転生したらついてましたァァァァァ!!!

夢追子(@電子コミック配信中)

文字の大きさ
183 / 187
第二部

第六章 アルバート(inモブ女)、初めての大冒険!!!㊲『初めての冒険の終わり』

しおりを挟む
      三十七

 ヴィルは涼しい顔で布袋からぶちまけた硬貨を数えて確認する。
 沢崎直と違い、ヴィルは硬貨の量に怖気づいてはいなかった。それどころか、あれほどの量を手際よく迅速に二回数え終えると、すぐに布袋にもう一度仕舞い込んだ。
「確認できました、アルバート様。大丈夫です。」
「……はい。」
 沢崎直は疲労を感じていた。
(そういうことじゃなかったんだけど……。)
 まあ、結局は確認した方が良かったし、沢崎直が確認するよりも格段に速い作業だったので、何の文句もあるわけがないのだが……。
「では、またお越しくださいね。」
「……お世話になりました。」
 ぐったりした沢崎直は、お姉さんに頭を下げてギルドを後にするのだった。
 また、などと社交辞令を言われたが、ちょっとしばらくの間はギルドに近寄りたくなかった。初めての大冒険はあまりに濃い内容になり、お腹いっぱいを通り越してちょっと食傷気味である。
 その上、想定外の報酬も手に入り、使いどころも分からない。
 更に、沢崎直のお気に入りの場所にはモンスターの出現情報もある。
 本当は地味にコツコツと薬草採取をして、いつの日にか自信と勇気と実力が今よりも備わった時に、もう少しだけ背伸びしてもう少しだけ難しい依頼を受けたりしてみようなどと心の中で密かに計画していたが、そういうモノは全て崩れ去った。
 今後のことを改めて考え直さなくては、沢崎直は疲労感の残る頭で切に感じていた。
 現実は沢崎直に厳しく、モブ女のゆっくりとした歩みに合わせてはくれないようだ。
「アルバート様。これからどうしますか?」
 ギルドで少し時間がかかったこともあり、街は夕刻になり始めていた。
 すっかりと赤さを増した太陽を見つめ、沢崎直は今日という密度の濃い一日を振り返った。
(……何か、イロイロあったな……。)
 午前中の薬草採取の時間など、もはや遠い過去のように感じられ、沢崎直は今日一日で何歳か年を取ったような気さえしていた。
 賑やかで忙しない街を眺め、ふぅっと息を吐き出す。
(……ニートの引きこもり状態からは脱出したけど……。何か、よく分かんなかったな。)
 冒険者としての第一歩に、沢崎直はそんな感想を持った。
 モブ女の領分では、ついていけない事態の連続であったからだ。
 今日はそれでも何とかこなせたが、今後もこんなことの連続では身がもたない。もちろん、初日である今日が大変だっただけで、今後は凪の日々が続く可能性もあるが、それは未来の話で予知能力のない沢崎直に分かるはずもない。
(……冒険はたまにでいいや。)
 沢崎直はそう結論付けた。
 そうでなくても、沢崎直は異世界初心者でしなくてはならないことが山積みなのである。このまま本格的に冒険者を始めたら、身体がいくつあっても足りなくなるに違いない。それこそ、先日再会したハンプシャー伯爵令嬢が言っていた『見聞を広げるため』で十分である。要は、『無職』でなければいいのだ。
(ゆっくりがいいよ、何事も。無理は禁物だもん。)
 赤くなって沈んでいく夕日を見ながら、沢崎直はそう心に決めていた。
「帰りましょうか?ヴィル。」
 沢崎直がそう言うと、ヴィルは微笑んで頷く。
「はい。」
 そろそろジョナサンも待ちくたびれている頃だろう。
 沢崎直は帰路に着くことにした。
(さて、気を引き締めないと。)
 遠足は、家に帰るまでが遠足である。
 想定外のラッキーの後なので、変に浮かれて何か起きてはいけない。足元を掬われないように気を付けるに越したことはない。
 そんなモブ女的思考で、沢崎直はまた一歩踏み出すのだった。






しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中に呆然と佇んでいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出したのだ。前世、日本伝統が子供の頃から大好きで、小中高大共に伝統に関わるクラブや学部に入り、卒業後はお世話になった大学教授の秘書となり、伝統のために毎日走り回っていたが、旅先の講演の合間、教授と2人で歩道を歩いていると、暴走車が突っ込んできたので、彼女は教授を助けるも、そのまま跳ね飛ばされてしまい、死を迎えてしまう。 享年は25歳。 周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっている。 25歳の精神だからこそ、これが何を意味しているのかに気づき、ショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  ブックマーク・評価、宜しくお願いします。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

おせっかい転生幼女の異世界すろーらいふ!

はなッぱち
ファンタジー
赤ん坊から始める異世界転生。 目指すはロマンス、立ち塞がるのは現実と常識。 難しく考えるのはやめにしよう。 まずは…………掃除だ。

オネエ伯爵、幼女を拾う。~実はこの子、逃げてきた聖女らしい~

雪丸
ファンタジー
アタシ、アドルディ・レッドフォード伯爵。 突然だけど今の状況を説明するわ。幼女を拾ったの。 多分年齢は6~8歳くらいの子。屋敷の前にボロ雑巾が落ちてると思ったらびっくり!人だったの。 死んでる?と思ってその辺りに落ちている木で突いたら、息をしていたから屋敷に運んで手当てをしたのよ。 「道端で倒れていた私を助け、手当を施したその所業。賞賛に値します。(盛大なキャラ作り中)」 んま~~~尊大だし図々しいし可愛くないわ~~~!! でも聖女様だから変な扱いもできないわ~~~!! これからアタシ、どうなっちゃうのかしら…。 な、ラブコメ&ファンタジーです。恋の進展はスローペースです。 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。(敬称略)

処理中です...