YOU BECAME SO…

せんのあすむ

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第二幕

映画の宣伝のためのイベント

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 そして土曜日。今日は映画の宣伝のためのイベントだ。

 俺はいつも通りマネキンになる。というのも、映画でもディーク達の声は、ゲームの声優さんがあてるという形だったんだ。アクションとかはともかく、セリフとかはさすがにただのモデルだから。棒読みの酷いものだった。俺がしゃべってる映像も見せられたけど、

『未来永劫封印しておかなきゃ!』

 ってマジ思った。だからセリフとかは声優さんがあててくれることになってホッとしたんだ。

 それもあって、やっぱ、映画の中でも俺はあくまで、

『ディークという衣装をカッコよく見せるためのモデル』

 でいられたってのも間違いない気がする。

 ただ同時に、モデルとしてポーズを決めたりってのは俺の役目だってのもあるわけで。



 そんなこんなでイベントに行ったけど、これまでのよりもちゃんとしたステージのあるイベントホールで、控室は千裕さんと別々だった。今回はむしろ一緒にしてくれた方がよかった気がする。

 社長に、

「千裕さんの傍にいてあげたいと思うんだけど……」

 と言ったら、

「気持ちは尊重してあげたいけど、今は余計なことはしない方がいいと思う。冷たいように思えてもそれがお互いのためだから」

 そう言われて……

 正直、納得はできなかったけど、社長が困ってるみたいだったから俺もそれ以上は言えなくて。

 そうしてるうちにイベントが始まる時間が近付いてきて、

「おはようございます」

 控室を出たところで千裕さんが声を掛けてくれて。

「おはようございます」

 俺もそう返して。その上で、

「どう? 大丈夫?」

 って聞くしかできなくて……

「うん、大丈夫」

 千裕さんは笑顔で応えてくれたけど、なんか俺の目には大丈夫そうには見えなかった。実際、ステージの裏まで来た時に、

「う……っ!」

 千裕さんが手で口を押えて近くにあった洗面台に行って、

「うええええっ!」

 って、吐いてしまって。

「千裕っ!」

 千裕さんのマネージャーも慌てて。今回のイベントの責任者の人が、

「さすがにステージでこれやられるとマズいから、仕方ない、リンネ抜きでいこう!」

 と指示を出して。

「ごめんなさい……ごめんなさい……!」

 千裕さんは洗面台に顔を伏せたまま泣き出して。

『プロだったらこのくらい我慢しろ!』

 とか言う奴がいると思うけど、モデルだって人間なんだよ。殴られたら痛いし怪我もする人間なんだよ。酷い言葉で殴られたら心が痛いし心の怪我だってする。

 自分が仕事してて客に酷いこと言われたら被害者ぶるんだったら、もういい加減にモデルだって芸能人だって人間なんだって現実を見ろよ!

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