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飛躍の章

兄ちゃんはまだ

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「で、兄ちゃんはまだ進路のことで悩んでるってことかよ」

「まあ、そういうことだな……」

 そんなこんなで数日が経って、俺はまた、部屋でとおる相手に<接待ゲーム>をしてた。やっぱりまったく勝てないけど、それが当たり前になったからか悔しくもない。それに俺が気にしたいのはゲームじゃない。芙美にとってふさわしい男でいられるかどうかだ。ゲームの中でどんなに活躍できたって、現実でちゃんとできてなきゃ何の意味もない。

 すると徹は、

「兄ちゃんはさ、攻撃が素直過ぎんだよ。よく言えば堅実なんだけど、だから簡単にタイミングが読めちゃうんだ。兄ちゃんが根は真面目で優しいってのがスッゲー分かる。こういう対戦ゲームじゃそれは弱点でしかないと思うけど、実生活じゃ逆にそういうのが大事なんじゃねーか?」

 とか言い出して。

「そういうもんかな……?」

「そういうもんだって。てか、オレ、根が不真面目な奴に姉ちゃん任せるとかヤだからな? オレは今、配信者やってるけど、<迷惑系>とかってのが今は多いけど、そういうのがいくら再生数稼いでたって負けだとは思わねーよ。そんなのが姉ちゃんに言い寄ってきたって認めねーから」

「そうか……」

 <迷惑系>云々については俺もいろいろ噂は聞いてる。正直、何がいいのか分からない。そんなことして敵をいっぱい作ってたら、俺、芙美を守れる自信がない。

 すると、そんな俺に徹は言ったんだ。

「でも、兄ちゃんなら見た目だけでもスッゲー引きがあると思うし、今でもそこそこ人気あんだろ? だからさ、兄ちゃんもモデル活動の宣伝として配信始めたらどうかな?」

「え…っ!? そんな、俺、そういうの何話していいか分かんないし」

「いいからいいから。最初はオレのチャンネルのサプライズゲストとして出てくれたらいいよ。で、オレが進行すっから、兄ちゃんはそれに乗っかってくれてるだけでいい」

「でも、最近は、ネットで失敗してる芸能人とかも多いみたいだし、そんなことになったら……」

「あー、あー、ああいうのは、兄ちゃんみたいなタイプには関係ない話だから。兄ちゃんはただモデル活動の報告だけやって、あとは普通の世間話でもやっときゃいいって。ウケ狙いとか考えなくていい。あと、彼女がいるってのは最初っから明かしといた方がいいと思う」

「大丈夫なのかそれって? 芸能人とか付き合ってる相手とかバレたら炎上とかあるじゃん」

「何言ってんだよ。いないって言ってたのにいたから炎上すんだろ? 最初っからいるって言っときゃ『そういうもんだ』って見てる方も思うじゃん。それに兄ちゃん、雑誌の取材でも別に隠してないんだろ? 好きな相手いんの」

「まあ…そうだけど……」

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