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追憶の章
だいじにしろよ
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芙美が俺のことを好きでいてくれる理由はこれで分かった。次は俺が芙美を好きな理由だ。
でもそれはもう今さら考えるまでもないか。
俺がどこにいても、何をしてても、誰の目にも留まってなくても、アイツだけはいつだって見てくれてた。見付けてくれた。
しかも、不思議とそれが嫌じゃなかった。他人に関わられるのは好きじゃなかったから無意識に気配を消してたっていうのもあると思うけど、アイツが傍にいてくれるのは嫌じゃなかった。
……最近はちょっと苦痛な時も無いわけじゃないが……
まあそれも、アイツのことを疎んだり嫌ったりしなきゃならないほどじゃないから、気にしなければ済むかな。
なんてことを思ってると、俺の意識がふ~っと浮かび上がっていくのが分かった。覚醒が近い。
「フミをだいじにしろよ」
不意にそんな風に声を掛けられて思わず振り向くと、そこには幼い頃の俺がいた。
「…言われなくても」
俺もそう応じてひらひらと手を振る。
確か今はいつもの昼休みだったか。そしてまた、いつものようにアイツの膝枕で俺は寝てるんだ。
「あ、目が覚めた? 涼君。ちょうどお昼休みが終わるところだよ。あんまりサボってるとさすがにヤバいから、今日はちゃんと授業に出よう? 私たちは親のスネかじってる身なんだからさ」
なんて、せっかくのいい気分の目覚めにお説教か。ホント、お前らしいよな。
「ああ…そうだな」
ぶっきらぼうに応えて、でも素直に言うことは聞いて、俺は芙美の後に続いて教室へ向かいかける。
そんな俺の視界の隅に捉えられたものがあった。
空をすうっと滑るように飛んで、それから金網の柵にとまった黒い影。
『カラス……』
もちろん、俺が小さかった頃に戦ったアイツとは別のだと思うけど、ジロリと俺を睨んだような気がして、思わず苦笑いを浮かべてしまったのだった。
FIN~
でもそれはもう今さら考えるまでもないか。
俺がどこにいても、何をしてても、誰の目にも留まってなくても、アイツだけはいつだって見てくれてた。見付けてくれた。
しかも、不思議とそれが嫌じゃなかった。他人に関わられるのは好きじゃなかったから無意識に気配を消してたっていうのもあると思うけど、アイツが傍にいてくれるのは嫌じゃなかった。
……最近はちょっと苦痛な時も無いわけじゃないが……
まあそれも、アイツのことを疎んだり嫌ったりしなきゃならないほどじゃないから、気にしなければ済むかな。
なんてことを思ってると、俺の意識がふ~っと浮かび上がっていくのが分かった。覚醒が近い。
「フミをだいじにしろよ」
不意にそんな風に声を掛けられて思わず振り向くと、そこには幼い頃の俺がいた。
「…言われなくても」
俺もそう応じてひらひらと手を振る。
確か今はいつもの昼休みだったか。そしてまた、いつものようにアイツの膝枕で俺は寝てるんだ。
「あ、目が覚めた? 涼君。ちょうどお昼休みが終わるところだよ。あんまりサボってるとさすがにヤバいから、今日はちゃんと授業に出よう? 私たちは親のスネかじってる身なんだからさ」
なんて、せっかくのいい気分の目覚めにお説教か。ホント、お前らしいよな。
「ああ…そうだな」
ぶっきらぼうに応えて、でも素直に言うことは聞いて、俺は芙美の後に続いて教室へ向かいかける。
そんな俺の視界の隅に捉えられたものがあった。
空をすうっと滑るように飛んで、それから金網の柵にとまった黒い影。
『カラス……』
もちろん、俺が小さかった頃に戦ったアイツとは別のだと思うけど、ジロリと俺を睨んだような気がして、思わず苦笑いを浮かべてしまったのだった。
FIN~
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