YOU BECAME SO…

せんのあすむ

文字の大きさ
上 下
167 / 195
第二幕

直接ぶつかったりするのを避けるためのクッション

しおりを挟む
「そうだな。匿名ってのはそんな風に直接ぶつかったりするのを避けるためのクッションにもなってるんだろうな……」

 俺がトールとの話で感じたことを素直に口にすると、トールも、

「あと、内部告発とかする時にも内部告発者の情報とかは守られるようにって話になってるだろ? 権力とかを持ってるのを相手にする時には必要なものだって思う。それを、自分が一方的に誰かを攻撃するための盾にするのはおかしいってだけでさ」

 だって。

「ホントだよな」

 俺も頷くしかできなかった。

 そうか。匿名ってのは権力者とかと戦うためには必要なんだ。それを権力者でもない相手を一方的に攻撃するために利用しようとするから変になるだけで。

 それが分かったら、一層、俺はそんな形でネットを使わないようにしなきゃと思った。

 俺が今、気にかかってるのはそれだけなんだよ。仕事のこととかは別にいいんだ。なし崩し的に映画の仕事することになったりもしたけど、それでも俺自身が決断したんだし、あんまりそのことで愚痴を言おうとも思わない。壁にぶつかったってそれはそれだ。俺自身の問題だ。

 だけどネットのことは、俺がやってなくても、俺の大切な人達が巻き込まれることがある。それが怖い。

『有名人だったら叩かれるのはしょうがない。それが嫌だったらやめろ』

 とか言うのもいるけど、俺はそんな考えのとは親しくなんてなりたくない。俺の周りにはそういうのいないな。だから幸せになれてるんだろうって思う。『有名人は叩いていい』みたいな考え方の奴とか関わりたくないよ。友達とか無理。そういう奴ってとにかく理由をこじつけて攻撃してきそうだし。

 トールが炎上しないのは、誰かを傷付けようと思ってないからだって改めて実感した。

 今回の俺とトールの話をチャンネルを見てた人達がどう受け取ってくれるかは分からないけど、とにかくファンの人達には幸せになってほしいんだ。誰かとぶつかって嫌な思いをしてほしくないんだよ。

 トールもそう考えてる。だから誰かを攻撃はしてない。攻撃してないから反発も招きにくくて炎上もしにくい。

 炎上って、本当にどうしようもない言いがかりのヤツ以外だと、結局、誰かを攻撃しようとして反発を招いたっていうのが多い気がする。

 そういうの、バカみたいじゃん。攻撃された方がムカついて反撃されたりってのは普通に起こってることじゃん。どうしてそれを参考にしないのかな。

 だけど、俺はトールほどうまくしゃべれないから、やっぱりあんまりそういうの口にしないでおこう。言い方がマズくて誰かを攻撃しようとしてるみたいに思われたら困るし。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

すれ違ってしまった恋

秋風 爽籟
恋愛
別れてから何年も経って大切だと気が付いた… それでも、いつか戻れると思っていた… でも現実は厳しく、すれ違ってばかり…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

振られた私

詩織
恋愛
告白をして振られた。 そして再会。 毎日が気まづい。

男性向けフリー台本集

氷元一
恋愛
思いついたときに書いた男性向けのフリー台本です。ご自由にどうぞ。使用報告は自由ですが連絡くださると僕が喜びます。 ※言い回しなどアレンジは可。 Twitter:https://twitter.com/mayoi_himoto YouTube:https://www.youtube.com/c/%E8%BF%B7%E3%81%84%E4%BA%BA%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%8B%E3%83%83%E3%82%AF%E6%B0%B7%E5%85%83%E4%B8%80/featured?view_as=subscriber

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

処理中です...