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第二幕

プライベートはすごく満たされてると

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 俺は、プライベートはすごく満たされてると思う。俺のことを理解してくれる両親がいて、可愛い彼女がいて、その彼女の両親との関係は良好で、将来の道順も決まってて、あとは自分がそれに向けて努力するだけでいいという、聞く人が聞いたらキレられそうな順風満帆な人生だと思うんだ。

 だけどそれでも、人生ってやつは気がかりなことがあるんだっていうのを思い知らされる。ある日突然、家族が事故に遭ったり病気になったり事件に巻き込まれたりということがあるしさ。ネットのトラブルに巻き込まれるというのも、そういうものの一つなんだろうな。

『SNSとかやらなきゃいいだろ!』

 って言われるだろうけど、それはおかしいよ。俺は元々興味がないからあんまりやらなかっただけで、『やらなきゃいいだろ!』って他人に指図する方がどうかしてるとしか思わない。

『交通事故に遭うのが怖いんだったら家に引きこもってろ!』

 とか言ってるのと同じじゃないのか? それ。

 自動車をちゃんと運転できないのに運転してるのとか、交通ルール無視して自転車を飛ばしてるのが悪いだけで、そういうのが取り締まられるのが本来なら筋だろ?

 ネットでも、リアルじゃ『礼儀に反してる』って言われて敬遠されるような行為を『ネットだから許される』とか思ってる方が筋違いなんじゃないのか? ネットは異世界とかじゃなくて現実の中にあるツールってだけだぞ。

 ネットの中も現実なんだよ。いつまでも、

『現実じゃ許されないこともネットじゃ許される』

 とか思ってる方がおかしいだろ。ネットの中はフィクションじゃないんだ。

 俺が出演してる映画はフィクションだからモンスターもいるし街中ででかい拳銃をぶっ放しても逮捕されたりしない。ディークも人間じゃなくなってるから普通の人間なら死ぬような怪我をしても死なない。でもそれはフィクションだから成立してることだよな。

 なんて、場のトークに合わせながら俺がそんなこと考えてたらいつの間にかそういう流れになって、トールが、

「リアルでも人を傷付けることを平気で言えるのっているじゃん? でも、リアルじゃそういうのが人を傷付けることを言ったって声が届く範囲内の人にしか聞こえないけど、ネットじゃそれこそ世界中の人に聞こえちゃうからな。結局、そういうのもあると思うんだ」

 って言ってきた。

「あ、そうか。確かに。ネットなかった頃はそういうの聞こえてこなかっただけで、顔出しで人を傷付けることを平気で言う奴はそれか」

 思わずそう応えてしまう。

 匿名の陰に隠れてる奴だけじゃなくてわざわざ顔を出してまで言ってるのもいるからそういうのは何なんだろうと思ってたけど、なるほどな。

 って、リアルで人を傷付けること平気で言えるのとかそれ、北条じゃねーか!

 その北条がネットのトラブルとかイジメとかに対処する会社を経営してるって、皮肉が過ぎるだろ。

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