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第二部
第六章 アルバート(inモブ女)、初めての大冒険!!!⑫『冒険者アルバート、誕生』
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十二
受付のお姉さんからの説明も終わり、初期登録は完了し、沢崎直は無事に冒険者になることが出来た。
「ヴィル!」
喜びと共に、今貰ったばかりの冒険者登録証をヴィルに見せる。
ヴィルは沢崎直と一緒に真新しい登録証に喜んでくれた。
「よかったですね、アルバート様。」
ギルドの受付の前のスペースの邪魔にならないところに移動して、二人の主従は登録証を前にしてはしゃいでいる。特に沢崎直は子供のように無邪気な笑顔で登録証を掲げて喜んでいた。
そんな二人に構うことなく、世慣れた冒険者の先輩たちは依頼を受けたり、完了した依頼の報告のために行き交っていく。二人の姿を気に留めるものなどいなかった。
引きこもりのニートからの脱却の第一歩を踏み出した沢崎直は、真新しい登録証をしばらく堪能した後、ようやくもう一歩小さく踏み出すことにした。
登録証を作っただけではまだ目標の半分といったところだ。
まずは、冒険者としてのキャリアを踏み出すために、最初の依頼を受けてこなすことで報酬を貰って、初めて目標の第一関門の達成である。
「アルバート様、本日はどうされますか?」
「依頼を見てみます。」
気合十分で鼻息を荒くして、沢崎直は依頼が張り出された掲示板へと足を進める。
もちろん、初心者なので他の人たちの迷惑にならないように邪魔にならないような場所で見ることを心掛けることは忘れない。
掲示板の端っこに空いたスペースを見つけ、沢崎直はそこに向かう。
歴戦の勇士のような冒険者の先達たちは、もちろん掲示板を見やすい真ん中に陣取るようにしているため隅っこは空いていた。こういう邪魔にならないような主張の薄い場所取りは、モブ女の時から沢崎直は得意だった。
掲示板の前に立ち、初めての依頼のため掲示板を見上げる。
掲示板には所狭しと依頼が並んでいた。
「……うわぁ。」
周囲に迷惑にならないような小さな声で、沢崎直が感嘆の声を上げる。
大きな掲示板に所狭しと並べられた依頼の紙は、すぐには必要なものが分からないくらいにいっぱいあり、口を開けて見上げることしかできない。初心者には、自分にあった依頼を見つけることすら至難の業であった。
「アルバート様。どのような依頼を受けられますか?」
背後から、ヴィルが尋ねてくる。
沢崎直はキョロキョロと依頼の紙の多さに驚いて首を左右に振りながら、ぽつぽつと答えた。
「えっと、私にも出来るくらいのヤツで……。難しくなくて……。あの、怖いこともない方がいいですし……。モンスターとか、倒せないし……。とりあえず、最初なので……。」
ひしめき合う依頼の中には、でかでかと派手な字で上の方に見易く掲げられているモノもある。
その紙に目を遣ると、そこには絵であるというのにおっかなさを煽るようなモンスターの姿と、一瞬では認識できないくらいの桁の数字が報酬として書いてあった。
その紙を見つめながら、後ろに控えるヴィルに後学のために指を指して質問する沢崎直。
「ああいうのは、師匠が倒したりするのですか?」
「そうですね。師匠も勤勉な方ではないので、興が乗ったり、あとは酒代に困ったりしたら、ふらっとやって来て比較的近くに出没して、その上倒しやすそうだと判断したものに挑むことはあると思いますが……。如何せん、あの師匠ですから。」
やれやれと首を振り、肩を竦めてヴィルは結論を濁した。
(倒せちゃうんだな、師匠は。……あんな、おっかないモンスター。)
コンスタントで勤勉に倒す気がないだけで、師匠クラスになれば倒す実力がないわけではないらしい。
自分には絶対に到達できない領域に、沢崎直は口を開けたまま唸るしかできなかった。
「はぁー。スゴイですね、師匠は。」
「あれで真面目な性格でしたら、冒険者としても名を馳せていたはずです。ですが、騎士団長の職すら放り出す体たらくですから、何とも。」
相変わらずヴィルは師匠相手には手厳しい意見を述べる。
