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追憶の章
タイマン
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「りょうちゃん!」
俺の姿を見た芙美が声を上げる。そんなアイツと俺との間には、一羽のカラス。
そのカラスは「ア?」って感じで俺の方を振り向いて、ガンを飛ばしてきた。
まだ幼かった俺にはそのカラスはすごく大きく見えた。いや、実際にカラスって思ったより大きいんだよな。特に羽を広げると、驚くぐらいに迫力がある。
それを分かってるのか、俺を睨み付けたカラスは羽を大きく広げてみせ、威嚇してくる。完全に俺を見下して馬鹿にしてるのが分かった気がした。
だけどその時の俺は、怯えて泣きそうな顔をしてる芙美の姿を見たからか、自分でも信じられないくらいに頭に血が上った感じで強気だった。
「フミをイジメるな!!」
俺がそう怒鳴ると、カラスはブチ切れたみたいに、
「ガーッ!!」
って吠えながら文字通り飛び掛かってきた。でも俺も負けじと両手を滅茶苦茶に振り回して応戦する。
「わーっ!」
「ガーッ!!」
たぶん、声だけ聴いてたら何が起こってるのか分からなかったかもしれない。
小さかった俺にとってはまるで怪獣のような大きさに感じられたカラス相手に、何度もパンチを繰り出した。一発もあたらないけどとにかくパンチした。
カラスも嘴や爪で攻撃してくる。何度か頭にガツンとした衝撃を感じたけど、不思議と痛くなかった。
でもその時、
「キャーッ!」
って、さっきよりもっと大きな声で芙美が悲鳴を上げた。
「りょうちゃん! りょうちゃん!!」
何度も俺の名を呼ぶ芙美の目に涙が光ってた。
『なんだよ、何で泣いてるんだよ。泣くなよ、俺が今、このカラスを追っ払ってやるから』
そんな風に思ってたら、
「うわっ! なんだ!?」
「カラス!?」
俺の背後でまた別の誰かの声がした。と思ったら、
「こらっ! あっちいけっ、しっしっ!!」
って怒鳴り声が。
大人だった。大人の男の人の声だ。
芙美の悲鳴と騒ぎを聞きつけて近所の大人たちが駆け付けてくれたんだ。
さすがに何人もの大人まで加勢したとなると不利だと思ったのか、カラスは飛び上がって姿を消した。
それを見届けて俺は、芙美の方にふり返って、
「だいじょうぶか…?」
って訊いた。
でもそれを聞いた大人たちは、
「いやいや、お前が大丈夫じゃないよ!!」
とかなんとか騒いでる。
「…え?」
何を言ってるんだ?と思いながら額から伝ってきた汗?を拭いた俺の手が、何故か真っ赤になっていた。
そんな自分の手を見た瞬間、俺の意識はふーっと遠のいていったのだった。
そういや俺、血とかもぜんぜんダメだったんだっけ……
to be continued…
俺の姿を見た芙美が声を上げる。そんなアイツと俺との間には、一羽のカラス。
そのカラスは「ア?」って感じで俺の方を振り向いて、ガンを飛ばしてきた。
まだ幼かった俺にはそのカラスはすごく大きく見えた。いや、実際にカラスって思ったより大きいんだよな。特に羽を広げると、驚くぐらいに迫力がある。
それを分かってるのか、俺を睨み付けたカラスは羽を大きく広げてみせ、威嚇してくる。完全に俺を見下して馬鹿にしてるのが分かった気がした。
だけどその時の俺は、怯えて泣きそうな顔をしてる芙美の姿を見たからか、自分でも信じられないくらいに頭に血が上った感じで強気だった。
「フミをイジメるな!!」
俺がそう怒鳴ると、カラスはブチ切れたみたいに、
「ガーッ!!」
って吠えながら文字通り飛び掛かってきた。でも俺も負けじと両手を滅茶苦茶に振り回して応戦する。
「わーっ!」
「ガーッ!!」
たぶん、声だけ聴いてたら何が起こってるのか分からなかったかもしれない。
小さかった俺にとってはまるで怪獣のような大きさに感じられたカラス相手に、何度もパンチを繰り出した。一発もあたらないけどとにかくパンチした。
カラスも嘴や爪で攻撃してくる。何度か頭にガツンとした衝撃を感じたけど、不思議と痛くなかった。
でもその時、
「キャーッ!」
って、さっきよりもっと大きな声で芙美が悲鳴を上げた。
「りょうちゃん! りょうちゃん!!」
何度も俺の名を呼ぶ芙美の目に涙が光ってた。
『なんだよ、何で泣いてるんだよ。泣くなよ、俺が今、このカラスを追っ払ってやるから』
そんな風に思ってたら、
「うわっ! なんだ!?」
「カラス!?」
俺の背後でまた別の誰かの声がした。と思ったら、
「こらっ! あっちいけっ、しっしっ!!」
って怒鳴り声が。
大人だった。大人の男の人の声だ。
芙美の悲鳴と騒ぎを聞きつけて近所の大人たちが駆け付けてくれたんだ。
さすがに何人もの大人まで加勢したとなると不利だと思ったのか、カラスは飛び上がって姿を消した。
それを見届けて俺は、芙美の方にふり返って、
「だいじょうぶか…?」
って訊いた。
でもそれを聞いた大人たちは、
「いやいや、お前が大丈夫じゃないよ!!」
とかなんとか騒いでる。
「…え?」
何を言ってるんだ?と思いながら額から伝ってきた汗?を拭いた俺の手が、何故か真っ赤になっていた。
そんな自分の手を見た瞬間、俺の意識はふーっと遠のいていったのだった。
そういや俺、血とかもぜんぜんダメだったんだっけ……
to be continued…
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