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追憶の章
印象が残ってた
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今はさすがにそれほどじゃなくなったけど、小さい頃の俺は血とか乱暴な雰囲気とかが苦手で、特に血を見れば気を失ってしまうこともあるほどだった。
だからこの時も、自分の頭から滴っているのが汗じゃなくて血だってことに気付いて気を失ってしまったんだと思う。アドレナリンだか何だかが出てて痛みに気が付かなかったんだろう。
傷そのものも、出血の割には大したことなくて、今でも生え際に微かに傷跡が残ってるくらいでしかなかった。
でもそんなことはどうでも良くて、俺はこの時、血を見ただけで情けなくのびてしまった自分が恥ずかしくて嫌で、だから記憶に蓋をしてしまったんだろうな。そのせいで思い出せなかったんだ。
けど、今ならもう大丈夫だ。恥ずかしいのは確かでも、あの時、芙美を守ることができたのは確かなんだから。
昼寝から覚めた俺に芙美が抱き付いて泣いてたことがあったのをうっすらと覚えてるが、たぶん、それがこの後だったんだろうな。確か泣き止んだ芙美と一緒にタコヤキ味のスナックを食べた覚えもあるし。何故か頭がズキズキと痛んでた覚えもある。きっとその痛みと芙美が泣いてたっていうのが印象に残ってたんだろう。もしかするとそれが、『芙美を泣かせたことがある』という記憶として残ってたのか…?
そしてその後、役所が本格的にカラスを追い払う対策を始めたこともあって、カラスはほとんど見られなくなった。思えば俺が怪我をしたことで、腰の重い役所としても問題が大きくなるのを恐れて対策したってことか。
被害が出てからじゃないと動かないってのはいつの世も同じなのかもしれない。
あと、その何日か後に、近所の公園で俺が珍しく芙美と遊んでると作業服を着た大人が何人も来て、
「ごめんね、今から作業するから今日はもう公園使えないんだ」
って言われて「ぶーぶー」と不満そうな芙美と一緒に公園を出た。だけど何をするのかが気になって少し離れたところで見てたら、公園の中の木に梯子を掛けて上って、枝のところから鳥の巣みたいのを持ってそれをゴミ袋に入れてたりしたのが分かったな。
それもなんだかやけに印象が残ってたのか覚えてる。そうか、あれはきっとカラスの巣だったんだ。カラスもヒナを育てるために食べ物を必要としてたんだろうって思った。
あんなことがあったのに俺がやたらとカラスを嫌ったり怖がったりしなかったのは、その光景を見たからっていうのもあるのかもな。
これで、芙美がどうして俺のことをあんなに好きでいてくれてるのかが分かった気がする。
……その割には、結構ヒドイことをしてくる気もするが……
まあ、それはいいか。
to be continued…
だからこの時も、自分の頭から滴っているのが汗じゃなくて血だってことに気付いて気を失ってしまったんだと思う。アドレナリンだか何だかが出てて痛みに気が付かなかったんだろう。
傷そのものも、出血の割には大したことなくて、今でも生え際に微かに傷跡が残ってるくらいでしかなかった。
でもそんなことはどうでも良くて、俺はこの時、血を見ただけで情けなくのびてしまった自分が恥ずかしくて嫌で、だから記憶に蓋をしてしまったんだろうな。そのせいで思い出せなかったんだ。
けど、今ならもう大丈夫だ。恥ずかしいのは確かでも、あの時、芙美を守ることができたのは確かなんだから。
昼寝から覚めた俺に芙美が抱き付いて泣いてたことがあったのをうっすらと覚えてるが、たぶん、それがこの後だったんだろうな。確か泣き止んだ芙美と一緒にタコヤキ味のスナックを食べた覚えもあるし。何故か頭がズキズキと痛んでた覚えもある。きっとその痛みと芙美が泣いてたっていうのが印象に残ってたんだろう。もしかするとそれが、『芙美を泣かせたことがある』という記憶として残ってたのか…?
そしてその後、役所が本格的にカラスを追い払う対策を始めたこともあって、カラスはほとんど見られなくなった。思えば俺が怪我をしたことで、腰の重い役所としても問題が大きくなるのを恐れて対策したってことか。
被害が出てからじゃないと動かないってのはいつの世も同じなのかもしれない。
あと、その何日か後に、近所の公園で俺が珍しく芙美と遊んでると作業服を着た大人が何人も来て、
「ごめんね、今から作業するから今日はもう公園使えないんだ」
って言われて「ぶーぶー」と不満そうな芙美と一緒に公園を出た。だけど何をするのかが気になって少し離れたところで見てたら、公園の中の木に梯子を掛けて上って、枝のところから鳥の巣みたいのを持ってそれをゴミ袋に入れてたりしたのが分かったな。
それもなんだかやけに印象が残ってたのか覚えてる。そうか、あれはきっとカラスの巣だったんだ。カラスもヒナを育てるために食べ物を必要としてたんだろうって思った。
あんなことがあったのに俺がやたらとカラスを嫌ったり怖がったりしなかったのは、その光景を見たからっていうのもあるのかもな。
これで、芙美がどうして俺のことをあんなに好きでいてくれてるのかが分かった気がする。
……その割には、結構ヒドイことをしてくる気もするが……
まあ、それはいいか。
to be continued…
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