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焦燥の章

ただのオッサン

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 数学の氷山ひやまは、見た目だけならクール系のイケメンで、いかにも女子に人気が出そうなタイプだった。実際、氷山のことを『カッコいい♡』と言う女子は多い。

 でも同時に、さっきも言った通り課題をやってこない生徒には容赦ないから、苦手だと思ってる生徒もやっぱり多い。

 しかも女子とかが色目を使ったり、男子が馴れ馴れしく仲良くなって手心を加えてもらおうとかするとそれこそ逆効果っていう堅物でもある。

 だから、<鬼畜眼鏡>ってだけじゃなく、<氷結魔人>とか<死の氷山デスアイスバーグ>なんていう風にも呼ばれてるらしい。

 そんな氷山とでも気安く話し掛ける芙美の<コミュ力お化け>ぶりには感心しつつも、俺は正直、内心穏やかじゃなかった。

 芙美に言い寄る野郎共についてはアイツ自身が結構容赦なく返り討ちにしてたりするから実はそんなに神経質にならなきゃいけないほどじゃないってのが最近は分かってきた。

 だけど、アイツの方から近寄っていく場合はどうすりゃいいんだ…?

 芙美は俺のことが好きなはずだ。それは疑いようがないと思う。けど、俺のことは好きな上で、他の奴にもちょっと心動かされたりってのが絶対にないってまでは言えないんじゃないか?

 そしてその相手が氷山って可能性も……?

 クソッ、気持ちがざわついて、休憩時間にも寝られない。

「あれ? 涼くん、今日はお昼寝しないの?」

 …誰のせいだと思ってるんだよ。お前が、あんな……

 口に出掛けたそれを呑み込んで、

「なんか、ちょっと寝付けなくてな…」

 なんて誤魔化してしまう。そしたら芙美は、自分の膝を平手でピシピシ叩きながら、

「じゃあ、ほらほら、私の膝枕で寝たら? ピチピチJKの膝枕だよ。って、ムラムラして余計に寝られなくなるか。あはは♡」

 …ただのオッサンじゃねーか。

 だけどコイツのこういうところも、キライじゃないんだよな。

 普通の男は、女がこういう風にするのって嫌うのかもしれない。俺も、コイツ以外の女がそんなこと言ってたら軽く引いてしまう気がする。

 でもコイツがそんな風にしてても…少しは引くけど…嫌いにとかはなれない。

(俺、本当に好きなんだな…コイツのこと)

 なんて改めて思わされる。

 すると芙美は俺の頭を掴んで、強引に自分の膝の上に乗せた。

「私、他の人にはこんなことしないよ。涼くんだからできるんだよ。涼くん。これからもよろしくね」

 何となく不安になってる俺の気持ちを見透かすみたいに芙美がそういうのを、アイツの膝枕の感触を感じながら俺は黙って聞いてたのだった。



to be continued…

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