上 下
49 / 195
虚構の章

それはそれでどうなんだろう?

しおりを挟む
 それからもマスターは、俺相手に、

「最近はいろいろと煩くてね。うちは<分煙>ってことでタバコも楽しめる店を標榜してやってきたんだけど、行政の方から完全禁煙をって行政指導受けちゃって。仕方なく全面禁煙にしたけど、タバコを楽しみたいお客が減っちゃったから、いっそ可愛いスタッフのいる店って形に路線変更しようかなと。

 ま、はっきり言うとヤケクソってことなんだけど」

「はあ……そうなんですね……」

 正直言うと俺はタバコは嫌いだから全面禁煙になってくれたのはありがたいけど、芙美や藤宮さんを目当ての客が増えると、なんか騒がしい感じになりそうで、それはそれでどうなんだろう? という気はしないでもない。

 それでも、

「いらっしゃいませ♡」

「おえっ!? え? 小学生!?」

「なにこれ、いいの!?」

 いきなりの接客でもまったく動じることなく堂々とお客の前に立ってみせる藤宮さんに出迎えられて、男二人組の客が思わずそんな声を上げていた。

「うふふ♡ よく言われるんですよ。でも大丈夫です。私、もう十八ですから♡」

 高三だから十八でもおかしくないけど、その見た目を前にするとやっぱり頭がバグる。

「いや~、小学生の職業体験かなにかかと思っちゃったよ」

「いやでも、十八か~、びっくりだな」

 藤宮さんに席に案内されたお客がそんなことを口にしてるのが届いてくる。

 一方、芙美は芙美で常連客に話しかけられて笑顔で対応してる。

「元々、物怖じしなくて人懐っこい子だとは思ってたけど、こりゃ思わぬ即戦力だな。芙美ちゃんの手も煩わせなくて済みそうだし」

 マスターは芙美と藤宮さんを見てほくそえんでた。確かにあの愛嬌のよさなら彼女を目当てに来る客も増えそうだ。

 ……正直、その客層はこの店にとって喜ばしいのかどうかは分からないが。

 芙美は客あしらいも巧いけど、藤宮さんはどうなんだろう……?

 そんなことを考えてるところに、スマホのアラームが。バイブにしてたからブーッてなって、思わずビクッと体が竦む。どうもスマホとか苦手だ。

「じゃ、ごちそうさま」

 俺は代金をカウンターに置いて、席を立つ。すると、芙美がちらりを俺を見ながら小さく手を振ってくれた。俺も、小さく手を振り返す。

 すると、藤宮さんも俺の方を見て、たぶん芙美の方にもちらっと視線をやって、何とも言えない笑顔になっていた気がする。なんと言うか、

『面白そうなものを見付けた』

 的な感じ……?

 それは分からないけど、とにかく今はスタジオに行かなくちゃ。もう遅刻はしないって決めたんだから。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

壁の薄いアパートで、隣の部屋から喘ぎ声がする

サドラ
恋愛
最近付き合い始めた彼女とアパートにいる主人公。しかし、隣の部屋からの喘ぎ声が壁が薄いせいで聞こえてくる。そのせいで欲情が刺激された両者はー

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

これ以上ヤったら●っちゃう!

ヘロディア
恋愛
彼氏が変態である主人公。 いつも自分の部屋に呼んで戯れていたが、とうとう彼の部屋に呼ばれてしまい…

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

結構な性欲で

ヘロディア
恋愛
美人の二十代の人妻である会社の先輩の一晩を独占することになった主人公。 執拗に責めまくるのであった。 彼女の喘ぎ声は官能的で…

処理中です...