ＹＯＵ ＢＥＣＡＭＥ ＳＯ…

飛躍の章

おおむね台本通り

　で、しょっぱなからかましてきたトールだったけど、そこから先はおおむね台本通りだった。

「でさでさ、涼ちゃんはモデルの仕事するにあたって、気を付けてることってある？」

「う～ん……これといって特には……俺、無茶食いとかしない限りは太ったりしない体質らしいし。あとはまあ、今は体育の授業とかちゃんと真面目に受けるくらいかな。運動のために」

「今は、ってことは、前は真面目じゃなかった？」

「ああ、うん…正直、ムチャクチャ手ぇ抜いてた。とにかくどうやってサボろうかってことばっかり考えてた」

　俺がそう応えたところに、視聴者から、

『でも一時いっとき涼くん顔とかパンパンだったことあったよね？』

　って質問があって、トールがそれを読み上げた。

「あ～……それは、彼女の料理が美味すぎて食べ過ぎてたから……俺に体力付けさせようとして張り切ってくれたんだけど、それが行き過ぎた感じ、かな……」

　芙美が俺をデブらせてモデルを辞めさせようとしてたことについては触れなかった。俺のファンも見てるらしいここでそんなこと言ったら、たぶん、芙美が猛攻撃を受けると思ったから。俺は、そんなこと望んでない。

「へ～！　いい彼女さんじゃん！」

　トールも、事実を知った上で話を合わせてくれた。『嘘はよくない』って言われるけど、正直なことを話したら自分の大切な人がロクに事情も知らないネットの匿名の向こうの相手からメチャクチャに攻撃されることもあるって考えたら、『嘘も方便』って言葉の意味がすごく分かる気がする。ホントに正直なことだけ口にしてればいい世の中になってからじゃないと、『嘘はよくない』なんてすべての場合で当てはまったりしないと思う。

　だから、

『誰かを傷付けたり陥れたりする目的で吐く嘘はよくない』

　って言った方がいいんじゃないかなと思った。

　続けてトールは、

「じゃあじゃあ、涼ちゃんはこれからモデルとしてどう活躍したいのかな？」

　と、やっぱり用意された質問をしてきた。これに対しては、

「俺、スカウトされてモデルすることになったんだけど、ホントは、こういうの苦手だったんだ。人前に出るとかさ。でも、社長に熱心に説得されて、じゃあ試しにって感じで渋々だった。だけど……」

「だけど？」

「だけど今は、自分に他にできることがあるかどうか分かんなくて、でもこうしてモデルとして必要とされてるんなら、それでやれるとこまでやってみたらどうかなって気もしてる。これが仕事になるんなら、それで食ってけるんなら、続けてみてもいいかな。って……」

　素直な気持ちを口にしたんだ。