YOU BECAME SO…

せんのあすむ

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焦燥の章

相談はしてみたけれど

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「あ、ごめ~ん。今日はちょっと用事ができて一緒に帰れないんだ。バイトの時間には間に合わせるつもりだけど、先帰ってて」

 放課後、いつものように一緒に帰ろうと芙美を見たら、アイツ、両手を合わせて拝むみたいにしてそう言ってきた。

 バイトの時間にはって、今日は俺も撮影が入ってるから、その時間には行かなきゃいけないんだぞ。でも。

(しょうがない。そういう日もあるか)

 俺は自分にそう言い聞かせて、「分かった…」とだけ答えて、一人で学校を出た。

 そしたら、しばらく歩いたところで、

「よっ! 少年、暗いな!!」

 なんて後ろから底抜けに明るい声を掛けられて思わずつんのめりそうになる。

「…相田か」

 振り返った俺の視線の先にいたのは、ニヤニヤ笑う、芙美の友達ツレの相田だった。コイツ、波長が合うのかノリが芙美に近くて、でもコイツは芙美じゃないから、ちょっと苦手なんだよな。

 しかも、割と気が多いと言うか、『恋多き』って言うか、以前は水泳部のマネージャーしててちょっと前まで水泳部の奴が好きだって話だったのに、今はバスケ部の熱血バカ、鈴木と付き合ってるらしいし。

 ああ、でも。

(そうだ。気の多いコイツなら、何人もの相手を同時に好きになる気持ちとか分かるかも)

 とか頭によぎって、

「今日は私も芙美ちゃんにフられちゃったし、鈴木くんは部活で遅いし、フられた者同士、一緒に帰ろ? どうせ行くんでしょ? <らびっとはっち>にさ」

 と言われたのを素直に受け入れた。

 <らびっとはっち>ってのは、芙美のバイト先で、俺がいつもアイツに近寄る悪い虫を監視するために行ってる喫茶店の名前だ。マスターの娘さんが昔からウサギを飼ってて、それにちなんで付けた名前らしい。

 まあそれはさておき、あれこれ前置きを考えられるほど俺は器用じゃないから、さっそく本題に入る。

「あのさ、相田。ちょっと聞いていいか?」

 って一応は断わりもいれつつ、

「ん? なに? 私に答えられることなら何でも答えるよ。他ならない芙美ちゃんの大切な人のためだもん」

 とか言ってくれたのを幸いと、単刀直入に。

「相田ってさ、ちょっと前までは水泳部の奴と付き合ってたんだよな。でも今はバスケ部の鈴木と付き合ってるんだろ? どうしてそんな風にコロコロ好きな相手変えられるんだ? それとも同時に好きだったのか?」

 そう言った俺に、相田はそれまでのニコニコした笑顔から急にムッとした顔になって、

「梁川くんって、デリカシーないよね」

 って固い声で言ってきたのだった。

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