上 下
37 / 195
虚構の章

俺より人気あるんじゃないか……?

しおりを挟む
氷山ひやま叔父さんとねーちゃんの関係、邪推してたんだって?」

 俺の自宅の部屋で、ゲームしながら呆れたようにそう言ったとおるに、

「ああ……あれは失態だった……」

 俺は自分でも分かるくらいに神妙な顔で応えた。すると徹は、

「ねーちゃんのことについてならオレに聞けって言ってんじゃん。そしたらすぐに誤解だって分かったのにさ。今の時代、情報こそが生命線だぜ? そんなことじゃ有能な社会人にはなれないとか常識じゃん。ブラック企業で搾取される側まっしぐらじゃん。オレ、やだぜ? ねーちゃんの旦那さんがブラック企業で社畜やってるとかさ」

 とかなんとか、一気にまくし立ててきた。ゲームしながら。て言うか、よくゲームしながらそんなこと考えられるな、こいつ。

 でも、確かに徹に事情を聞いてれば無様を晒すこともなかったのは事実だと思う。

「そうだな。今度からは気を付けるよ」

 四歳も年下。何ヶ月か前までは小学校に通ってた中一の徹相手に情けないとは思いつつ、ぐうの音も出ないのは事実だし、俺は素直に頭を下げた。

 で、

「やりい! 俺の勝ち~! 涼兄ちゃん、マジで上達しないな」

「うっせ! 俺、元々格闘系のゲームは苦手だし…!」

 俺と徹は、対戦型のゲームをしてたんだ。でも、こいつ、やたら強くて、一度も勝てたことがない。最初は悔しかったけど、今はもう、接待のつもりでやってる感じだな。徹から情報提供してもらうために。

 と、自分が負けた画面をぼんやりと眺めてたら、

「お、もうこんな時間か。じゃ、オレ、この後は生配信だから」

 とか言いつつ、部屋を出ていった。

 生配信というのは、こいつ、今、なんか動画サイトで配信者ってのをやってて、しかももう、一万人もファンがついてるらしい。

 ……もしかしたら、俺より人気あるんじゃないか……?

 なんてことも思ってしまう。ちなみに、配信する時は、わざわざそれ用に自分の部屋の一角にブースまで作って、自作の変な仮面を着けて、ボイスチェンジャーも使って声を変えて、身バレしないように気を付けてやってるらしい。

 放送時間は一回三十分ほど。HNは『トール』。放送中に家族に名前呼ばれたりしても大丈夫なように本名に近いそれにしたようだ。

 で、話す内容は、都市伝説を独自視点で解釈したものだったり、話題になってるニュースについてやっぱり独自視点で解説してたりってものだった。

 俺は普段の徹のことをよく知ってるから気恥ずかしくて見てられないんだけど、中学生とは思えない切り口で語るのがウケてるらしくて、さすがに上位配信者には遠く及ばなくても、地味に根強い人気があるそうだ。

 おかげで、月に十万円近い収入もあるとも。

 ……俺のモデルのバイト料よりも下手したら多いかもしれない……

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

教え子に手を出した塾講師の話

神谷 愛
恋愛
バイトしている塾に通い始めた女生徒の担任になった私は授業をし、その中で一線を越えてしまう話

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

処理中です...