40 / 195
虚構の章
興味もないのに
しおりを挟む
『俺、薬学部に行ってなにしたらいいんだ?』
今の正直な疑問を口にしても、芙美からははっきりした答えがなかった。芙美と一緒のキャンパスライフを送りたいのは俺も同じだけど、でも、それだけで進路を決めてしまって大丈夫なのかな? 興味もないのに薬学部に行って、俺、ついて行けるのか? 何か身に付くのか?
翌日、学校にいても、俺の頭からはそういうあれこれが離れなかった。体育の授業が終わって昼休憩になって、ロッカー室で着替えて教室に戻るのも、ぼんやりと考え事をしながら歩いてた。
でもそこに、
「暗いぞ少年。悩みがあるなら先生に相談してちょうだい」
って声を掛けられて、ハッと振り返ったら穏やかに笑みを浮かべた川崎先生が。
「先生……」
廊下で川崎先生に声を掛けられて、俺は、
「別に興味もない学部に、ツレが行くからって自分も行くっていうのって、どうなんでしょう……?」
つい尋ねてしまってた。すると先生もハッとなって、真面目な表情に。
「ごめんなさい。予想してたより真面目な悩みだったから、驚いちゃって」
「……俺、普段はどんなことで悩んでそうに見えます……?」
「え…と、『今回の衣装は恥ずかしかったな』…とか……?」
「いや、確かにたまに『こんな服、ホントに着る奴いんのか?』って思うような衣装着せられることもありますけど……!」
「あ、やっぱりあるんだ……!?」
真面目にそんな風に言われると、正直凹む。川崎先生の目には、俺ってそんな風に見えてたんだって。
「って、そうじゃなくて! 俺、マジで悩んでんですよ……!」
話を戻そうと真面目な表情を作る。
「あ…そ、そうね。そうだったんだね。ホントにごめんなさい…!」
川崎先生も焦った様子で、両手を振って取り繕う。その上で、
「そうね。先生としては、友達と同じ大学に行きたいというだけの理由で選ぶのも、別に悪いことじゃないと思う。だって、今は興味がなくたって、実際に行ってみたら何か興味のあることに出会えることだってあると思うの。人生なんてそういうことの連続。意外なところで意外な出会いがあったりするものなのよ。今、自分に何か具体的な目標がないのなら、それこそ友達と一緒の大学に行くって形で進路を決めるのもアリなんじゃないかな」
って言ってきた。
「それは……そうかもしれないですけど……」
そんな風に川崎先生に言われたら、そんな気もしてくる。俺がこれまで知らなかったものに出会えるというのは確かにあるかもしれない。でも……
「でもそれも、勉強についていけたらの話ですよね……?」
正直な気持ちを口にしたのだった。
今の正直な疑問を口にしても、芙美からははっきりした答えがなかった。芙美と一緒のキャンパスライフを送りたいのは俺も同じだけど、でも、それだけで進路を決めてしまって大丈夫なのかな? 興味もないのに薬学部に行って、俺、ついて行けるのか? 何か身に付くのか?
翌日、学校にいても、俺の頭からはそういうあれこれが離れなかった。体育の授業が終わって昼休憩になって、ロッカー室で着替えて教室に戻るのも、ぼんやりと考え事をしながら歩いてた。
でもそこに、
「暗いぞ少年。悩みがあるなら先生に相談してちょうだい」
って声を掛けられて、ハッと振り返ったら穏やかに笑みを浮かべた川崎先生が。
「先生……」
廊下で川崎先生に声を掛けられて、俺は、
「別に興味もない学部に、ツレが行くからって自分も行くっていうのって、どうなんでしょう……?」
つい尋ねてしまってた。すると先生もハッとなって、真面目な表情に。
「ごめんなさい。予想してたより真面目な悩みだったから、驚いちゃって」
「……俺、普段はどんなことで悩んでそうに見えます……?」
「え…と、『今回の衣装は恥ずかしかったな』…とか……?」
「いや、確かにたまに『こんな服、ホントに着る奴いんのか?』って思うような衣装着せられることもありますけど……!」
「あ、やっぱりあるんだ……!?」
真面目にそんな風に言われると、正直凹む。川崎先生の目には、俺ってそんな風に見えてたんだって。
「って、そうじゃなくて! 俺、マジで悩んでんですよ……!」
話を戻そうと真面目な表情を作る。
「あ…そ、そうね。そうだったんだね。ホントにごめんなさい…!」
川崎先生も焦った様子で、両手を振って取り繕う。その上で、
「そうね。先生としては、友達と同じ大学に行きたいというだけの理由で選ぶのも、別に悪いことじゃないと思う。だって、今は興味がなくたって、実際に行ってみたら何か興味のあることに出会えることだってあると思うの。人生なんてそういうことの連続。意外なところで意外な出会いがあったりするものなのよ。今、自分に何か具体的な目標がないのなら、それこそ友達と一緒の大学に行くって形で進路を決めるのもアリなんじゃないかな」
って言ってきた。
「それは……そうかもしれないですけど……」
そんな風に川崎先生に言われたら、そんな気もしてくる。俺がこれまで知らなかったものに出会えるというのは確かにあるかもしれない。でも……
「でもそれも、勉強についていけたらの話ですよね……?」
正直な気持ちを口にしたのだった。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。


どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

男性向け(女声)シチュエーションボイス台本
しましまのしっぽ
恋愛
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本です。
関西弁彼女の台本を標準語に変えたものもあります。ご了承ください
ご自由にお使いください。
イラストはノーコピーライトガールさんからお借りしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる