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第二部
第六章 アルバート(inモブ女)、初めての大冒険!!!㉘『クレーマーの因縁』
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二十八
ヴィルと沢崎直、二人の主従は小声でやり取りをしていた。
だが、地獄耳というのはどこの世界にもいるようで、前方のクレーマーが二人の会話に反応した。
「おい!何か文句あんのか?」
突然、自分にクレーマーの矛先が向き、沢崎直は驚愕と恐怖で飛び上がる。
そんな怯えた沢崎直の態度に、クレーマーは嘲笑を響かせた。
「何だ?ひ弱な兄ちゃん。女みたいな顔して、どうした?」
確かに、眼の前の人物のごつごつとした強面に比べれば、アルバート氏の顔は中性的だし、ひ弱に見えるだろう。
何ともクラシカルなスタイルの挑発に、ちょっとだけ沢崎直の心が落ち着く。
(……うん。何かウエスタンな映画とかで、酒場のシーンとかにありがちなセリフ。)
あまりにもありがちな内容のセリフは、沢崎直の心に何の感慨も残さなかった。だいたいひ弱も自分で自覚しているし、頑丈を絵にかいたような目の前の人物に比べたら、そう思われても仕方ないので腹は立たない。何より、沢崎直の価値基準からしたら、眼の前の人物が誇っている頑丈さと男性的で粗野な顔立ちは、羨ましいモノではなかった。
だから、沢崎直は挑発に乗らずに済んだし、無闇に怯えずに済んだ。
だが、人の価値基準とは人それぞれである。
沢崎直にとっては、あっ、そうですかというくらいの内容だったが、主人への絶対的な忠誠を誓う生真面目な従者は、気づいたら剣の鞘に手を添えて眼光鋭く相手を睨みつけていた。あとは、主人のゴーサイン待ちである。
(えっ!?ちょっと!?ヴィル様!っ?)
主人を愚弄され、従者のヴィルは大変怒っておられるようだった。
今度は、そのことに慌てる沢崎直。
「あっ、あの!」
とりあえずヴィルと男の間に割って入る。
割って入ったはいいが、完全に無策であるため、今その場で何かを考えださなくてはならず、沢崎直は瞬時に脳をフル回転させた。
(な、何とか、平和的に!)
「何だ?てめぇ…。」
割って入った沢崎直を無視して、男はヴィルを標的と定める。
多分、どう見ても沢崎直よりもヴィルの方の実力が上だと感じたようだ。鋭いヴィルの眼光を受けて、臨戦態勢に入ろうとする。
突如発生した一触即発の空気に、待ちあぐねて退屈していた血の気の多い連中が、一斉に活気に満ちる。彼らにしてみれば、ギルド内で勃発した面白い余興に過ぎないのかもしれない。それに何より、先程からカウンターを占拠して一向にどかないクレーマーの男にみな一様にイライラしていたのだろう。誰かがその男を成敗して排除してくれるのは応援こそすれ、反対する気にはならないようだった。まさに渡りに船である。
(……どうしよう?このままだと、ヴィルが……。いや、でも待てよ。ヴィル様が負けるはずないし、その尊きお姿を特等席で見物して……。だめよ!直!しっかりして!)
