ＹＯＵ ＢＥＣＡＭＥ ＳＯ…

第二幕

梁川涼介は要らない

『梁川涼介は要らない』

　そう考えたら、俺もなんか改めて腑に落ちて、冷静にやれた気がする。

　俺はモデルだ。俳優じゃない、俳優として映画に出るって考えたら間違いなくダメダメになると思った。だって俺、俳優を目指してるわけじゃないし。俳優としての勉強なんて、なにもしてきてないし。

　だったら無理に俳優の真似事しようとするんじゃなくて、モデルを徹底すればいいんだよ。

「って、俺は思うんだ」

　と、千裕さんに言ったら、彼女も、

「そうですね！　私、女優じゃないですからね！　モデルの仕事としてやればいいんだ！！　ファッションショーとかでポーズをとってるつもりで演じればいいんですよね！？」

　って笑顔で応えてくれた。

　だから、他の俳優の人達に合わせようとする必要もないと思う。

　ただ、それぞれ衣装に着替えて撮影に入った俳優さん達もさすがに雰囲気があった。ゲームのキャラになり切ってた。変身後のヒーローはスーツアクターっていう人が演じてるらしいけど、変身ヒーローものの場合は、変身前もカッコ悪くちゃダメだしな。

　あと、今回、ガチなアクションについては、スーツアクターも務めてるスタントの人を使うって。そういうシーンは、なるべく顔とかは映らないようにして、どうしても顔が映ってしまうところはCG処理してってするそうだ。

　だけど、普通に走ったり武器を構えるだけのシーンだと俺達がしなきゃいけないから、決して楽はできないと思う。

　でもこの日は、俺と千裕さんはあんまり遅くならないようにしてもらえて、先に帰ることになった。

「それでは、お先に失礼します」

「失礼します」

　控室でシャワーを浴びて着替えて、俺と千裕さんはそう挨拶をして、社長やマネージャーさんらと一緒に撮影所を出た。

「それじゃあ、また明日」

「はい、また明日♡」

　千裕さんと笑顔で挨拶を交わして、それぞれワゴンに乗り込む。すると社長が、

「いや！　よかった！　マジでよかったよ！　涼ちゃん！　私も興奮した！」

　社長がハイテンションで絶賛してくれる。その様子に改めてちゃんとやれたんだなとホッとした。

「でも、これから先は長いからね！　映画は編集作業があるから涼ちゃんの出番はまあ途中までだけど、気を抜かないように。あと、モデルの仕事も入ってるから、そっちも手を抜かないでね！」

「厳しい……」

　思わず呟く。

　撮影がない時には＜千葉アクションスタジオ＞でのトレーニングもあるし、俺、学校との両立、できるかな……

　その心配もありつつ、いよいよ映画の撮影が始まってしまったのだった。