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第二部
第六章 アルバート(inモブ女)、初めての大冒険!!!⑧『師匠のアドバイス』
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八
師匠と従者のヴィルの二人に慰められて、沢崎直の視線が少しだけ上がる。
そのことに勢いを得て、ヴィルはここぞとばかりに続けた。
「だいたい、平日の昼間からぐうたらして酒を浴びている師匠に比べたら、アルバート様に何も恥じるところはありませんよ。」
主人を慰めながらも師匠を攻撃する一手をヴィルは繰り出す。
生真面目で堅物な弟子のヴィルの思わぬ攻撃に、師匠は表情を険しくして文句を言い始めようとした。
だが、それよりも先に、眼の前のもう一人の弟子の沢崎直の目からせっかく拭った涙がまたぽろぽろと流れ始めた。
「……でも、私も飲みました。師匠のお土産のお酒……、試飲しました……。」
ヴィルの攻撃が師匠ではなく、主人にクリーンヒットしていた。
ヴィルは慌てておろおろしながら、出した拳を何とか引っ込めようとする。
「あ、あれは、師匠を思うアルバート様の優しさですよね?少しくらい嗜む分には、アルコールは健康にいいといいますし、大丈夫ですよ。」
「…………。」
だが、一度出した拳を引っ込めることは至難の業だ。
どれだけフォローしても、一度出した言葉は沢崎直の柔な心を責め苛む。
ヴィルはどうしていいか分からず、師匠を見た。
師匠はしばらく頭を掻いていたが、はっと何かに気付いたような反応を見せた。
「……おっ!アル坊。冒険者ギルドはどうだ?」
「ぼうけんしゃぎるど?」
聞き慣れない言葉を鸚鵡返しのようにして聞き返す沢崎直。
師匠は自分の提案に一人で納得するように笑みを深くすると、うんうんと頷きながら説明を始めた。
「そうだな、それがあった。よし。いいか?この世界には冒険者って職業があってな。まあ、定義は色々だが、基本的には依頼を受けてこなして報酬を得るってもんだ。冒険者ギルドってのは、その冒険者に関するあれやこれをまとめて管理してる場所だ。そこへ行って、冒険者登録をすればすぐに冒険者になれるぜ。」
「……冒険者ですか?私にもできますか?難しくないですか?」
師匠の話を、涙を拭いてしっかりと聞きながら、沢崎直は質問する。
師匠の提案にはヴィルも頷いていた。
「大丈夫ですよ、アルバート様。依頼には様々なものがあり、簡単なものもたくさんありますし、もちろん俺も手伝います。」
「ヴィル……。」
笑顔で力強く頷いてくれる従者のヴィルの笑顔は沢崎直に心強さを感じさせた。
師匠は更に冒険者ギルドの説明を続ける。
「旅をするにも、冒険者登録をしていれば身元の証明になって、便利だし。大きな街には必ずといっていいほど冒険者ギルドはあるから、そこそこ依頼をこなしていれば食いっぱぐれることはない。俺も登録してるぞ。方々行くのに便利だし、何より強いモンスターの情報が入って来やすいからな。武者修行には持って来いだ。」
「師匠はモンスターを倒して、お金を稼いだりもするんですか?」
師匠のとんでもない強さならば、とんでもないモンスターを倒してかなりの額を稼ぎ出すことも出来るのではないのか?
「討伐依頼を受けることもあるぞ。殆ど酒代に消えるけどな。」
師匠の酒の消費量を考えると、さもありなんと沢崎直は納得した。酒代のために戦っているのか?腕試しのためなのか?それは師匠にしか分からない。いや、もはや師匠にも分からないのではないか?
