ＹＯＵ ＢＥＣＡＭＥ ＳＯ…

第二幕

モデルだからこそ

　俺と千裕さんが受けた演技指導は、確かに本業のスタントマンの人がするような難しい派手なアクションじゃなかった。あくまでただのモデルやタレントでもできるようなそれだった。でも、だからこそ派手な動きとカメラワークで誤魔化せるようなそれじゃないと思う。走ってる時によろよろしたり、バシッと止める時に体がぶれてたらすぐにチャチな感じになってしまうものだと感じた。

　もちろん、アクションは素人の俺と千早さんにやらせるようなことなんだから、あんまり本格的なそれにはできないと思う。しかも、俺も千裕さんもモデルで他にも仕事があるから、怪我をさせたら賠償問題にもなりかねない。そういう制限がある中でのアクションなんだから当然だ。

　でも俺は、だからこそ、『カッコよく』演じる必要があると思った。これはむしろ、モデルだからこそ、

『ディークという衣装をばっちりと際立たせる必要がある』

　と感じたんだ。なら、＜モデル＞として決めてやる。

　俺は自分の体に力がこもるのが分かった。何気なく横を見ると、千裕さんもすごく気合が入ってるのが伝わってくる。彼女自身、演技指導を受けた時に自分の体がかっちりと動くことを実感したのかもしれない。手応えを実感してるんだ。

　よし、いけるぞ！

　そうして俺は、言われたとおりに演じることに集中した。＜千葉アクションスタジオ＞で習ったことを思い出しつつ、爪先から指先まで神経を気魄を行き渡らせるつもりで、それこそ本当に目の前に怪物がいてそれを倒すつもりで銃の狙いをつけた。

　でもまあ、それができたのは、小道具の銃が軽めに作られてたからっていうのもあるとは思うけど。変にリアルさに拘って本物の銃の重さを再現しようと思ったら、それを人間をはるかに上回る力で軽々と扱うディークの動きが再現できなかったと思う。すごい力を持つディークにとってこの銃はそれこそプラスチックのおもちゃみたいな重さしかないもののはずなんだ。それが本物の銃と同じくらいの重さだったら、いくらトレーニングを積んだっていってもただの人間の力しか持ってない俺がディークと同じ使い方ができるはずがない。

　この小道具を作った人はちゃんとそれを分かってて作ったんだろうなって感じた。だって、見た目にはすっごいリアルにも思えるのに、持った瞬間に、

『軽っ！？』

　ってびっくりしたくらいだったもんな。

　あと、衣装の方も、以前のイベントの時と違ってるのが分かった。重さのバランスが違ってるのが感じられたんだ。