ＹＯＵ ＢＥＣＡＭＥ ＳＯ…

第二幕

本格的に仕事としてやってくなら

『じゃあ、告白の言葉とかは……？』

　インタビュアーの女性にそう聞かれて、

「改まって告白とかはしてないですね。でも、『好きだ』ってことはお互い伝えてます。幼馴染でそのまま付き合うようになったからかも」

　素直にそう答えた。この辺りは社長から渡された＜作文＞には書かれてなかったけど、

『トールのチャンネルで話したことのある内容までならアドリブOK』

　という指示もあったから。

「え？　でも、そういうのってちゃんとした方が彼女さんも喜ぶんじゃないですか？」

　インタビュアーの女性はそう言うけど、

「その辺りは人それぞれなんじゃないですか？　俺達はそうじゃなかったってだけで。世の中には、『こうじゃないといけない！』みたいなことを言う人も多いですけど、俺はそういうの＜同調圧力＞って言うんじゃないのかなって思うんです。『ちゃんと告白しなきゃダメ！』って言われるの、ちょっとしんどいです」

　って、やっぱり正直に思ったことを言った。実際、芙美も、

『いや～、満開の桜の木の下で告白とか、そういうの、ヘソが痒くなりますな～！』

　とか言ってたし。苦手なんだと思う。なのにインタビュアーの女性は、

「ええ……？」

　となんだか不満顔だ。すると、カメラマン役の人が、

「こらこら、そういう個人の恋愛観とかは、さらっと流しておけばいいんだ！　本筋はそこじゃない……！」

　声を抑えながら耳元で囁くみたいにしてダメ出ししてた。このカメラマン役の人の方が場慣れしてる感じなのか。もしかすると、新人教育の一環なのかな。だからか、インタビュアーの女性も、

「あ…あ、ごめんなさい……！」

　慌てて頭を下げる。確かに、俺が社長からもらった＜作文＞の内容も、基本的にモデルとして心掛けてることや将来の展望みたいな、まあありがちなそれだったし、たぶん、あらかじめどんなことを聞いてくるか伝えてもらった上で作ったものなんだろう。

　バラエティー番組だって大まかな台本はあるって聞いたことあるし、街頭インタビューとかもエキストラ専門の人達が答えてることがあるとも聞いたことがある。素人相手の＜ドッキリ＞だって、本当の素人ってわけじゃないらしいし。

　考えてみたら当然か。マジのドッキリやって事故でもあったら大変だもんな。

　だからテレビとかのバラエティー番組やドッキリを真に受けて素人が同じことをするとマズいんだろうな。

　トールのチャンネルに出る時の台本や今回の作文を受け取った時にはちょっと戸惑ったけど、以前はそれこそ『当たり障りないことだけ言うように』って言われただけだったけど、本格的に仕事としてやってくなら、そういうのも必要ってことなんだろうな。