらいながらね。
と、ゴールデンウイークが開けたその日、俺と芙美のクラスに転入生が。
「こんにちは。宇藤千裕です! よろしくお願いします!」
教壇の横に立ってそう挨拶したのは、千裕さんだった。でも、宇藤って……?
「それじゃ、宇藤さんは梁川くんの隣の席が空いてるので、そこにね」
担任に言われて俺の隣に来た千裕さんが、
「よろしくね。涼くん」
って笑顔で。
「あ……ああ、よろしく……」
唖然とする俺と芙美に、彼女は、
「あれを切っ掛けに両親が離婚までしちゃって。だから今は宇藤です。でももう大丈夫ですよ。過ぎたことだって割り切れてます」
と言った上で、
「あなたが芙美さんですね? モデルは辞めましたけど、涼くんのことは逆に本気になりましたから。よろしくお願いします」
「えええ……!?」
千裕さんの宣戦布告に、俺と芙美は一緒に声を上げてしまったんだ。
これはまた、別の意味で大変なことになりそうだな……
『客の意見には耳を傾けるべきだ』
とか言ったって、そのほとんどはただ罵りたいだけの、自分のストレスを誰かに転嫁したいだけの、戯言なんだ。本当に有益な<意見>なんてごく一部でしかない。そしてその有益な意見は、他の何の価値もない罵詈雑言に埋もれてしまう。
それじゃ逆に意見ってのを掬い上げにくくなるだけだろ。なんで、
<アニメや映画の演出や脚本や役者の演技の出来が分かるくらいに利口な奴>
がそのくらいのことも分からないんだよ。演出や脚本や役者の演技の出来が見抜けるその目で、
<無数の罵詈雑言の中に埋もれる貴重な意見>
ってのがどれほど無駄になるかを見抜いて見せろよ。
それができない奴の意見が本当に有益なのかよ?
そんなだから結局、
<貴重な意見に耳を貸さない、無神経で鈍感な奴>
しか残れないんじゃないのかよ。
そうだ。リンネとしての演技を見ても分かるはずだ。千裕さんにはきっと<才能>があった。モデルとしての才能もあったと思う。だけど、才能があっても無神経で無責任な奴らからの罵詈雑言に耳を傾けてしまう優しさがあったから、潰されてしまったんだって気がする。
「千裕さん……大丈夫かな……」
「涼くん……」
俺が千裕さんのことを心配してても、芙美は俺を気遣ってくれた、
「私が涼くんの心を守るよ」
って言ってくれる。そんな芙美のおかげで俺はモデルの仕事を続けられた。だけど、千裕さんには……
映画の方は、結局、興行収入五十億円に届く勢いのヒット作になって、続編も決まってしまった。
だけど、その続編は、リンネも、あの俳優さんが演じたキャラも出さない方向で作られるらしい。ゲームの方で新しいキャラが追加されて人気が出てるのがあるから、そっちを出すんだって。
俺も、また、ディーク役で出ることになった。その分の契約も今度正式に結ぶことになる。
本音を言わせてもらうと、俺としてはもう、勘弁してもらいたかった。世間は俺の代表作としてあの映画を評価するかもしれないけど、俺にとってはただの悪夢だよ。仕事ならちゃんと役目を果たすつもりだけどさ。
俺と芙美も三年生になって、いよいよ進路について準備を始めなきゃいけない時期に入ってきた。まあでも、俺も芙美も、それぞれ同じ大学の文学部と薬学部を目指すことに本決まりになったんだけどな。
加えて俺は、モデルの仕事も続けるよ。学業に支障がないように社長には配慮してもらいながらね。
と、ゴールデンウイークが開けたその日、俺と芙美のクラスに転入生が。
「こんにちは。宇藤千裕です! よろしくお願いします!」
教壇の横に立ってそう挨拶したのは、千裕さんだった。でも、宇藤って……?
「それじゃ、宇藤さんは梁川くんの隣の席が空いてるので、そこにね」
担任に言われて俺の隣に来た千裕さんが、
「よろしくね。涼くん」
って笑顔で。
「あ……ああ、よろしく……」
唖然とする俺と芙美に、彼女は、
「あれを切っ掛けに両親が離婚までしちゃって。だから今は宇藤です。でももう大丈夫ですよ。過ぎたことだって割り切れてます」
と言った上で、
「あなたが芙美さんですね? モデルは辞めましたけど、涼くんのことは逆に本気になりましたから。よろしくお願いします」
「えええ……!?」
千裕さんの宣戦布告に、俺と芙美は一緒に声を上げてしまったんだ。
これはまた、別の意味で大変なことになりそうだな……
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