色々な葛藤の後、沢崎直はやはり平和的な解決の必要性を感じた。
カウンターのお姉さんを見ると、やれやれといった様子だ。
まあ、荒くれ者が集いがちなので、こんなことは日常茶飯事の職場なのかもしれない。
「あ、あの!」
沢崎直はそのままバトルが始まりそうな空気を察知し、とりあえず大声を出した。
少しでも自分に注意を向けさせるべく大声で続ける。もちろん、特に何か解決策があるわけではないが、このままこの空気に流されては良くないので、行き当たりばったりな状況でも何か言わなくてはならない。
沢崎直は覚悟を決めた。
「お姉さん!」
沢崎直ではなくヴィルを警戒するクレーマーの男の横をすり抜け、カウンターを陣取る。
突然、声を上げながらやって来た沢崎直に、お姉さんは驚いていた。
それでも、お姉さんに向けて声を上げて語りかける沢崎直。
「依頼が完了しました!確認してください!」
沢崎直は大きな声で分かりやすく伝えると、カウンターの上に採って来た薬草を主張するようにバンと軽く音を立てて乗せてみせたのだった。
ヴィルと沢崎直、二人の主従は小声でやり取りをしていた。
だが、地獄耳というのはどこの世界にもいるようで、前方のクレーマーが二人の会話に反応した。
「おい!何か文句あんのか?」
突然、自分にクレーマーの矛先が向き、沢崎直は驚愕と恐怖で飛び上がる。
そんな怯えた沢崎直の態度に、クレーマーは嘲笑を響かせた。
「何だ?ひ弱な兄ちゃん。女みたいな顔して、どうした?」
確かに、眼の前の人物のごつごつとした強面に比べれば、アルバート氏の顔は中性的だし、ひ弱に見えるだろう。
何ともクラシカルなスタイルの挑発に、ちょっとだけ沢崎直の心が落ち着く。
(……うん。何かウエスタンな映画とかで、酒場のシーンとかにありがちなセリフ。)
あまりにもありがちな内容のセリフは、沢崎直の心に何の感慨も残さなかった。だいたいひ弱も自分で自覚しているし、頑丈を絵にかいたような目の前の人物に比べたら、そう思われても仕方ないので腹は立たない。何より、沢崎直の価値基準からしたら、眼の前の人物が誇っている頑丈さと男性的で粗野な顔立ちは、羨ましいモノではなかった。
だから、沢崎直は挑発に乗らずに済んだし、無闇に怯えずに済んだ。
だが、人の価値基準とは人それぞれである。
沢崎直にとっては、あっ、そうですかというくらいの内容だったが、主人への絶対的な忠誠を誓う生真面目な従者は、気づいたら剣の鞘に手を添えて眼光鋭く相手を睨みつけていた。あとは、主人のゴーサイン待ちである。
(えっ!?ちょっと!?ヴィル様!っ?)
主人を愚弄され、従者のヴィルは大変怒っておられるようだった。
今度は、そのことに慌てる沢崎直。
「あっ、あの!」
とりあえずヴィルと男の間に割って入る。
割って入ったはいいが、完全に無策であるため、今その場で何かを考えださなくてはならず、沢崎直は瞬時に脳をフル回転させた。
(な、何とか、平和的に!)
「何だ?てめぇ…。」
割って入った沢崎直を無視して、男はヴィルを標的と定める。
多分、どう見ても沢崎直よりもヴィルの方の実力が上だと感じたようだ。鋭いヴィルの眼光を受けて、臨戦態勢に入ろうとする。
突如発生した一触即発の空気に、待ちあぐねて退屈していた血の気の多い連中が、一斉に活気に満ちる。彼らにしてみれば、ギルド内で勃発した面白い余興に過ぎないのかもしれない。それに何より、先程からカウンターを占拠して一向にどかないクレーマーの男にみな一様にイライラしていたのだろう。誰かがその男を成敗して排除してくれるのは応援こそすれ、反対する気にはならないようだった。まさに渡りに船である。
(……どうしよう?このままだと、ヴィルが……。いや、でも待てよ。ヴィル様が負けるはずないし、その尊きお姿を特等席で見物して……。だめよ!直!しっかりして!)
色々な葛藤の後、沢崎直はやはり平和的な解決の必要性を感じた。
カウンターのお姉さんを見ると、やれやれといった様子だ。
まあ、荒くれ者が集いがちなので、こんなことは日常茶飯事の職場なのかもしれない。
「あ、あの!」
沢崎直はそのままバトルが始まりそうな空気を察知し、とりあえず大声を出した。
少しでも自分に注意を向けさせるべく大声で続ける。もちろん、特に何か解決策があるわけではないが、このままこの空気に流されては良くないので、行き当たりばったりな状況でも何か言わなくてはならない。
沢崎直は覚悟を決めた。
「お姉さん!」
沢崎直ではなくヴィルを警戒するクレーマーの男の横をすり抜け、カウンターを陣取る。
突然、声を上げながらやって来た沢崎直に、お姉さんは驚いていた。
それでも、お姉さんに向けて声を上げて語りかける沢崎直。
「依頼が完了しました!確認してください!」
沢崎直は大きな声で分かりやすく伝えると、カウンターの上に採って来た薬草を主張するようにバンと軽く音を立てて乗せてみせたのだった。
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