YOU BECAME SO…

せんのあすむ

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第二幕

主役の二人に、挨拶をしてもらいましょう!

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「涼くんも打ち上げに参加しますよね!?」

 そう言って俺の手を掴んできたのは千裕さんだった。最初は俺と顔を合わすだけであわあわしてたのに、ここで何度も顔を合わしていろいろしゃべってる間に慣れてきたみたいで。

「あ、ああ。そうだな。挨拶くらいは参加しとくか」

 俺も、さすがにこのままいなくなるのも申し訳ない気がしたから、打ち上げの会場へと移動した。

 そこには、映画に関わったたくさんの人達が集まってた。こうやってたくさんの人がいてこそ作れるんだなって思った。

 それに、みんな人間なんだ。ゲームのNPCじゃない。名前も知らない、顔も覚えてない、現場ではほとんど直接会ったこともない人も、人間なんだよ。嫌なことを言われたら嫌な気分になるし、落ち込んだり凹んだりもするんだ。

 そういうことをきっちり教えてくれた俺の両親と小父さん小母さんに感謝しないといけないな。そうじゃなきゃ俺は、自分が映画の主役にいきなり抜擢されたことに浮かれて調子に乗ってたかもしれない。こんな、『たまたま転がり込んできただけの主役』でさ。

 なんかそれ、カッコ悪いと思うんだ。俺が自分で売り込んでそれで認めてもらったんならまだ分かるけど。

 なのに、

「では、主役の二人に、挨拶をしてもらいましょう!」

 総監督の人がそう言って、俺と千裕さんを見た。

 そうだった。こういうのがあるから逃げたかったんだ。撮影で演技するのもモデルとしてポーズとんのも言われたことをしてればいいだけだから気楽なんだけど、こんな風に改まって人前に出るのは苦手なんだよな。今でも。

 今日は撮影の最終日だってことで顔を出してた社長を見て助けを求めるけど、社長は、ぐっと親指を立てて、

『頑張って!』

 って声には出さずに口を動かした。

『うええ……』

 オロオロする俺を千裕さんが手を掴んで引っ張って、壇上に上がってく。彼女って、こんなタイプだったっけ……? 映画の撮影に参加していろいろ経験してるうちにはっちゃけたのかな……?

 なんかもうあわあわしてる俺と違って、千裕さんはマイクを持って堂々とした様子で、

「こんにちは! リンネ役の真通まさみち千裕ちひろです!」

 しっかりした感じで挨拶して、

「私は、たまたまたまたまモデルになれただけですけど、この涼くんに憧れて頑張ってきました。そしたら映画のお仕事までいただけて、すっごくラッキーだったと思います。それで映画のお仕事は、最初は戸惑うことばっかりでしたけど、涼くんがいてくれたから。それから藤切ふじきりさんや牧内まきうちさんや信田しんでんさんや十美川とみかわさんにもいっぱいアドバイスとかもいただいて、監督さんやスタッフの皆さんにも助けられて、何とかここまでやれました。ありがとうございました!」

 すごく立派なスピーチをしてみせたんだ。

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