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焦燥の章

俺の胸は

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 こうして、結局、芙美が氷山ひやまと姪と叔父の関係だってことを隠そうとして微妙に不審な行動になってたのを俺が深読みしてしまったというのが、今回の顛末だった。

 これまでは芙美が相田とグルになってあれこれ仕掛けてたことで、俺の方も余計に気にし過ぎてしまったらしい。

 本当にくだらない行き違いだった。

「ごめん、芙美……俺が勘繰り過ぎてた……」

「ううん! 私こそごめん! 涼くんにだけは話しとけばよかったね。涼くん、そういう部分は口固いし…!」

 なんて俺と芙美のやり取りを見てた氷山ひやまが、

「仲がいいのは結構だが、君ら二人、特に梁川はこれまで何度も授業をサボっていたことについては、すでに一年からの成績として出ているぞ。学習に対する意欲については最低ラインだ。今すぐ改めていかなければ、当然、今後の成績にも響いてくる。高校は授業を受けるも受けないも当人の勝手だが、自身が親から金を出してもらって学校に通っているということと、目の前の課題に対する姿勢も評価対象であることを自覚するべきだな。でなければ、将来の就職においても、企業に『やりたくないというだけの理由で自身がやるべきことを放棄するような人物だな』と見做され、採用を見送られることもあるかもしれない。自身の普段の行いが己の人生を決めるのだと心得たまえ……!」

 と、きっちりお説教を残していった。

「はい……」

「すいません……」

 俺と芙美は、二人して小さくなってうなだれるしかなかった。

 でも、氷山ひやまがその場を立ち去った後、

「あ! 大変! お昼休み終わっちゃう!」

 芙美がそう声を上げて、二人して慌てて弁当をかっこんだ。せっかくの芙美の手作り弁当なのに、味わう暇もなかった。

 そして、予鈴が鳴り始めると、

「急ご! 涼くん!」

 芙美に手を引っ張られて、教室へと向かう。俺の手を握る芙美の手に込められた力が、そのまま、芙美の俺への想いだって改めて感じる。

 それを実感すると、俺、何を焦ってたのかなって気にもなってくる。芙美はこんなにも俺のことを想ってくれてるじゃん。なんでそれを疑わなきゃいけなかったんだろう……

 ……って、それは、芙美の俺への仕打ちもあってのことだけどな……!

 なんてことも思いつつ、俺の胸は何となくあったかくなってたのだった。



 ただ、この時、弁当を急いで食う羽目になったのもそうだけど、何より昼寝ができなかったことで、午後の授業は地獄だった。

『ぐおお……意識が……意識が、途切れ……る……』

「頑張って、涼くん……!」

 小声で芙美が励ましてくれるけど、マジで辛かった。





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