転生したらついてましたァァァァァ!!!

夢追子

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第二部

第六章 アルバート(inモブ女)、初めての大冒険!!!⑰『新しい一歩』

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      十七

 朝起きて窓の外を眺める。
 窓の外に広がっていたのは雲一つない青空。その青さはまるで新しい一歩を祝福しているようで、沢崎直は志を新たにいそいそと朝の支度を始めるのだった。
 昨日までの引きこもりのニート状態だった沢崎直とは違う。
 今日からは新しい沢崎直になるのだ。
 冒険者として一歩を踏み出すのだ。
 どれだけ残念イケメン(inモブ女)だったとしても、引きこもりのニート状態とへっぽこビギナー冒険者では天と地ほども違う。何より無職ではないのだ。
 沢崎直は背伸びをして気合を入れ直す。
 
 コンコン

 ヴィルがいつもの時間に朝の挨拶にやって来る。
 その頃には沢崎直は今日の支度を完了していた。
「はい。」
 元気よく返事をして、勤勉な従者を出迎える。
 従者のヴィルは、今日という日を前にしてやる気が漲っている様子の主人にいつもよりも柔らかい微笑みで挨拶をしてくれた。
「おはようございます、アルバート様。」
「はい、おはようございます。ヴィル。」
「本日の予定はどういたしますか?」
 ヴィルは柔らかく微笑んだまま尋ねてくれる。
 だから、沢崎直は胸を張って答えた。
「依頼の薬草採取に出かけます!頑張ります!」
「はい。お供いたします。」
 微笑んで頷くと、ヴィルは退室しようと踵を返す。
 だが、扉の直前で立ち止まると振り返った。
「アルバート様。」
 ヴィルが何かを思いついたようで、扉の前から呼びかけてくる。
 沢崎直は少しでも長く推しが室内にとどまってくれる状況はとてもウェルカムなので、気合いっぱいで返事をした。
「はい、どうしました?ヴィル。」
「せっかくですので、馬車ではなく馬で採取場所まで行きませんか?」
「へ?」
 ヴィルの突然の申し出に、沢崎直は間抜けな表情で口を開けたまま、変に高い声を上げた。
 ヴィルはそんな主人の反応に微笑んだまま続ける。
「気候もいいですし、風を切って馬に乗っていくのも悪くないと思いますよ。この屋敷からもさほど離れた場所ではないですし。どうされますか?アルバート様。」
「じょ、ジョナサンと、ですか?」
 及び腰になりながら、凝り固まった笑顔で弱々しく尋ねる沢崎直。せっかく朝一番で入った気合いが急速に抜けていっているようだ。
 だが、ヴィルはそんな主人を勇気づけるように力強く頷いた。
「はい。アルバート様の乗馬技術ならば、近くに馬で出かけても十分ですよ。この数週間で、しっかりと上達されましたので。」
 麗しい笑顔で、沢崎直を褒めてくれるヴィル。
 ここまで言われて出来ないとは沢崎直には言えない。いや、推しに褒められ、朝から勇気づけられ、出来ないなどと泣き言を言うなど、そんな畏れ多いことは出来るはずもない。
 沢崎直は尻ごみをしたままではあったが、ヴィルの言葉に小さい声で頷いた。
「は、はい。頑張ります。」
 えへへと誤魔化すように笑ってみたが、自信はかけらもなかった。
 それでも、今日は馬で出かけることに決定した。
 これが、沢崎直が冒険者として新しく踏み出す第一日目であった。
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