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虚構の章

俺より人気あるんじゃないか……?

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氷山ひやま叔父さんとねーちゃんの関係、邪推してたんだって?」

 俺の自宅の部屋で、ゲームしながら呆れたようにそう言ったとおるに、

「ああ……あれは失態だった……」

 俺は自分でも分かるくらいに神妙な顔で応えた。すると徹は、

「ねーちゃんのことについてならオレに聞けって言ってんじゃん。そしたらすぐに誤解だって分かったのにさ。今の時代、情報こそが生命線だぜ? そんなことじゃ有能な社会人にはなれないとか常識じゃん。ブラック企業で搾取される側まっしぐらじゃん。オレ、やだぜ? ねーちゃんの旦那さんがブラック企業で社畜やってるとかさ」

 とかなんとか、一気にまくし立ててきた。ゲームしながら。て言うか、よくゲームしながらそんなこと考えられるな、こいつ。

 でも、確かに徹に事情を聞いてれば無様を晒すこともなかったのは事実だと思う。

「そうだな。今度からは気を付けるよ」

 四歳も年下。何ヶ月か前までは小学校に通ってた中一の徹相手に情けないとは思いつつ、ぐうの音も出ないのは事実だし、俺は素直に頭を下げた。

 で、

「やりい! 俺の勝ち~! 涼兄ちゃん、マジで上達しないな」

「うっせ! 俺、元々格闘系のゲームは苦手だし…!」

 俺と徹は、対戦型のゲームをしてたんだ。でも、こいつ、やたら強くて、一度も勝てたことがない。最初は悔しかったけど、今はもう、接待のつもりでやってる感じだな。徹から情報提供してもらうために。

 と、自分が負けた画面をぼんやりと眺めてたら、

「お、もうこんな時間か。じゃ、オレ、この後は生配信だから」

 とか言いつつ、部屋を出ていった。

 生配信というのは、こいつ、今、なんか動画サイトで配信者ってのをやってて、しかももう、一万人もファンがついてるらしい。

 ……もしかしたら、俺より人気あるんじゃないか……?

 なんてことも思ってしまう。ちなみに、配信する時は、わざわざそれ用に自分の部屋の一角にブースまで作って、自作の変な仮面を着けて、ボイスチェンジャーも使って声を変えて、身バレしないように気を付けてやってるらしい。

 放送時間は一回三十分ほど。HNは『トール』。放送中に家族に名前呼ばれたりしても大丈夫なように本名に近いそれにしたようだ。

 で、話す内容は、都市伝説を独自視点で解釈したものだったり、話題になってるニュースについてやっぱり独自視点で解説してたりってものだった。

 俺は普段の徹のことをよく知ってるから気恥ずかしくて見てられないんだけど、中学生とは思えない切り口で語るのがウケてるらしくて、さすがに上位配信者には遠く及ばなくても、地味に根強い人気があるそうだ。

 おかげで、月に十万円近い収入もあるとも。

 ……俺のモデルのバイト料よりも下手したら多いかもしれない……

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