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第二部

第六章 アルバート(inモブ女)、初めての大冒険!!!㉕『発見』

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      二十五

 ジョナサンたちに荷物や今日の収穫物を積み、ようやく帰路へと着こうとする一行。
 だが、ジョナサンに乗ろうとしたところで、沢崎直は視界に気になるものを発見した。
 思わずジョナサンから離れ、近寄っていく。
 馬に乗ろうとしていた主人が、急に別の行動をとったので従者のヴィルも、それに続いた。
「どうしました?アルバート様。」
「あっ、はい。あの。」
 ヴィルに尋ねられ、沢崎直は気になるものを観察しながら行動の理由を説明し始める。
「あれなんですけど……。気になって。」
 何か分からないので少し距離を取った場所で立ち止まり、遠巻きにして気になるものを確認する沢崎直。
 後ろをついて来てくれるヴィルにも分かりやすいように、その気になるものを指さした。
「あれは……。」
 沢崎直が目の端に映って気になったのは、光る石のようなモノだった。
 それは透明度の高い赤で出来た結晶のようなもので、太陽の光を受けてキラキラと輝いていた。
 沢崎直を追い越して、ヴィルがそのモノに近づき、拾い上げる。
 ヴィルは目線の高さまでそれを掲げて、確認した。
「……これは、魔石ですね。」
「魔石?」
 魔石と呼ばれた石は、太陽の光を透過させ、赤い光を放っていた。
 ヴィルが拾い上げたことで、沢崎直もその石の近くまで行き、ヴィルと一緒に確認する。
「モンスターを倒すと、稀に落とすことがある物です。」
「……モンスターですか?」
「はい。」
 ヴィルの説明に首を傾げる沢崎直。
 こんなのどかな場所に果たしてモンスターなど出没するのだろうか?
 その上、倒されなくては出現しないとなると、誰かが倒して落としていったということになるのか?
 ヴィルも魔石がこの場所に落ちていることには疑問を持ったようで、魔石を観察しながら考え事をしていた。
「今はモンスターの気配は感じませんから……、突発的なものでしょうか?……それとも、誰かがここに魔石を落としていったのか……?」
 魔石の落とし物に関する謎は、現時点で情報が少なすぎて解けるものではない。名探偵ほどの推理力や観察力ならば、或いは沢崎直たちとは違う手掛かりに気付いて事件解決となるかも知れないが、ここに名探偵はいない。
 考察は結局答えを出せないままで切り上げられる。
「とりあえず落ちていたので拾って帰りましょう。魔石も、ギルドで買い取ってもらえますし。」
 ヴィルはそう言うと、第一発見者である沢崎直に魔石を差し出してくれた。
 差し出された魔石とヴィルの顔を交互に見比べる沢崎直。
「……いいんでしょうか?」
「気になるのでしたら、モンスターのことも含めてギルドで聞いてみましょう。」
 そういうことなら、落し物として預かるつもりで沢崎直は魔石をヴィルから受け取った。
「はい。」
 今度こそ、沢崎直はジョナサンに乗るために歩き出す。
 さっきの魔石は途中で落とすことのないように大切にポケットに仕舞い込むのだった。

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