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追憶の章

夢の中へ

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 その日、俺は夢を見ていた。小さかったころの夢だった。これは、俺が見た夢の内容の話だ。



 小学校低学年の頃、俺はモテなかった。今でこそモデルとして顔も知られたからかなんかすごく視線を感じるようになったけど、この頃の俺はいつも一人だった。

 たぶん、小さい頃って、元気で明るくて楽しくて面白い奴がモテるんだよな。

 鈴木みたいな。

 とにかく俺はその頃、友達って言える相手もいなくて、体育とかで集合する時、いなくても誰にも担任教師にも気付かれないような子供だったんだ。

 なのに、一人だけ、気付いてくれたヤツがいた。

「せんせい! りょうちゃんがいません!」

 って。それで慌ててみんなで探して、校庭の端にある遊具の築山の中で寝てる俺が見付かったんだ。

 前の日、宿題が残ってたのを忘れてて、寝る前になって気付いて、それから宿題したから寝不足で、体育の授業中に気分悪くなって築山の中は涼しかったから休んでたら寝てしまったんだろうな。

 その時、俺がいないのに気付いてくれたのが芙美だった。

 ホントは授業中に俺が気持ち悪くなってるの気付いてて、でもその時の担任は、無駄に熱血で、『気分悪い時こそ走って、血流良くして回復させろ!』とか、わけの分からない謎理論を振り回すタイプだったから、俺が築山に入っていくのを、他の奴はまったく気付いてなかったのに芙美だけが気付いてそっとしておいてくれたらしい。

 …あれ? 芙美のヤツ、優しいじゃん。

 この頃はこんな感じで優しいヤツだったじゃん。どうしてそれが、

『食べ切るのもやっとのハイカロリー弁当をはじめとした、ハイカロリーを超えたデスカロリー食で俺をデブらせよう』

としたり、

『毛生え薬の実験に使うために精神的ストレスかけて抜け毛を増やさせた』

りするようになったんだ?

 小さい頃に俺があいつを泣かせたりしたことがあってその仕返しかとも思ったのも、なんだか記憶が曖昧だ。なんで俺はあいつを泣かせたんだ?

 それに俺、そんなことされてもあいつのことが好きなんだけど、それも何でだったっけ?

 ……思い出せない。



 これはたぶん、そんな俺が、その辺りの理由を無意識のうちに本気で思い出そうとして、夢として頭の中に蘇らせたものってことなんだろうなって気がする。

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