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第二幕

下手にアクション起こさないように

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 社長が言った、

『うちの方からダイレクトメッセージで削除を申し入れたんだけど、涼ちゃんの方からは下手にアクション起こさないように言っとこうと思って』

 って言葉の意味が、俺にも察せられた。

『ここで俺が現れたりしたらそれこそ火に油を注ぐことになりかねない』

 ということなんだろうな。

 本音を言わせてもらえば、あの中学生くらいの女の子に悪気はなかったんだろうなっていうのは実際に見てたからすごく感じるし、庇ってあげたいと思う。

 だけど俺が庇うことでかえって状況が悪くなる可能性があるってのもそうなんだろうなって気はする。

 そもそも俺自身は、アカウント持ってないんだよな。なんか、面倒なことになりそうだって感じで避けてたんだ。元々、どうしてそんなに知らない相手と関わりたいのか、理解できなかったし。

 俺には、自分の家族と、芙美と、芙美の家族がいればそれで十分なんだよ。それ以外は<社交辞令>で済ます程度の関係でいいんだ。相田も鈴木もマスターも舞美さんも里香さんも千裕さんも、たまたま知り合えただけなんだから。だからって無視したり攻撃的になったりってのも違うと思うから、なるべく丁寧に関わろうっていうだけで。

 それだけでもう俺にとってはキャパ一杯なのに、顔も分からないどこの誰かも分からない相手と積極的に関わり合いたいとは思わないんだ。

 みんな、何を求めてるんだろう……? そこに何があるっていうんだろう……?

 そうやって関わっていってプラスになることがあればいいけど、今回のなんて、完全にマイナスじゃん。アカウントに鍵かけてシャットアウトするとか、何のためにやってたのか分からない。

 すごく、残念だよ……

 芙美のスマホに表示されてる、

『このアカウントは一般に公開されていません』

 という文字を見詰めて、俺は悲しい気持ちになってた。すると芙美が、

「そんな泣きそうな顔しないで、涼くん。これは涼くんの所為じゃないよ……」

 そう言ってくれる。俺を励まそうとしてくれる。こんな風にしてくれる人が、このアカウントのコにもいるんだろうか……

 いてくれたらいいんだけどな……

 だから俺は言ったんだ。

「芙美も、気を付けてな。俺、芙美がこんな目に遭うの、嫌だからな?」

 俺の言葉に、芙美は、

「うん、分かってるよ。だから発信はしてない。これは情報収集用のアカウントだから」

 二ッと笑って応えてくれた。そうだな。芙美は、抜けてるところもあるけど、割と用心深い性格なんだ。基本的には。

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