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虚構の章

それはそれでどうなんだろう?

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 それからもマスターは、俺相手に、

「最近はいろいろと煩くてね。うちは<分煙>ってことでタバコも楽しめる店を標榜してやってきたんだけど、行政の方から完全禁煙をって行政指導受けちゃって。仕方なく全面禁煙にしたけど、タバコを楽しみたいお客が減っちゃったから、いっそ可愛いスタッフのいる店って形に路線変更しようかなと。

 ま、はっきり言うとヤケクソってことなんだけど」

「はあ……そうなんですね……」

 正直言うと俺はタバコは嫌いだから全面禁煙になってくれたのはありがたいけど、芙美や藤宮さんを目当ての客が増えると、なんか騒がしい感じになりそうで、それはそれでどうなんだろう? という気はしないでもない。

 それでも、

「いらっしゃいませ♡」

「おえっ!? え? 小学生!?」

「なにこれ、いいの!?」

 いきなりの接客でもまったく動じることなく堂々とお客の前に立ってみせる藤宮さんに出迎えられて、男二人組の客が思わずそんな声を上げていた。

「うふふ♡ よく言われるんですよ。でも大丈夫です。私、もう十八ですから♡」

 高三だから十八でもおかしくないけど、その見た目を前にするとやっぱり頭がバグる。

「いや~、小学生の職業体験かなにかかと思っちゃったよ」

「いやでも、十八か~、びっくりだな」

 藤宮さんに席に案内されたお客がそんなことを口にしてるのが届いてくる。

 一方、芙美は芙美で常連客に話しかけられて笑顔で対応してる。

「元々、物怖じしなくて人懐っこい子だとは思ってたけど、こりゃ思わぬ即戦力だな。芙美ちゃんの手も煩わせなくて済みそうだし」

 マスターは芙美と藤宮さんを見てほくそえんでた。確かにあの愛嬌のよさなら彼女を目当てに来る客も増えそうだ。

 ……正直、その客層はこの店にとって喜ばしいのかどうかは分からないが。

 芙美は客あしらいも巧いけど、藤宮さんはどうなんだろう……?

 そんなことを考えてるところに、スマホのアラームが。バイブにしてたからブーッてなって、思わずビクッと体が竦む。どうもスマホとか苦手だ。

「じゃ、ごちそうさま」

 俺は代金をカウンターに置いて、席を立つ。すると、芙美がちらりを俺を見ながら小さく手を振ってくれた。俺も、小さく手を振り返す。

 すると、藤宮さんも俺の方を見て、たぶん芙美の方にもちらっと視線をやって、何とも言えない笑顔になっていた気がする。なんと言うか、

『面白そうなものを見付けた』

 的な感じ……?

 それは分からないけど、とにかく今はスタジオに行かなくちゃ。もう遅刻はしないって決めたんだから。

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