ＹＯＵ ＢＥＣＡＭＥ ＳＯ…

第二幕

指摘する時にもちゃんと言葉を選ばないとな

　アラヤの人が、

『これは一本取られたな！　確かにそうだね』

　と言ってくれたみたいに、自分に対しての指摘に耳を傾けてくれる人もちゃんといるんだ。でも、だからこそ思う。

『指摘する時にもちゃんと言葉を選ばないとな』

　って。

　俺が『それってセクハラになるんじゃないんですか？』と言った時にも、あんまりきつい言い方にならないようにしたつもりだった。アラヤの人は、映画の仕事では俺達よりずっと先輩だからそれもあってね。

　それに対して、ネットとかのコメントの場合は、言い方とか声のトーンとかでニュアンスを変えるってのができない。だからこそ、言葉そのものを選ばないといけないと思う。じゃないと、相手にも届かないよな。意見や指摘のつもりでコメントするなら、そういうのも気を付けるのが礼儀ってもんじゃないのか？

　自分は客だからとか視聴者だからとか、そんなの関係ないだろ。自分も人間なら相手も人間なんだよ。そんな当たり前のことも親から教わってないのかよ。俺の両親や芙美の小父さん小母さんは教えてくれたぞ。だから俺は、言葉を選ばなきゃいけないって思える。

　お客だから視聴者だからって言うけど、自分だって仕事してる時には仕事で金をもらってる立場だよな？　自分の仕事だってお客とかがいるから成り立ってるんだよな？　だったら何を言われたって仕方ないだろ？　でも実際にあれこれ言われたら『クレーマーだ！』だとか言って被害者ぶるんだろ？　それは卑怯なんじゃないのか？

　自分がクレーマーからあれこれ言われるのが嫌なんだったら、客とか視聴者とかってことで礼儀もわきまえないことを言うのはやめた方がいいと俺は思う。俺はモデルだけど、でも、スマホを買う時は＜客＞だし、美容院でカットしてもらう時も＜客＞なんだ。レストランでメシ食う時だって＜客＞だし、自転車を買う時だって＜客＞だよ。

　だけど俺は、

『俺のおかげでお前らは仕事できてるんだ。だから俺の方が偉いんだ。お前らは俺に何を言われたって仕方ないんだ！』

　とは思わない。

　アラヤの人も、先輩だってことで偉そうにしてないし、ツッコまれてもキレたりしない。でもそれは、俺が、空気を読めないなりに言い方だけは気を付けるようにしてたからというのもあると思う。

　お互い人間なんだから、お互いに相手を気遣わなくちゃってすごく思うし、俺はそう教わってきた。自分の親や芙美の小父さん小母さんからそう教わったから、尊敬してるからちゃんと理解しないといけないと思うんだ。