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虚構の章

そこから先が何も

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 何とか北条も振り切って教室に戻って授業にも間に合って、俺はホッとしていた。

 かと思うと、昼寝したってのに眠気に襲われて、それに耐えるだけで一苦労だ。

 そして今日最後の授業は、川崎先生の英語。これも重要な教科だからちゃんと聞かないとと思うのに、正直、半分くらいしか分からない。こんなことで本当に一緒に薬学部になんて行けるのか? 行ってついていけるのか?

 ますますそんなことを思わされながら授業が終わると、川崎先生が、

「梁川くん、進路のことで相談がある時にはおっしゃってくださいね。時間を作りますから」

 俺と芙美のところに来てそう言ってくれた。川崎先生は真剣に俺達のことを心配してくれてるんだと感じる。俺達を応援しようとしてくれてるんだって。だけど俺には、

『根拠のない自信など、現実の前では文字通り蟷螂の斧でしかなく、容易く打ち砕かれてしまう』

 そう言った氷山ひやまの言葉の方がなんだか納得できてしまうんだ。取り敢えず自信をつけて受験に挑んで、それで運よく合格できたとしても、そこから先が何も想像できないんだよ。でも、文学部に行ったらまあ、適当に単位だけ落とさないようにして何となく無難にキャンパスライフを過ごして卒業まではいけそうだなって予感はあるけど。

「はい……」

 川崎先生にはそう応えておいても、本気で相談しようっていう気にはなれなかった。

「涼くん……」

 芙美が、何とも言えない表情で俺を見てる。



「お! アツアツじゃねーか!」

 今日は俺は撮影があるし芙美もバイトがあるからそのままいったん家に帰ろうとしたら、校門の手前でまた面倒な奴に捉まった。

「鈴木か……」

 鈴木は、バスケ部のユニフォームで、隣には相田もいる。

「アツアツなのは、お前達の方だろ」

 俺が言うと、鈴木はきょとんとした様子で、

「あ? 相田のことか? 違う違う! こいつとはただの悪友で、そんなんじゃねーって!」

 たぶん、本心から悪気なくそう言ってるんだろうなって感じで笑った。こいつの頭の中には色恋沙汰なんて詰まってなくて、基本的にバスケのことしか考えてなくて、悪友って言葉通りに、相田とはいい友達のつもりなんだろう。

 そんな鈴木に、思わず尋ねる。

「お前は、進路とか、どうするつもりなんだ?」

 するとこいつは二ッと自慢げに笑みを作る。

「おお! 俺はヤガミ技研のバスケ部に行くことはもう決まってんだ! 先輩も誘ってくれてるしよ!」

「ヤガミ技研って、バスケが強いっていう……?」

 あんまスポーツとかに興味ない俺でも聞いたことがあるくらい有名な名前が出てきて、俺は少しギョッとして……

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