転生したらついてましたァァァァァ!!!

夢追子

文字の大きさ
上 下
175 / 187
第二部

第六章 アルバート(inモブ女)、初めての大冒険!!!㉙『モブ女の対応』

しおりを挟む
      二十九

 沢崎直の突然の行動に、周囲は呆気にとられていた。
 好戦的だった空気が一瞬で霧散する。
 ただ、カウンターにいる職員のお姉さんもついていけず、呆気にとられたままだ。
 なので、沢崎直は更に続けた。
「依頼を終えたら、ここで報告すればいいんですよね?」
 沢崎直に注意を引きつけたおかげで、辺りは静かになっていたので、沢崎直は声量を先程よりも落としてお姉さんに尋ねた。
 お姉さんは、沢崎直の行動に理解が及ばないながらも、頷いてはくれる。
「はい。そうです。」
「じゃあ、お願いします。」
 お姉さんの返事を受けて、沢崎直は薬草と冒険者登録証をお姉さんの前に並べる。
 お姉さんは目の前に並んだ仕事に素直に反応し、事務手続きを始めてくれた。
「はい、了解しました。」
 そのまま作業が進んでいきそうな雰囲気になっていたが、ただ一人この状況に異議を唱えたい人物が今度は周囲の注意を引きつけるために大声を上げた。
「ちょっと待てっ!」
 それは、もちろん先程のクレーマーの男だ。
 自分の順番を横取りされた状態の男は、怒り心頭で口角泡を飛ばしてカウンターへと向かってきた。
「俺が先だろっ!?何してんだ?」
 当然と言えば当然の抗議に、沢崎直は出来るだけ落ちついた声音で、余裕があるように見えるような鷹揚な態度で微笑みを浮かべて答えた。
「いや、あのー?」
 ちょっと何を言っているのか分からないんですけど?みたいな感じで、首を傾げて見せる沢崎直。
 男が音を立ててブチ切れる。
 だが、男が声を上げるよりも先に、余裕綽々の態度で口を挟んだ。
「先程から聞いていて思ったのですが、貴方のお話は、多分ですけど、こちらのお姉さんの権限では決められないことだと思いますよ。」
「は?」
 沢崎直の言葉に、凄い表情で怒りを表現する男。
 だが、それを取り合うことなく、職員のお姉さんに沢崎直は水を向けた。
「そうですよね?お姉さんに処理できる範囲のことだったら、すぐに対応できるはずです。でも、それ以上のことだったら、どれだけお姉さんに言われても無理ですよね?」
「はぁ。」
 まだ沢崎直の会話の目的地が見えず、お姉さんは肯定とも否定ともいえない相槌を打った。
「うるせぇな、お前。ふざけんなよ。」
 男が怒りに満ちた地を這うような低い声で沢崎直を威嚇する。
 沢崎直は何でもないふりをして、更にお姉さん相手に続けた。
「だから、お姉さんにいくら頼んでも無理なんですよね?」
 わざと効果的に聞こえるように、そこで言葉を切り、間を取る。
 そして、沢崎直は決定的で何でもないことのように聞こえるように結論を口にした。
「そういうことは、もっと偉い人に頼まないと!」
(お願い、お姉さん。これで、通じて。)
 沢崎直は視線に言いたいことを全て乗せて、お姉さんを見つめた。
 お姉さんは沢崎直の視線を受けて、微笑みを浮かべてくれた。
「はい!上の者を呼んできます!」
「ということだそうです。」
 こうして二人の心は通じ、その場は丸く収まったのであった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~

ファンタジー
 高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。 見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。 確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!? ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・ 気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。 誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!? 女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話 保険でR15 タイトル変更の可能性あり

転生したアラサーオタク女子はチートなPCと通販で異世界でもオタ活します!

ねこ専
ファンタジー
【序盤は説明が多いので進みがゆっくりです】 ※プロローグを読むのがめんどくさい人は飛ばしてもらっても大丈夫です。 テンプレ展開でチートをもらって異世界に転生したアラサーオタクOLのリリー。 現代日本と全然違う環境の異世界だからオタ活なんて出来ないと思いきや、神様にもらったチートな「異世界PC」のおかげでオタ活し放題! 日本の商品は通販で買えるし、インターネットでアニメも漫画も見られる…! 彼女は異世界で金髪青目の美少女に生まれ変わり、最高なオタ活を満喫するのであった。 そんなリリーの布教?のかいあって、異世界には日本の商品とオタク文化が広まっていくとかいかないとか…。 ※初投稿なので優しい目で見て下さい。 ※序盤は説明多めなのでオタ活は後からです。 ※誤字脱字の報告大歓迎です。 まったり更新していけたらと思います!

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

異世界に転生をしてバリアとアイテム生成スキルで幸せに生活をしたい。

みみっく
ファンタジー
女神様の手違いで通勤途中に気を失い、気が付くと見知らぬ場所だった。目の前には知らない少女が居て、彼女が言うには・・・手違いで俺は死んでしまったらしい。手違いなので新たな世界に転生をさせてくれると言うがモンスターが居る世界だと言うので、バリアとアイテム生成スキルと無限収納を付けてもらえる事になった。幸せに暮らすために行動をしてみる・・・

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

処理中です...