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第二幕

ハッピークリスマス♡

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 そんな風にアラヤの人と話ができて、俺はまた大事なことを教わった気になって帰れた。千裕さんも、アラヤの人の距離感にはちょっと戸惑ってる感じだったけど、確かにあんまり嫌がってた風でもなかった気がする。

 でも、アラヤの人は間違いなくいい人だし、あんまり嫌ったりする理由がないと思うんだよな。実際に付き合うとかは別にして、こう、仕事上の仲間としてはさ。

 なんてことを考えながら事務所からフォルテに向かって、芙美を待つことにする。

「ハッピークリスマス♡ ようこそフォルテへ」

 イルミネーションが光るツリーが脇に飾られたドアを開けると、芙美と舞美さんがそう言って出迎えてくれた。

 そう言えば今日はクリスマスイブだったっけ。撮影現場でも事務所でもそういう感じだったな。俺はあんまり興味ないから気にしてなかったけど。

「本日は皆さまにプレゼントとして、ケーキをお送りさせていただいています」

「トラディショナルなショートケーキ、ちょっぴり大人なビター味のショコラ、楽し気なツリー風モンブラン、どれになさいますか?」

 って聞かれたから、

「あ…ああ、じゃあ、ショコラで」

 ビター味ということでそれを選ぶと、

「マスター! ショコラお願いします!」

 芙美がマスターにそう言ってくれた。

 俺はいつも通りにカウンター席に座り、

「いつものお願いします」

 と注文して、

「はいよ」

 って応えながらマスターが差し出してくれたショコラを受け取った。それはさすがに一口サイズのが二切れっていう小さなものだったけど、まあ、プレゼントって名前のサービスならそんなもんか。むしろ、キッチンの端に置かれたミニサイズのツリー型モンブランなんてやけに手が込んでて逆に高そうな気がしたな。

 剣の形をしたプラスチックのピックで刺して口に運ぶ。確かにしっかりとビターなそれで、美味しかった。

「それ、ケーキ屋をやってる友人からの試供品なんだ。もしよかったら今度買ってあげてよ」

 マスターが指差した先を見ると、ケーキ屋のチラシが壁に貼られてて。

『なるほど。試食ってことか』

 と納得。

『今度、買って帰ろうかな……オヤジとオフクロに……』

 そう思った。でも、二人とも忙しいんだよな。年末年始も仕事の付き合いであっちこっちに顔を出さなきゃいけないそうで、二人揃って家にいられる日はないらしい。

 でも、そうやって忙しくしてる両親でも、俺に大事なことは教えてくれてた。なのになんで、そういうのを教えない親がいるんだろうな。親が教えてくれててもそれを無視する奴がいるんだろうな。

 そんな奴が偉そうなこと言ってたって、聞く気にはなれないんだけどな。

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