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第二部
第六章 アルバート(inモブ女)、初めての大冒険!!!㉙『モブ女の対応』
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二十九
沢崎直の突然の行動に、周囲は呆気にとられていた。
好戦的だった空気が一瞬で霧散する。
ただ、カウンターにいる職員のお姉さんもついていけず、呆気にとられたままだ。
なので、沢崎直は更に続けた。
「依頼を終えたら、ここで報告すればいいんですよね?」
沢崎直に注意を引きつけたおかげで、辺りは静かになっていたので、沢崎直は声量を先程よりも落としてお姉さんに尋ねた。
お姉さんは、沢崎直の行動に理解が及ばないながらも、頷いてはくれる。
「はい。そうです。」
「じゃあ、お願いします。」
お姉さんの返事を受けて、沢崎直は薬草と冒険者登録証をお姉さんの前に並べる。
お姉さんは目の前に並んだ仕事に素直に反応し、事務手続きを始めてくれた。
「はい、了解しました。」
そのまま作業が進んでいきそうな雰囲気になっていたが、ただ一人この状況に異議を唱えたい人物が今度は周囲の注意を引きつけるために大声を上げた。
「ちょっと待てっ!」
それは、もちろん先程のクレーマーの男だ。
自分の順番を横取りされた状態の男は、怒り心頭で口角泡を飛ばしてカウンターへと向かってきた。
「俺が先だろっ!?何してんだ?」
当然と言えば当然の抗議に、沢崎直は出来るだけ落ちついた声音で、余裕があるように見えるような鷹揚な態度で微笑みを浮かべて答えた。
「いや、あのー?」
ちょっと何を言っているのか分からないんですけど?みたいな感じで、首を傾げて見せる沢崎直。
男が音を立ててブチ切れる。
だが、男が声を上げるよりも先に、余裕綽々の態度で口を挟んだ。
「先程から聞いていて思ったのですが、貴方のお話は、多分ですけど、こちらのお姉さんの権限では決められないことだと思いますよ。」
「は?」
沢崎直の言葉に、凄い表情で怒りを表現する男。
だが、それを取り合うことなく、職員のお姉さんに沢崎直は水を向けた。
「そうですよね?お姉さんに処理できる範囲のことだったら、すぐに対応できるはずです。でも、それ以上のことだったら、どれだけお姉さんに言われても無理ですよね?」
「はぁ。」
まだ沢崎直の会話の目的地が見えず、お姉さんは肯定とも否定ともいえない相槌を打った。
「うるせぇな、お前。ふざけんなよ。」
男が怒りに満ちた地を這うような低い声で沢崎直を威嚇する。
沢崎直は何でもないふりをして、更にお姉さん相手に続けた。
「だから、お姉さんにいくら頼んでも無理なんですよね?」
わざと効果的に聞こえるように、そこで言葉を切り、間を取る。
そして、沢崎直は決定的で何でもないことのように聞こえるように結論を口にした。
「そういうことは、もっと偉い人に頼まないと!」
(お願い、お姉さん。これで、通じて。)
沢崎直は視線に言いたいことを全て乗せて、お姉さんを見つめた。
お姉さんは沢崎直の視線を受けて、微笑みを浮かべてくれた。
「はい!上の者を呼んできます!」
「ということだそうです。」
こうして二人の心は通じ、その場は丸く収まったのであった。
沢崎直の突然の行動に、周囲は呆気にとられていた。
好戦的だった空気が一瞬で霧散する。
ただ、カウンターにいる職員のお姉さんもついていけず、呆気にとられたままだ。
なので、沢崎直は更に続けた。
「依頼を終えたら、ここで報告すればいいんですよね?」
沢崎直に注意を引きつけたおかげで、辺りは静かになっていたので、沢崎直は声量を先程よりも落としてお姉さんに尋ねた。
お姉さんは、沢崎直の行動に理解が及ばないながらも、頷いてはくれる。
「はい。そうです。」
「じゃあ、お願いします。」
お姉さんの返事を受けて、沢崎直は薬草と冒険者登録証をお姉さんの前に並べる。
お姉さんは目の前に並んだ仕事に素直に反応し、事務手続きを始めてくれた。
「はい、了解しました。」
そのまま作業が進んでいきそうな雰囲気になっていたが、ただ一人この状況に異議を唱えたい人物が今度は周囲の注意を引きつけるために大声を上げた。
「ちょっと待てっ!」
それは、もちろん先程のクレーマーの男だ。
自分の順番を横取りされた状態の男は、怒り心頭で口角泡を飛ばしてカウンターへと向かってきた。
「俺が先だろっ!?何してんだ?」
当然と言えば当然の抗議に、沢崎直は出来るだけ落ちついた声音で、余裕があるように見えるような鷹揚な態度で微笑みを浮かべて答えた。
「いや、あのー?」
ちょっと何を言っているのか分からないんですけど?みたいな感じで、首を傾げて見せる沢崎直。
男が音を立ててブチ切れる。
だが、男が声を上げるよりも先に、余裕綽々の態度で口を挟んだ。
「先程から聞いていて思ったのですが、貴方のお話は、多分ですけど、こちらのお姉さんの権限では決められないことだと思いますよ。」
「は?」
沢崎直の言葉に、凄い表情で怒りを表現する男。
だが、それを取り合うことなく、職員のお姉さんに沢崎直は水を向けた。
「そうですよね?お姉さんに処理できる範囲のことだったら、すぐに対応できるはずです。でも、それ以上のことだったら、どれだけお姉さんに言われても無理ですよね?」
「はぁ。」
まだ沢崎直の会話の目的地が見えず、お姉さんは肯定とも否定ともいえない相槌を打った。
「うるせぇな、お前。ふざけんなよ。」
男が怒りに満ちた地を這うような低い声で沢崎直を威嚇する。
沢崎直は何でもないふりをして、更にお姉さん相手に続けた。
「だから、お姉さんにいくら頼んでも無理なんですよね?」
わざと効果的に聞こえるように、そこで言葉を切り、間を取る。
そして、沢崎直は決定的で何でもないことのように聞こえるように結論を口にした。
「そういうことは、もっと偉い人に頼まないと!」
(お願い、お姉さん。これで、通じて。)
沢崎直は視線に言いたいことを全て乗せて、お姉さんを見つめた。
お姉さんは沢崎直の視線を受けて、微笑みを浮かべてくれた。
「はい!上の者を呼んできます!」
「ということだそうです。」
こうして二人の心は通じ、その場は丸く収まったのであった。
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