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第二幕
武士とか戦士とかの気分
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そうだ。もし俺がここで緑川さんに襲われてそれで<浮気>なんてことにされたらマジでたまらない。芙美はそういうのちゃんと理解してはくれると思うけど、でも、きっと、嫌な想いにはなるだろうな。それは俺も嫌だ。俺が普通に浮気とかしたんなら自業自得でも、強引に迫られてなんてことでは絶対に嫌だ。
だから俺は、とにかく隙を見せないようにしようと思った。<千葉アクションスタジオ>で学んだのを活かして、ピンと背筋を伸ばして微動だにせず、緊張を張り巡らせて目に見えないバリアを張り巡らせる感じで。
すると自分でも、なんか、しっかりと心構えを作ってる武士とか戦士とかの気分だった。
『寄らば斬る!』
って言うか。
緑川さんがそれを察してくれてるのかどうかは分からないけど、単に他に人がいるから自重してるだけかもしれないけど、とにかくその状態で耐えて、
「撮影始まりま~す。スタジオに移動してください」
スタッフが呼びに来てくれて、俺は正直、ホッとした。控室を出ると、
「あ……!」
勝手に腕を組んできてる緑川さんを見て、千裕さんが悲しそうな表情をする。それが芙美と重なってしまって、俺もすごく嫌な気分だった。
こんな風に相手のことを考えずにべたべたするのって、マジでハラスメントだよな。こんな風にして相手に好かれるとか思うんだろうか。男だから女の人にこうやって迫られたら喜ぶだろうと思ってるんだったら、ホントに人間ってものを分かってないって気がする。
俺は嫌だ。こういうの。芙美がこんな風に迫ってくるなら照れくさいだけで済むとしても、好きでもない女性にされたって好きになんかなれない。
ちゃんと仕事して社会生活営んでる社会人なら、わきまえてほしい。
だけど俺のそんな気持ちは緑川さんには届かなくて、仕方なくそのままスタジオに入った。さすがにそこでは、
「緑川さん! 今から撮影ですから下がっててください!」
スタッフの人がようやく引きはがしてくれて、
「あ~ん! 涼ちゃ~ん!」
緑川さんは悲しそうな顔で手を伸ばすけど、俺としてはぜんぜん同情できなかった。相手のことを考えないっていうのは、結局はそういうことなんだと改めて実感した。俺はこういう人にはならないでおこうって。
仕事の上では割り切ることもするけど、絶対にプライベートでは関わりたくないよ。
こんな風に自分勝手な態度で相手から嫌われるなんて、自分も損をするはずなのにな。なんでそれが分からないんだろう。
とにかくさっさと撮影を終わらせて、芙美に会いたいな。
だから俺は、とにかく隙を見せないようにしようと思った。<千葉アクションスタジオ>で学んだのを活かして、ピンと背筋を伸ばして微動だにせず、緊張を張り巡らせて目に見えないバリアを張り巡らせる感じで。
すると自分でも、なんか、しっかりと心構えを作ってる武士とか戦士とかの気分だった。
『寄らば斬る!』
って言うか。
緑川さんがそれを察してくれてるのかどうかは分からないけど、単に他に人がいるから自重してるだけかもしれないけど、とにかくその状態で耐えて、
「撮影始まりま~す。スタジオに移動してください」
スタッフが呼びに来てくれて、俺は正直、ホッとした。控室を出ると、
「あ……!」
勝手に腕を組んできてる緑川さんを見て、千裕さんが悲しそうな表情をする。それが芙美と重なってしまって、俺もすごく嫌な気分だった。
こんな風に相手のことを考えずにべたべたするのって、マジでハラスメントだよな。こんな風にして相手に好かれるとか思うんだろうか。男だから女の人にこうやって迫られたら喜ぶだろうと思ってるんだったら、ホントに人間ってものを分かってないって気がする。
俺は嫌だ。こういうの。芙美がこんな風に迫ってくるなら照れくさいだけで済むとしても、好きでもない女性にされたって好きになんかなれない。
ちゃんと仕事して社会生活営んでる社会人なら、わきまえてほしい。
だけど俺のそんな気持ちは緑川さんには届かなくて、仕方なくそのままスタジオに入った。さすがにそこでは、
「緑川さん! 今から撮影ですから下がっててください!」
スタッフの人がようやく引きはがしてくれて、
「あ~ん! 涼ちゃ~ん!」
緑川さんは悲しそうな顔で手を伸ばすけど、俺としてはぜんぜん同情できなかった。相手のことを考えないっていうのは、結局はそういうことなんだと改めて実感した。俺はこういう人にはならないでおこうって。
仕事の上では割り切ることもするけど、絶対にプライベートでは関わりたくないよ。
こんな風に自分勝手な態度で相手から嫌われるなんて、自分も損をするはずなのにな。なんでそれが分からないんだろう。
とにかくさっさと撮影を終わらせて、芙美に会いたいな。
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