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第二部
第六章 アルバート(inモブ女)、初めての大冒険!!!⑲『薬草探索、開始』
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十九
「よし!探すぞ!おーっ!」
掛け声を上げて、沢崎直は一面の緑に視線を向けた。
ここまで乗せてくれたジョナサンには近くの池で感謝の気持ちで水を飲ませた後、手綱を木に括りつけて休んでもらっている。
ここからは沢崎直の仕事だ。
依頼書にあった薬草を必要数採取して、冒険者ギルドに届けたらそこで依頼完了である。
まずは、依頼書にあった薬草をしっかりと確認し、間違えないようにこの広大な緑の野から探し出さなくてはいけない。
初めての依頼を失敗しては冒険者としての先行きが不安だと思った沢崎直は、もちろん昨夜帰ってから事前に別邸の蔵書を漁り、件の薬草について下調べをしっかりしていた。何なら本だけではなく、ヴィルやリヒターさんにメイドさんたちにもちゃんと話を聞いた。
なので、依頼にあった薬草についての事前準備はばっちりだと思う。
葉の形、色、大きさ、匂い。
元の世界なら植物のことならスマホのカメラを翳すだけでよかったが、この異世界ではそんなわけにはいかない。自分の感覚と知識と想像力の全てを駆使して、探し物をしなくてはならない。本で読み、人づてに聞いた情報から、沢崎直は薬草探しを始めるのだった。
とりあえずあてどなく、足元の草を凝視して、聞いていた特徴に当てはまりそうな草を探してみる。
「えーっと………。」
もちろん沢崎直と一緒にヴィルも薬草探しを手伝ってくれる。
昨夜話を聞いたところによると、ヴィルは実物を知っていたので、沢崎直よりも確実に薬草を探せそうだ。まあそうなったら、ヴィルに探してもらった薬草を参考にして、沢崎直も探せばいいだけだ。
一人で何でもこなせるほど器用に元からできていない沢崎直は、ヴィルの手助けを有り難く受け取ることにしていた。
(必要なのは、自分も頑張ることと、感謝だよね。)
人に助けを求めることは悪でも恥でもない。一人で出来ることには誰にも限界がある。だからこそ、人は助け合い支え合うのだ。大切なのは、驕らず謙虚な姿勢と他人に感謝する気持ちである。
そう結論付けて、沢崎直は初めての依頼に挑んでいた。
しばらく緑の中で黙々と探し物を続けていた主従二人だが、ヴィルが小さな声を上げた。
「アルバート様。」
そう言って顔を上げたヴィルの手には、一つの草が握られていた。
「ヴィル。」
思わず駆け寄る沢崎直。
ヴィルはたった今地面から引っこ抜いたばかりの草を沢崎直が見やすいように掲げた。
「こちらがお探しの薬草だと思います。」
「これが……。」
ヴィルが早速見つけてくれた薬草の実物をしっかりと五感を使って観察し、沢崎直はその薬草の存在を身体に叩き込む。
「分かりました!私も頑張ります!」
全てをヴィルに任せるわけにはいかない。これは、沢崎直が引き受けた依頼なのだから。
そう決意を新たにすると、沢崎直はもう一度無数の緑の草に向かい合った。
想像上の産物であった先程よりも、実存在として認識した今なら、もう少し上手に探せるはずだ。そう自分に言い聞かせて、視線を凝らす。
幸い、モブ女だった時と違い、アルバート氏の視力は遠くまで見渡せるほど良く、メガネがなくては見えなかったあの時とは違う良好な視界であった。
(たぶん、こういう地味な作業は得意なはず……。)
沢崎直には特に根拠はないが、そんな自信が確かにあった。
「よし!探すぞ!おーっ!」
掛け声を上げて、沢崎直は一面の緑に視線を向けた。
ここまで乗せてくれたジョナサンには近くの池で感謝の気持ちで水を飲ませた後、手綱を木に括りつけて休んでもらっている。
ここからは沢崎直の仕事だ。
依頼書にあった薬草を必要数採取して、冒険者ギルドに届けたらそこで依頼完了である。
まずは、依頼書にあった薬草をしっかりと確認し、間違えないようにこの広大な緑の野から探し出さなくてはいけない。
初めての依頼を失敗しては冒険者としての先行きが不安だと思った沢崎直は、もちろん昨夜帰ってから事前に別邸の蔵書を漁り、件の薬草について下調べをしっかりしていた。何なら本だけではなく、ヴィルやリヒターさんにメイドさんたちにもちゃんと話を聞いた。
なので、依頼にあった薬草についての事前準備はばっちりだと思う。
葉の形、色、大きさ、匂い。
元の世界なら植物のことならスマホのカメラを翳すだけでよかったが、この異世界ではそんなわけにはいかない。自分の感覚と知識と想像力の全てを駆使して、探し物をしなくてはならない。本で読み、人づてに聞いた情報から、沢崎直は薬草探しを始めるのだった。
とりあえずあてどなく、足元の草を凝視して、聞いていた特徴に当てはまりそうな草を探してみる。
「えーっと………。」
もちろん沢崎直と一緒にヴィルも薬草探しを手伝ってくれる。
昨夜話を聞いたところによると、ヴィルは実物を知っていたので、沢崎直よりも確実に薬草を探せそうだ。まあそうなったら、ヴィルに探してもらった薬草を参考にして、沢崎直も探せばいいだけだ。
一人で何でもこなせるほど器用に元からできていない沢崎直は、ヴィルの手助けを有り難く受け取ることにしていた。
(必要なのは、自分も頑張ることと、感謝だよね。)
人に助けを求めることは悪でも恥でもない。一人で出来ることには誰にも限界がある。だからこそ、人は助け合い支え合うのだ。大切なのは、驕らず謙虚な姿勢と他人に感謝する気持ちである。
そう結論付けて、沢崎直は初めての依頼に挑んでいた。
しばらく緑の中で黙々と探し物を続けていた主従二人だが、ヴィルが小さな声を上げた。
「アルバート様。」
そう言って顔を上げたヴィルの手には、一つの草が握られていた。
「ヴィル。」
思わず駆け寄る沢崎直。
ヴィルはたった今地面から引っこ抜いたばかりの草を沢崎直が見やすいように掲げた。
「こちらがお探しの薬草だと思います。」
「これが……。」
ヴィルが早速見つけてくれた薬草の実物をしっかりと五感を使って観察し、沢崎直はその薬草の存在を身体に叩き込む。
「分かりました!私も頑張ります!」
全てをヴィルに任せるわけにはいかない。これは、沢崎直が引き受けた依頼なのだから。
そう決意を新たにすると、沢崎直はもう一度無数の緑の草に向かい合った。
想像上の産物であった先程よりも、実存在として認識した今なら、もう少し上手に探せるはずだ。そう自分に言い聞かせて、視線を凝らす。
幸い、モブ女だった時と違い、アルバート氏の視力は遠くまで見渡せるほど良く、メガネがなくては見えなかったあの時とは違う良好な視界であった。
(たぶん、こういう地味な作業は得意なはず……。)
沢崎直には特に根拠はないが、そんな自信が確かにあった。
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