44 / 195
虚構の章
そこから先が何も
しおりを挟む
何とか北条も振り切って教室に戻って授業にも間に合って、俺はホッとしていた。
かと思うと、昼寝したってのに眠気に襲われて、それに耐えるだけで一苦労だ。
そして今日最後の授業は、川崎先生の英語。これも重要な教科だからちゃんと聞かないとと思うのに、正直、半分くらいしか分からない。こんなことで本当に一緒に薬学部になんて行けるのか? 行ってついていけるのか?
ますますそんなことを思わされながら授業が終わると、川崎先生が、
「梁川くん、進路のことで相談がある時にはおっしゃってくださいね。時間を作りますから」
俺と芙美のところに来てそう言ってくれた。川崎先生は真剣に俺達のことを心配してくれてるんだと感じる。俺達を応援しようとしてくれてるんだって。だけど俺には、
『根拠のない自信など、現実の前では文字通り蟷螂の斧でしかなく、容易く打ち砕かれてしまう』
そう言った氷山の言葉の方がなんだか納得できてしまうんだ。取り敢えず自信をつけて受験に挑んで、それで運よく合格できたとしても、そこから先が何も想像できないんだよ。でも、文学部に行ったらまあ、適当に単位だけ落とさないようにして何となく無難にキャンパスライフを過ごして卒業まではいけそうだなって予感はあるけど。
「はい……」
川崎先生にはそう応えておいても、本気で相談しようっていう気にはなれなかった。
「涼くん……」
芙美が、何とも言えない表情で俺を見てる。
「お! アツアツじゃねーか!」
今日は俺は撮影があるし芙美もバイトがあるからそのままいったん家に帰ろうとしたら、校門の手前でまた面倒な奴に捉まった。
「鈴木か……」
鈴木は、バスケ部のユニフォームで、隣には相田もいる。
「アツアツなのは、お前達の方だろ」
俺が言うと、鈴木はきょとんとした様子で、
「あ? 相田のことか? 違う違う! こいつとはただの悪友で、そんなんじゃねーって!」
たぶん、本心から悪気なくそう言ってるんだろうなって感じで笑った。こいつの頭の中には色恋沙汰なんて詰まってなくて、基本的にバスケのことしか考えてなくて、悪友って言葉通りに、相田とはいい友達のつもりなんだろう。
そんな鈴木に、思わず尋ねる。
「お前は、進路とか、どうするつもりなんだ?」
するとこいつは二ッと自慢げに笑みを作る。
「おお! 俺はヤガミ技研のバスケ部に行くことはもう決まってんだ! 先輩も誘ってくれてるしよ!」
「ヤガミ技研って、バスケが強いっていう……?」
あんまスポーツとかに興味ない俺でも聞いたことがあるくらい有名な名前が出てきて、俺は少しギョッとして……
かと思うと、昼寝したってのに眠気に襲われて、それに耐えるだけで一苦労だ。
そして今日最後の授業は、川崎先生の英語。これも重要な教科だからちゃんと聞かないとと思うのに、正直、半分くらいしか分からない。こんなことで本当に一緒に薬学部になんて行けるのか? 行ってついていけるのか?
ますますそんなことを思わされながら授業が終わると、川崎先生が、
「梁川くん、進路のことで相談がある時にはおっしゃってくださいね。時間を作りますから」
俺と芙美のところに来てそう言ってくれた。川崎先生は真剣に俺達のことを心配してくれてるんだと感じる。俺達を応援しようとしてくれてるんだって。だけど俺には、
『根拠のない自信など、現実の前では文字通り蟷螂の斧でしかなく、容易く打ち砕かれてしまう』
そう言った氷山の言葉の方がなんだか納得できてしまうんだ。取り敢えず自信をつけて受験に挑んで、それで運よく合格できたとしても、そこから先が何も想像できないんだよ。でも、文学部に行ったらまあ、適当に単位だけ落とさないようにして何となく無難にキャンパスライフを過ごして卒業まではいけそうだなって予感はあるけど。
「はい……」
川崎先生にはそう応えておいても、本気で相談しようっていう気にはなれなかった。
「涼くん……」
芙美が、何とも言えない表情で俺を見てる。
「お! アツアツじゃねーか!」
今日は俺は撮影があるし芙美もバイトがあるからそのままいったん家に帰ろうとしたら、校門の手前でまた面倒な奴に捉まった。
「鈴木か……」
鈴木は、バスケ部のユニフォームで、隣には相田もいる。
「アツアツなのは、お前達の方だろ」
俺が言うと、鈴木はきょとんとした様子で、
「あ? 相田のことか? 違う違う! こいつとはただの悪友で、そんなんじゃねーって!」
たぶん、本心から悪気なくそう言ってるんだろうなって感じで笑った。こいつの頭の中には色恋沙汰なんて詰まってなくて、基本的にバスケのことしか考えてなくて、悪友って言葉通りに、相田とはいい友達のつもりなんだろう。
そんな鈴木に、思わず尋ねる。
「お前は、進路とか、どうするつもりなんだ?」
するとこいつは二ッと自慢げに笑みを作る。
「おお! 俺はヤガミ技研のバスケ部に行くことはもう決まってんだ! 先輩も誘ってくれてるしよ!」
「ヤガミ技研って、バスケが強いっていう……?」
あんまスポーツとかに興味ない俺でも聞いたことがあるくらい有名な名前が出てきて、俺は少しギョッとして……
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
断罪される一年前に時間を戻せたので、もう愛しません
天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルリサは、元婚約者のゼノラス王子に断罪されて処刑が決まる。
私はゼノラスの命令を聞いていただけなのに、捨てられてしまったようだ。
処刑される前日、私は今まで試せなかった時間を戻す魔法を使う。
魔法は成功して一年前に戻ったから、私はゼノラスを許しません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる