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第二部
第六章 アルバート(inモブ女)、初めての大冒険!!!㉟『魔石のお値段』
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三十五
「えっ!?」
思わぬお姉さんの言葉に、沢崎直は驚愕して恐れおののく。
そんな沢崎直の態度の真意が伝わらず、お姉さんはうんうんと頷きながら続けた。
「そうですよね…。とても品質のいい魔石でしたから。とりあえず、ご提示した金額でしたけど、やはり足りないですよね?」
そして、一人で納得すると、その書類に書いていた金額を書き替えてしまう。
「これでいかがですか?」
笑顔で尋ねられて、沢崎直はブンブンと頭が飛んでいきそうなほど首を振った。先程までの金額でも怖かったのに、それ以上にされてはかなわない。何より、モブ女の最初の冒険にしては額が天文学的だ。もっと、地味でコツコツしていたい。
だが、お姉さんは沢崎直の否定を、金額が気に入らないことと取ったようだ。
「……どうしましょう。これ以上をお支払いするとなると、私では取扱い権限がありませんし、所長に相談が必要になります。それに一括でお支払いできませんから、また後日となりますけど、大丈夫ですか?」
まあ、それもしょうがないかくらいの感じで、職員のお姉さんが一人で納得しながら話を進めていく。
どうやら、話は沢崎直の手の届かない場所まで進み始めようとし始めた。
なので沢崎直は、恐怖に身を震わせながら待ったをかけた。
「ち、違います!わ、私は拾っただけですので!」
とりあえず声を出して、話の進行を止める。
お姉さんは笑顔で、頷いた。
「はい!採取物ですよね?」
明らかに話が通じてない様子に沢崎直は焦って言葉を続けた。
「いえ、そうではなく、その。私はモンスターを倒したわけでもなく、落ちていた魔石を拾っただけですので、所有権を主張するなどおこがましく……。なので、こんな大きな金額を提示されても、……困ります。……何せ、昨日、冒険者になったばかりですし……。」
最後は、自信のなさから語尾が消え入りそうになったが、出来るだけ自分の意見を主張した沢崎直。金額交渉などしたいわけではないのだ。
そんな沢崎直にお姉さんは笑顔で説明を始めた。
「魔石などの採取物は拾った方に所有権があるのが冒険者の原則です。もちろん、私有地や特別区域などの場合はその原則から外れることもありますが、今回の場合は、そうではありませんよね?」
職員のお姉さんの説明は初心者の沢崎直にも分かりやすく、そこまでは納得できた。
今回は近くの草原であるから、例外には当たらない。
お姉さんは、そこまで初心者・沢崎直が納得できたのを確認して続けた。
「でしたら、あの魔石は採取された時点で、貴方の所有になります。ですから、この報酬は貴方のものです。」
そう言われても、沢崎直には身に余ることなので、どうしていいか分からない。
そんな沢崎直を勇気づけるように、お姉さんは少し微笑んで付け足した。
「普段ならあの場所にはモンスターも出ないので、魔石すら落ちていませんよ。とってもラッキーなことです。」
ちょっとした不運に好かれ続けているモブ女にはそんなラッキーなどあり得ないことだ。
沢崎直はそのお姉さんの言葉にも素直に頷くことは出来なかった。
「えっ!?」
思わぬお姉さんの言葉に、沢崎直は驚愕して恐れおののく。
そんな沢崎直の態度の真意が伝わらず、お姉さんはうんうんと頷きながら続けた。
「そうですよね…。とても品質のいい魔石でしたから。とりあえず、ご提示した金額でしたけど、やはり足りないですよね?」
そして、一人で納得すると、その書類に書いていた金額を書き替えてしまう。
「これでいかがですか?」
笑顔で尋ねられて、沢崎直はブンブンと頭が飛んでいきそうなほど首を振った。先程までの金額でも怖かったのに、それ以上にされてはかなわない。何より、モブ女の最初の冒険にしては額が天文学的だ。もっと、地味でコツコツしていたい。
だが、お姉さんは沢崎直の否定を、金額が気に入らないことと取ったようだ。
「……どうしましょう。これ以上をお支払いするとなると、私では取扱い権限がありませんし、所長に相談が必要になります。それに一括でお支払いできませんから、また後日となりますけど、大丈夫ですか?」
まあ、それもしょうがないかくらいの感じで、職員のお姉さんが一人で納得しながら話を進めていく。
どうやら、話は沢崎直の手の届かない場所まで進み始めようとし始めた。
なので沢崎直は、恐怖に身を震わせながら待ったをかけた。
「ち、違います!わ、私は拾っただけですので!」
とりあえず声を出して、話の進行を止める。
お姉さんは笑顔で、頷いた。
「はい!採取物ですよね?」
明らかに話が通じてない様子に沢崎直は焦って言葉を続けた。
「いえ、そうではなく、その。私はモンスターを倒したわけでもなく、落ちていた魔石を拾っただけですので、所有権を主張するなどおこがましく……。なので、こんな大きな金額を提示されても、……困ります。……何せ、昨日、冒険者になったばかりですし……。」
最後は、自信のなさから語尾が消え入りそうになったが、出来るだけ自分の意見を主張した沢崎直。金額交渉などしたいわけではないのだ。
そんな沢崎直にお姉さんは笑顔で説明を始めた。
「魔石などの採取物は拾った方に所有権があるのが冒険者の原則です。もちろん、私有地や特別区域などの場合はその原則から外れることもありますが、今回の場合は、そうではありませんよね?」
職員のお姉さんの説明は初心者の沢崎直にも分かりやすく、そこまでは納得できた。
今回は近くの草原であるから、例外には当たらない。
お姉さんは、そこまで初心者・沢崎直が納得できたのを確認して続けた。
「でしたら、あの魔石は採取された時点で、貴方の所有になります。ですから、この報酬は貴方のものです。」
そう言われても、沢崎直には身に余ることなので、どうしていいか分からない。
そんな沢崎直を勇気づけるように、お姉さんは少し微笑んで付け足した。
「普段ならあの場所にはモンスターも出ないので、魔石すら落ちていませんよ。とってもラッキーなことです。」
ちょっとした不運に好かれ続けているモブ女にはそんなラッキーなどあり得ないことだ。
沢崎直はそのお姉さんの言葉にも素直に頷くことは出来なかった。
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