そんなヴィルの意見を聴きながら沢崎直は、自分に手の届きそうな依頼を探すことにしたのだった。
受付のお姉さんからの説明も終わり、初期登録は完了し、沢崎直は無事に冒険者になることが出来た。
「ヴィル!」
喜びと共に、今貰ったばかりの冒険者登録証をヴィルに見せる。
ヴィルは沢崎直と一緒に真新しい登録証に喜んでくれた。
「よかったですね、アルバート様。」
ギルドの受付の前のスペースの邪魔にならないところに移動して、二人の主従は登録証を前にしてはしゃいでいる。特に沢崎直は子供のように無邪気な笑顔で登録証を掲げて喜んでいた。
そんな二人に構うことなく、世慣れた冒険者の先輩たちは依頼を受けたり、完了した依頼の報告のために行き交っていく。二人の姿を気に留めるものなどいなかった。
引きこもりのニートからの脱却の第一歩を踏み出した沢崎直は、真新しい登録証をしばらく堪能した後、ようやくもう一歩小さく踏み出すことにした。
登録証を作っただけではまだ目標の半分といったところだ。
まずは、冒険者としてのキャリアを踏み出すために、最初の依頼を受けてこなすことで報酬を貰って、初めて目標の第一関門の達成である。
「アルバート様、本日はどうされますか?」
「依頼を見てみます。」
気合十分で鼻息を荒くして、沢崎直は依頼が張り出された掲示板へと足を進める。
もちろん、初心者なので他の人たちの迷惑にならないように邪魔にならないような場所で見ることを心掛けることは忘れない。
掲示板の端っこに空いたスペースを見つけ、沢崎直はそこに向かう。
歴戦の勇士のような冒険者の先達たちは、もちろん掲示板を見やすい真ん中に陣取るようにしているため隅っこは空いていた。こういう邪魔にならないような主張の薄い場所取りは、モブ女の時から沢崎直は得意だった。
掲示板の前に立ち、初めての依頼のため掲示板を見上げる。
掲示板には所狭しと依頼が並んでいた。
「……うわぁ。」
周囲に迷惑にならないような小さな声で、沢崎直が感嘆の声を上げる。
大きな掲示板に所狭しと並べられた依頼の紙は、すぐには必要なものが分からないくらいにいっぱいあり、口を開けて見上げることしかできない。初心者には、自分にあった依頼を見つけることすら至難の業であった。
「アルバート様。どのような依頼を受けられますか?」
背後から、ヴィルが尋ねてくる。
沢崎直はキョロキョロと依頼の紙の多さに驚いて首を左右に振りながら、ぽつぽつと答えた。
「えっと、私にも出来るくらいのヤツで……。難しくなくて……。あの、怖いこともない方がいいですし……。モンスターとか、倒せないし……。とりあえず、最初なので……。」
ひしめき合う依頼の中には、でかでかと派手な字で上の方に見易く掲げられているモノもある。
その紙に目を遣ると、そこには絵であるというのにおっかなさを煽るようなモンスターの姿と、一瞬では認識できないくらいの桁の数字が報酬として書いてあった。
その紙を見つめながら、後ろに控えるヴィルに後学のために指を指して質問する沢崎直。
「ああいうのは、師匠が倒したりするのですか?」
「そうですね。師匠も勤勉な方ではないので、興が乗ったり、あとは酒代に困ったりしたら、ふらっとやって来て比較的近くに出没して、その上倒しやすそうだと判断したものに挑むことはあると思いますが……。如何せん、あの師匠ですから。」
やれやれと首を振り、肩を竦めてヴィルは結論を濁した。
(倒せちゃうんだな、師匠は。……あんな、おっかないモンスター。)
コンスタントで勤勉に倒す気がないだけで、師匠クラスになれば倒す実力がないわけではないらしい。
自分には絶対に到達できない領域に、沢崎直は口を開けたまま唸るしかできなかった。
「はぁー。スゴイですね、師匠は。」
「あれで真面目な性格でしたら、冒険者としても名を馳せていたはずです。ですが、騎士団長の職すら放り出す体たらくですから、何とも。」
相変わらずヴィルは師匠相手には手厳しい意見を述べる。
そんなヴィルの意見を聴きながら沢崎直は、自分に手の届きそうな依頼を探すことにしたのだった。
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