師匠の金遣いの荒さは置いておいて、ヴィルも補足説明をしてくれる。
「ギルドでは討伐依頼だけではなく、採集依頼や、他にも護衛依頼などもありますし、本当に多岐に渡り依頼内容がありますから、一度ギルドを覗いてみてはいかがですか?もちろん、ユーテリアにもギルドの支部があります。」
ヴィルの言葉に、沢崎直は神妙に頷くのだった。
師匠と従者のヴィルの二人に慰められて、沢崎直の視線が少しだけ上がる。
そのことに勢いを得て、ヴィルはここぞとばかりに続けた。
「だいたい、平日の昼間からぐうたらして酒を浴びている師匠に比べたら、アルバート様に何も恥じるところはありませんよ。」
主人を慰めながらも師匠を攻撃する一手をヴィルは繰り出す。
生真面目で堅物な弟子のヴィルの思わぬ攻撃に、師匠は表情を険しくして文句を言い始めようとした。
だが、それよりも先に、眼の前のもう一人の弟子の沢崎直の目からせっかく拭った涙がまたぽろぽろと流れ始めた。
「……でも、私も飲みました。師匠のお土産のお酒……、試飲しました……。」
ヴィルの攻撃が師匠ではなく、主人にクリーンヒットしていた。
ヴィルは慌てておろおろしながら、出した拳を何とか引っ込めようとする。
「あ、あれは、師匠を思うアルバート様の優しさですよね?少しくらい嗜む分には、アルコールは健康にいいといいますし、大丈夫ですよ。」
「…………。」
だが、一度出した拳を引っ込めることは至難の業だ。
どれだけフォローしても、一度出した言葉は沢崎直の柔な心を責め苛む。
ヴィルはどうしていいか分からず、師匠を見た。
師匠はしばらく頭を掻いていたが、はっと何かに気付いたような反応を見せた。
「……おっ!アル坊。冒険者ギルドはどうだ?」
「ぼうけんしゃぎるど?」
聞き慣れない言葉を鸚鵡返しのようにして聞き返す沢崎直。
師匠は自分の提案に一人で納得するように笑みを深くすると、うんうんと頷きながら説明を始めた。
「そうだな、それがあった。よし。いいか?この世界には冒険者って職業があってな。まあ、定義は色々だが、基本的には依頼を受けてこなして報酬を得るってもんだ。冒険者ギルドってのは、その冒険者に関するあれやこれをまとめて管理してる場所だ。そこへ行って、冒険者登録をすればすぐに冒険者になれるぜ。」
「……冒険者ですか?私にもできますか?難しくないですか?」
師匠の話を、涙を拭いてしっかりと聞きながら、沢崎直は質問する。
師匠の提案にはヴィルも頷いていた。
「大丈夫ですよ、アルバート様。依頼には様々なものがあり、簡単なものもたくさんありますし、もちろん俺も手伝います。」
「ヴィル……。」
笑顔で力強く頷いてくれる従者のヴィルの笑顔は沢崎直に心強さを感じさせた。
師匠は更に冒険者ギルドの説明を続ける。
「旅をするにも、冒険者登録をしていれば身元の証明になって、便利だし。大きな街には必ずといっていいほど冒険者ギルドはあるから、そこそこ依頼をこなしていれば食いっぱぐれることはない。俺も登録してるぞ。方々行くのに便利だし、何より強いモンスターの情報が入って来やすいからな。武者修行には持って来いだ。」
「師匠はモンスターを倒して、お金を稼いだりもするんですか?」
師匠のとんでもない強さならば、とんでもないモンスターを倒してかなりの額を稼ぎ出すことも出来るのではないのか?
「討伐依頼を受けることもあるぞ。殆ど酒代に消えるけどな。」
師匠の酒の消費量を考えると、さもありなんと沢崎直は納得した。酒代のために戦っているのか?腕試しのためなのか?それは師匠にしか分からない。いや、もはや師匠にも分からないのではないか?
師匠の金遣いの荒さは置いておいて、ヴィルも補足説明をしてくれる。
「ギルドでは討伐依頼だけではなく、採集依頼や、他にも護衛依頼などもありますし、本当に多岐に渡り依頼内容がありますから、一度ギルドを覗いてみてはいかがですか?もちろん、ユーテリアにもギルドの支部があります。」
ヴィルの言葉に、沢崎直は神妙に頷くのだった。
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