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虚構の章

JSがウエイトレスしてる喫茶店

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 フォルテに向かう途中、警察のバイクがまた俺を追い越していった。すると、一人が左手を挙げて挨拶するみたいな。

 それを見て俺もピンとくる。この前の警官だ。だから俺も右手を挙げて応えた。そしたら警官もグッと親指を立てるのが分かった。ノリのいいお巡りさんだな。

 そうこうしてる間にフォルテに着いたら、なんかやけに賑わってて。

「いらっしゃいませ~♡」

 出迎えてくれたのは藤宮さんで、店にいた客がどいつもこいつもネルシャツにジーンズなんだけど、とにかく<ダメな着こなし>のオンパレードみたいな感じで。

 何とも言えない雰囲気に俺は気圧されながらカウンター席に着いて、

「どうしたんです? これ」

 マスターに尋ねると、

「なんか、SNSでうちのことが、<JSがウエイトレスしてる喫茶店>って紹介されてバズったらしくて、それを見た人が次々とね」

 って説明してる間にもまた客が。

 いやはや。客が入るのはいいけど、やっぱこういうの、違う気がする……

 だけど藤宮さんは、小さな体でくるくると店の中を動き回ってて。そういうのって『獅子奮迅の活躍』って言うんだっけ? 違うか? 

 すると、カウンター席にいたお客の一人が、

「僕はフミちゃん一筋だから……♡」

 とかなんとかホザいてた。なのに芙美も、

「あはは♡ ありがとうございます♡」

 満面の笑顔で。ただの営業スマイルだっていうのは分かるけど、正直、モヤる……

 で、オーダーストップの時間が来て、芙美が入り口の表示を交換しに出たら、

「あ、もう終わり!?」

「マジかよ~!」

 とかいう声が。するとマスターが、

「ラストオーダーということでよろしければいいですよ」

 だって。

「やりい!」

 とか客の奴らは言ってるけど、俺はまたモヤってしまう。こういう奴らを甘やかしてたらつけあがるだけなんじゃないかって。

 客商売ってそういうとこ、難しいよな。

 でもさすがに、入り口の表示をオーダーストップにしてドアのところの灯りも消して店のカーテンも閉めたらもう入ってこなかった。

 なのに、この時点でまだほぼ満席で。かと思うと、閉店十五分前で、

「ごめんなさ~い、私達、上がりま~す♡」

 藤宮さんが芙美に抱きつきながら言うと、客共は、

「え~っ!?」

 とは声も上げつつ、二人が店の奥に引っ込んだとたん、

「しゃ~ない、帰るか」

「また来よ~♡」

 ぶつぶつ言いながら帰り支度を始めやがった。現金な奴らだな。

 ああでも、藤宮さんと芙美が目当てなんだったら二人がいなくなれば居座る理由もないわけで、すんなり帰ってくれるならまだいいのか。

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