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第二部
第六章 アルバート(inモブ女)、初めての大冒険!!!㉛『モンスターと魔石』
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三十一
「実はですね、先程入った情報ですが、近くにモンスターの目撃情報がありまして。」
神妙な声音でギルド職員のお姉さんが説明してくれたところによると、最近、街の近くで少し危険なモンスターの目撃情報があったらしい。それも、その目撃情報があった場所というのは、今日沢崎直が薬草を採取した草原らしい。
(えっ?そんな怖い……。)
モンスターなんて、出来れば二度と遭遇したくない。異世界転生初日に運悪く出くわして、運よく倒したワイルドベアーだけで十分だ。
沢崎直はあんなのどかな草原に現れるモンスターの空気の読めなさを恨めしく思った。そんなことを聞けば、もうしばらくあの場所には行けそうもない。
「調査依頼はすぐに出すつもりです。その結果を受けて、近々、討伐依頼が出るかもしれませんし、騎士団による街周辺の見回りも強化してもらうことになっていますが、薬草の群生地でもあるので、採取の際は気を付けてくださいね?」
「はい。気を付けます。」
お姉さんの親切な忠告に、沢崎直は素直に頷いた。
お姉さんは確認のために沢崎直に尋ねてくる。
「薬草採取の際に、モンスターは見かけませんでしたか?」
モンスターなどというおっかないものは全く見た記憶はない。それどころかのどかな場所だったので、ハイキングがてらまた行きたくなっていたのだ。もうずっと、冒険者として薬草採取を専門にしてもいいくらいに、その場所を気に入っていた。モンスターなどと遭遇していたら、そんなこと欠片も思うはずはないし、そんな噂を聞いたら行けなくなってしまうくらいにはビビっている沢崎直である。
だから、沢崎直は首を振ろうとした。
しかし、クビを振る前に、そんな沢崎直の背後から、ヴィルがそっと囁いてきた。
「アルバート様。」
首だけをヴィルの方に向ける沢崎直。
先程の騒動の後、クレーマーの人が連れて行かれてから、ヴィルはまた気配を消して静かに沢崎直の傍らに控えていたのだが、何か言いたいことがあるらしい。
「先程拾った魔石は、もしかするとそのモンスターと関係あるかもしれませんよ。」
そう言われて、沢崎直は先程拾ったキレイな石のことを思い出した。
ポケットに手をやり、ごそごそと取り出すとお姉さんの前に置いて見せた。
「あ、あのー。モンスターは見てないんですけど……、そういえば、その場所で、これを拾いました。」
お姉さんは沢崎直が取り出した魔石を見て、目を瞠った。
「……これは。」
「……。」
お姉さんの反応に沢崎直は不安になった。
ヴィルの言葉もあって、とりあえず拾って持って来てしまったが、あんまり良くないことだったのだろうか?
「あ、あのー?」
恐る恐る尋ねてみる沢崎直。
何か言われたのなら、仮に拾って持って来ただけでネコババする気はないと宣言してお姉さんに預ける気は満々である。所有権の主張などするつもりはない。
「これは、かなりのモノですね。買い取り価格は弾みますよ。」
だが、お姉さんの言葉は沢崎直の予想とは違った。
もちろん、お姉さんの反応も沢崎直の最悪の想定とは全く別物だった。お姉さんは、少し興奮気味に魔石を矯めつ眇めつして、あろうことか立ち上がった。
「ちょっと待っててくださいね。」
そう言い残して、裏へと去っていく。
沢崎直はカウンターに取り残された。
どうしていいか分からず、沢崎直は振り返って助けを求めるようにヴィルを見つめた。
ヴィルはいつも通りの微笑みで沢崎直を見つめてくれたが、特に何かアドバイスは無いようであった。
「実はですね、先程入った情報ですが、近くにモンスターの目撃情報がありまして。」
神妙な声音でギルド職員のお姉さんが説明してくれたところによると、最近、街の近くで少し危険なモンスターの目撃情報があったらしい。それも、その目撃情報があった場所というのは、今日沢崎直が薬草を採取した草原らしい。
(えっ?そんな怖い……。)
モンスターなんて、出来れば二度と遭遇したくない。異世界転生初日に運悪く出くわして、運よく倒したワイルドベアーだけで十分だ。
沢崎直はあんなのどかな草原に現れるモンスターの空気の読めなさを恨めしく思った。そんなことを聞けば、もうしばらくあの場所には行けそうもない。
「調査依頼はすぐに出すつもりです。その結果を受けて、近々、討伐依頼が出るかもしれませんし、騎士団による街周辺の見回りも強化してもらうことになっていますが、薬草の群生地でもあるので、採取の際は気を付けてくださいね?」
「はい。気を付けます。」
お姉さんの親切な忠告に、沢崎直は素直に頷いた。
お姉さんは確認のために沢崎直に尋ねてくる。
「薬草採取の際に、モンスターは見かけませんでしたか?」
モンスターなどというおっかないものは全く見た記憶はない。それどころかのどかな場所だったので、ハイキングがてらまた行きたくなっていたのだ。もうずっと、冒険者として薬草採取を専門にしてもいいくらいに、その場所を気に入っていた。モンスターなどと遭遇していたら、そんなこと欠片も思うはずはないし、そんな噂を聞いたら行けなくなってしまうくらいにはビビっている沢崎直である。
だから、沢崎直は首を振ろうとした。
しかし、クビを振る前に、そんな沢崎直の背後から、ヴィルがそっと囁いてきた。
「アルバート様。」
首だけをヴィルの方に向ける沢崎直。
先程の騒動の後、クレーマーの人が連れて行かれてから、ヴィルはまた気配を消して静かに沢崎直の傍らに控えていたのだが、何か言いたいことがあるらしい。
「先程拾った魔石は、もしかするとそのモンスターと関係あるかもしれませんよ。」
そう言われて、沢崎直は先程拾ったキレイな石のことを思い出した。
ポケットに手をやり、ごそごそと取り出すとお姉さんの前に置いて見せた。
「あ、あのー。モンスターは見てないんですけど……、そういえば、その場所で、これを拾いました。」
お姉さんは沢崎直が取り出した魔石を見て、目を瞠った。
「……これは。」
「……。」
お姉さんの反応に沢崎直は不安になった。
ヴィルの言葉もあって、とりあえず拾って持って来てしまったが、あんまり良くないことだったのだろうか?
「あ、あのー?」
恐る恐る尋ねてみる沢崎直。
何か言われたのなら、仮に拾って持って来ただけでネコババする気はないと宣言してお姉さんに預ける気は満々である。所有権の主張などするつもりはない。
「これは、かなりのモノですね。買い取り価格は弾みますよ。」
だが、お姉さんの言葉は沢崎直の予想とは違った。
もちろん、お姉さんの反応も沢崎直の最悪の想定とは全く別物だった。お姉さんは、少し興奮気味に魔石を矯めつ眇めつして、あろうことか立ち上がった。
「ちょっと待っててくださいね。」
そう言い残して、裏へと去っていく。
沢崎直はカウンターに取り残された。
どうしていいか分からず、沢崎直は振り返って助けを求めるようにヴィルを見つめた。
ヴィルはいつも通りの微笑みで沢崎直を見つめてくれたが、特に何かアドバイスは無いようであった。
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