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第二部
第六章 アルバート(inモブ女)、初めての大冒険!!!㉞『所長と師匠』
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三十四
「所長、そろそろ。」
今まで静かに黙って待っていた職員のお姉さんが、壮年の男性が一頻り笑い終えたところで口を挟んでくる。
「ああ、そうだった。」
壮年の男性は、そう言って立ち上がる。
「まあ、何か他に思い出したことがあったら、また知らせてくれ。俺はここの所長のライアン・グラントだ。よろしくな。」
立ち上がりながら、自己紹介をして手を差し出してくる。
(しょ、所長さんなんだ……、やっぱり。)
偉い人と聞いて、少し緊張しながら沢崎直は差し出された手を軽く握り返した。もちろんヘコヘコしてへらへら笑ってである。握り返した手は、ものすごく硬くて実力者であることを感じさせる印象を沢崎直に残した。
「あ、アルバートです。よろしくお願いします。」
自己紹介を済ませた後、所長はその場を去っていく。
どうやら沢崎直が持って来た魔石がホットなモンスター目撃情報のある場所のものだったので、気になって所長は話を聞きに来たらしい。だが、沢崎直には何も実りのある情報を提供できるはずもなかった。
(無駄足踏ませちゃったかな……?)
お忙しい所長に申し訳なかったかと、沢崎直はますます恐縮した。
大きな身体には似合わない足音のなさで遠ざかって行く所長。
帰り際、小さく呟いていた独り言が沢崎直の耳には捉えられた。
「……モンスターがヤバいヤツなら、ゲオルグにでも頼むかな……。街に帰って来たらしいし、どうせ酒代に困ってるだろ……。今度、酒場に行けばいるな?アイツは……。」
(……師匠とも知り合いっぽい……。)
先日、師匠は冒険者ギルドで剣鬼呼ばわりされていると知った。十中八九、所長の口にしたゲオルグという名前は、師匠のことで間違いないだろう。
もし師匠がモンスター退治を引き受けてくださるのなら、これ以上素晴らしいことはない。師匠ならば、さくっと行って、さくっと倒して、その報奨金をさくっと酒代にしてくれるだろう。そうすれば、すぐにでも沢崎直の薬草採取冒険者ライフは再開されるに違いない。
(よし、決めた。師匠が酒場に入り浸れるように、手土産のお酒は少し減らそう。)
沢崎直は自分の未来のために、そう即決した。
ただ、師匠への敬意は示したいし、何よりモンスターは倒してほしいので、手土産の量を減らす分は質を高めてカバーすることにする。量を減らすことは、ヴィルも絶対賛成してくれるし、一石二鳥だ。いや、質のいいお酒を手土産にするのならば、沢崎直もいいお酒を試飲できるし、一石三鳥である。
良いアイディアを思いつき、少しだけ沢崎直の心は晴れた。
所長が去り、お姉さんが話を始める。
「こちらの魔石ですが、買い取りはこの金額になります。」
お姉さんが書類を提示する。
沢崎直は書類を見て、我が目を疑った。
(……えっ?)
思わず二度見する。
だが、何度見ても金額は変わらなかった。
「……こ、これ……?」
一瞬では把握できない額の数字が並んでいて、沢崎直は恐れをなす。
お姉さんは沢崎直の質問に、申し訳なさそうに尋ねてきた。
「これでは足りませんでしたか?」
「えっ!?」
「所長、そろそろ。」
今まで静かに黙って待っていた職員のお姉さんが、壮年の男性が一頻り笑い終えたところで口を挟んでくる。
「ああ、そうだった。」
壮年の男性は、そう言って立ち上がる。
「まあ、何か他に思い出したことがあったら、また知らせてくれ。俺はここの所長のライアン・グラントだ。よろしくな。」
立ち上がりながら、自己紹介をして手を差し出してくる。
(しょ、所長さんなんだ……、やっぱり。)
偉い人と聞いて、少し緊張しながら沢崎直は差し出された手を軽く握り返した。もちろんヘコヘコしてへらへら笑ってである。握り返した手は、ものすごく硬くて実力者であることを感じさせる印象を沢崎直に残した。
「あ、アルバートです。よろしくお願いします。」
自己紹介を済ませた後、所長はその場を去っていく。
どうやら沢崎直が持って来た魔石がホットなモンスター目撃情報のある場所のものだったので、気になって所長は話を聞きに来たらしい。だが、沢崎直には何も実りのある情報を提供できるはずもなかった。
(無駄足踏ませちゃったかな……?)
お忙しい所長に申し訳なかったかと、沢崎直はますます恐縮した。
大きな身体には似合わない足音のなさで遠ざかって行く所長。
帰り際、小さく呟いていた独り言が沢崎直の耳には捉えられた。
「……モンスターがヤバいヤツなら、ゲオルグにでも頼むかな……。街に帰って来たらしいし、どうせ酒代に困ってるだろ……。今度、酒場に行けばいるな?アイツは……。」
(……師匠とも知り合いっぽい……。)
先日、師匠は冒険者ギルドで剣鬼呼ばわりされていると知った。十中八九、所長の口にしたゲオルグという名前は、師匠のことで間違いないだろう。
もし師匠がモンスター退治を引き受けてくださるのなら、これ以上素晴らしいことはない。師匠ならば、さくっと行って、さくっと倒して、その報奨金をさくっと酒代にしてくれるだろう。そうすれば、すぐにでも沢崎直の薬草採取冒険者ライフは再開されるに違いない。
(よし、決めた。師匠が酒場に入り浸れるように、手土産のお酒は少し減らそう。)
沢崎直は自分の未来のために、そう即決した。
ただ、師匠への敬意は示したいし、何よりモンスターは倒してほしいので、手土産の量を減らす分は質を高めてカバーすることにする。量を減らすことは、ヴィルも絶対賛成してくれるし、一石二鳥だ。いや、質のいいお酒を手土産にするのならば、沢崎直もいいお酒を試飲できるし、一石三鳥である。
良いアイディアを思いつき、少しだけ沢崎直の心は晴れた。
所長が去り、お姉さんが話を始める。
「こちらの魔石ですが、買い取りはこの金額になります。」
お姉さんが書類を提示する。
沢崎直は書類を見て、我が目を疑った。
(……えっ?)
思わず二度見する。
だが、何度見ても金額は変わらなかった。
「……こ、これ……?」
一瞬では把握できない額の数字が並んでいて、沢崎直は恐れをなす。
お姉さんは沢崎直の質問に、申し訳なさそうに尋ねてきた。
「これでは足りませんでしたか?」
「えっ!?」
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