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第二部
第六章 アルバート(inモブ女)、初めての大冒険!!!㉔『ヒーロー登場』
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二十四
拳に纏った火を素早く消し、ジョナサンたちの元に急ぐ。
ジョナサンは沢崎直の到着を嬉しそうな嘶きを上げて歓迎してくれた。
ヒヒーン
「ジョナサン!!」
沢崎直もジョナサンに笑顔で近づくと、ジョナサンの身体を撫でながら無事を確認した。
「大丈夫?怪我はない?」
幸いにも、ジョナサンたちに怪我はなかった。
まだ興奮冷めやらぬ様子のジョナサンは目を潤ませており、そんなジョナサンの背を撫でて宥めながら、沢崎直は話しかける。
「怖かったよね?変なの飛んでたもんね?よーしよーし。」
先程、じゅっとなってからはもう羽虫のようなものが向かってくる気配はない。
どうやら非力な沢崎直にも敵は追い払えたらしい。
突然のピンチは何とか凌げたようだ。
どう考えても運のみで乗り切った事態だったが、それでもジョナサンたちも自分も無事だったので、沢崎直にとっては上出来だった。
「アルバート様!」
ヴィルの馬の背を撫で始めた沢崎直の元にヴィルがやって来る。
ヴィルもただならぬ馬の嘶きを聴いてやって来たようで、腰の剣に手を添えていた。
「何かありましたか?」
緊急事態であることを察し、端的に尋ねてくるヴィル。
沢崎直は今しがた起きたことの一部始終をヴィルに説明した。
「ジョナサンたちに虫みたいなのがいじわるしたんです。でも、頑張って追い払いました。」
沢崎直の説明に同意するように、ジョナサンたちもヒヒーンと啼いてくれる。
ヴィルは沢崎直たちを背に庇うようなポジション取りをして、周囲の警戒を強める。
「どのようなモノでしたか?お怪我は?」
腰に下げた剣に手を添えながら、背中でヴィルが尋ねてくる。
沢崎直は頼もしい推しの背中にキュンキュンしながら、心に安堵が広がっていくのを感じていた。
(……ヴィル様が来てくれたから、もう大丈夫。)
「よく分からないヤツでした。ブンブンしてたので、えいっと突きを出したら、じゅっていって、そこからは見てません。」
何とも言えない感覚的な説明で事態を説明する沢崎直。オノマトペを駆使した独自のワードセンスである。
しばらく周囲の気配を探っていたヴィルだが、異変は感じられなかったようでようやく剣から手を離す。
その間に、ジョナサンたちは落ち着きを取り戻し、沢崎直は頼りになる実力確かな推しの魅力をそんな場合ではないのに十分に堪能していた。
「すみません。俺がお傍を離れたせいで、怖い思いをさせてしまいましたか?」
ヴィルが申し訳なさそうに振り返りながら頭を下げてくる。
沢崎直は責任感の強い従者の言葉に、申し訳なさを感じて首を振った。
「だ、大丈夫です。ヴィルが来てくれるって信じてましたから。」
「アルバート様……。」
沢崎直は絶大なる信頼を推しに寄せていたので、心からの気持ちでそう告げた。いや絶大なる信頼だけではない。盲目なほどの愛もついでに寄せているので、ヴィル様がたとえ間に合わずともそれを恨むことはないという、そんな気持ちも含ませてである。
そんな心からの沢崎直の言葉に、ヴィルは言葉も出ないほど感銘を受けていた。
ヴィルの熱い心のこもった視線を真正面から受け止めて、沢崎直は少し照れながらくねくねしてしまう。
ヴィルはしばらくの時間を要した後、感慨深い気持ちを吐露するように口を開いた。
「……貴方にこれからも精一杯お仕えします。」
端的な言葉に万感の思いを込めて、ヴィルは宣言してくれる。
沢崎直はくねくねしながらも、ちょっとだけはにかんで笑った。
「はい。」
拳に纏った火を素早く消し、ジョナサンたちの元に急ぐ。
ジョナサンは沢崎直の到着を嬉しそうな嘶きを上げて歓迎してくれた。
ヒヒーン
「ジョナサン!!」
沢崎直もジョナサンに笑顔で近づくと、ジョナサンの身体を撫でながら無事を確認した。
「大丈夫?怪我はない?」
幸いにも、ジョナサンたちに怪我はなかった。
まだ興奮冷めやらぬ様子のジョナサンは目を潤ませており、そんなジョナサンの背を撫でて宥めながら、沢崎直は話しかける。
「怖かったよね?変なの飛んでたもんね?よーしよーし。」
先程、じゅっとなってからはもう羽虫のようなものが向かってくる気配はない。
どうやら非力な沢崎直にも敵は追い払えたらしい。
突然のピンチは何とか凌げたようだ。
どう考えても運のみで乗り切った事態だったが、それでもジョナサンたちも自分も無事だったので、沢崎直にとっては上出来だった。
「アルバート様!」
ヴィルの馬の背を撫で始めた沢崎直の元にヴィルがやって来る。
ヴィルもただならぬ馬の嘶きを聴いてやって来たようで、腰の剣に手を添えていた。
「何かありましたか?」
緊急事態であることを察し、端的に尋ねてくるヴィル。
沢崎直は今しがた起きたことの一部始終をヴィルに説明した。
「ジョナサンたちに虫みたいなのがいじわるしたんです。でも、頑張って追い払いました。」
沢崎直の説明に同意するように、ジョナサンたちもヒヒーンと啼いてくれる。
ヴィルは沢崎直たちを背に庇うようなポジション取りをして、周囲の警戒を強める。
「どのようなモノでしたか?お怪我は?」
腰に下げた剣に手を添えながら、背中でヴィルが尋ねてくる。
沢崎直は頼もしい推しの背中にキュンキュンしながら、心に安堵が広がっていくのを感じていた。
(……ヴィル様が来てくれたから、もう大丈夫。)
「よく分からないヤツでした。ブンブンしてたので、えいっと突きを出したら、じゅっていって、そこからは見てません。」
何とも言えない感覚的な説明で事態を説明する沢崎直。オノマトペを駆使した独自のワードセンスである。
しばらく周囲の気配を探っていたヴィルだが、異変は感じられなかったようでようやく剣から手を離す。
その間に、ジョナサンたちは落ち着きを取り戻し、沢崎直は頼りになる実力確かな推しの魅力をそんな場合ではないのに十分に堪能していた。
「すみません。俺がお傍を離れたせいで、怖い思いをさせてしまいましたか?」
ヴィルが申し訳なさそうに振り返りながら頭を下げてくる。
沢崎直は責任感の強い従者の言葉に、申し訳なさを感じて首を振った。
「だ、大丈夫です。ヴィルが来てくれるって信じてましたから。」
「アルバート様……。」
沢崎直は絶大なる信頼を推しに寄せていたので、心からの気持ちでそう告げた。いや絶大なる信頼だけではない。盲目なほどの愛もついでに寄せているので、ヴィル様がたとえ間に合わずともそれを恨むことはないという、そんな気持ちも含ませてである。
そんな心からの沢崎直の言葉に、ヴィルは言葉も出ないほど感銘を受けていた。
ヴィルの熱い心のこもった視線を真正面から受け止めて、沢崎直は少し照れながらくねくねしてしまう。
ヴィルはしばらくの時間を要した後、感慨深い気持ちを吐露するように口を開いた。
「……貴方にこれからも精一杯お仕えします。」
端的な言葉に万感の思いを込めて、ヴィルは宣言してくれる。
沢崎直はくねくねしながらも、ちょっとだけはにかんで笑った。
「はい。」
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