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第二部

第六章 アルバート(inモブ女)、初めての大冒険!!!㉚『何とか解決』

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      三十

「助かりました。ありがとうございます。」
 ようやくギルドのカウンターの前は穏やかな空気を取り戻していた。
 一触即発の空気だったはずのその場は、沢崎直の予想外の行動によって荒事になることなく拍子抜けしたように静まった。
 今はもう粛々と列に並び自分の番を待つ者しかその場には存在しない。
 沢崎直はカウンターの職員のお姉さんに、恐縮して首を振った。
「いえ。出過ぎた真似をしてすみません。あれで大丈夫だったのか………。」
 この場を何とか平和的に収めなければという思いからの行動だったが、はたして正解だったのか?他に何かもっといい方法はなかったのか?
 沢崎直が師匠やヴィルくらい腕に自信があれば、あの場をもっとスマートにヒーローのように収められたかもしれないが、そんなことは元・モブ女には無理である。あのクレーマーの人を一捻りにすることもやり込めることも、何だったら論破することも出来ず、ただその場に新たな選択肢を提示しただけだ。
 ダメ元ではあったが、きっとこういう荒くれ者たちが集まりがちな場所には、何かあった時のために荒事専門の強靭な職員が配置されているに違いないという推測の元、緊張して破裂寸前だった場の空気を素っ頓狂な態度で和ましたに過ぎない。
 先程まで職員のお姉さんに絡んでいたクレーマーの人は、沢崎直の提案により即座に呼び出された屈強な職員によって別室へと誘われというか連れて行かれ、そこからは全く姿を見なくなった。
(……あの人、無事だといいけど……。)
 もしかしたらああいう輩に対するマニュアルもお姉さんたちの間にはあるだろうし、暴れるなら暴れるで放っておこうというスタンスだったのかもしれないが、少なくとも沢崎直は目の前で暴れて欲しくなかったし、何よりその渦中に自分や推しのヴィルがいる状況は耐えられなかった。
 そんな危機的状況を内心は冷や汗ダラダラでありながら、無策で行き当たりばったりのその場しのぎで脱出した沢崎直は、ようやく落ち着いて依頼の報告を終えようとしていた。
「本当に助かりました。貴方のおかげで、事故もなくて片付きました。さすがにあの人が暴れはじめたら、取り押さえに所長が来てくれるんですけど、所長は忙しい方なので中々暴れる前に対処するのは難しいんです、いつも。ですが、貴方のおかげで所長を呼びに行くことが出来ました。」
(あ、あの人、所長なんだ……。)
 先程見かけた屈強な職員が所長なのだと、沢崎直は思った。
 確かに、そう言われればそう見えなくもない。その職員の人は、貫録があったし、壮年だったし、何より強そうなオーラを纏っていた。経験も実力も十分そうだ。
「はい、依頼の薬草、確かに受け取りました。多めに採って来ていただいたので、報酬に少しボーナスをお付けしますね。」
 会話の間も優秀な職員のお姉さんは事務処理を進めてくれている。
 先程のトラブル以外はスムーズに、沢崎直の初仕事は完了した。
 沢崎直はようやく訪れた初仕事成功の瞬間に笑顔を浮かべた。
「ありがとうございます。」
 職員のお姉さんにもしっかりとお礼を言う。
 お姉さんも笑顔を浮かべてくれた。
「こちらの薬草の方も買い取らせていただきますね。」
 合わせてついでに採取してきた薬草の買い取りも受け付けてくれる。
 職員のお姉さんが薬草を確認し、提示してくれた金額はモブ女の初仕事にしては十分満足なモノだった。
「この薬草ですと、これくらいになりますけど。」
 特に値段交渉とかをしようとは思わない沢崎直。昔から、旅行先で値切ることは親友の亜佐美の方が得意で、亜佐美に任せきりだったので、そんなスキルは磨いていないため、言い値で買い取ってもらえれば十分だった。
「お願いします。」
「はい、かしこまりました。」
 そのまま買い取りも終わり、カウンターを後にしようとした沢崎直だったが、その前にお姉さんに呼び止められる。
「あっ、お待ちください。」
「はい?」
 何か他に用事でもあっただろうかと首を傾げる沢崎直。
 そんな沢崎直に職員のお姉さんは表情を引き締めて口を開いた。



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