転生したらついてましたァァァァァ!!!

夢追子

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第二部

第五章 イケおじ師匠とナイショの特訓!!!㊹『魔法と下ネタ』

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      四十四

「いいか?魔法ってのは、簡単に言えばエネルギーの具現化だ。体内を流れる魔力というエネルギーを操り、イメージして放出する。持って生まれたもんっていうのは大雑把に言えば、この魔力というエネルギーの量とエネルギーの操作性能。あとはイメージの具現化能力の三つだ。この三つはもちろん鍛練によって精度が上がったりするが、元々向いてないヤツには分かりやすく限界がある。使える方が便利だが、使えなくても何とかなる。あとは分野によっての得意不得意もあるな。」
 師匠の有り難い魔法の話に耳を傾けている沢崎直だが、はっきり言って理解できたとは言い難かった。これでも師匠はかなり専門的な部分を噛み砕いてくれているとは思うのだが、如何せん全く知らないものであるためお手上げである。
 師匠もその辺りの事は了承しているようで、複雑な顔をしている沢崎直を元気づけるように笑いかけた。
「まあ、理論は追々だな。とりあえず、やってみろ。ほら。」
 師匠の家の前の開けた場所の隅には、木製の的のようなモノが立てられていて、師匠はそれを指さした。
 師匠に言われたまま、その的のようなものに向き直る沢崎直。
「片手を軽く上げろ。手のひらは開いて、的に向けろ。」
 右手を肩の高さまで上げ、開いた手のひらを的に向ける。
 師匠は更に沢崎直の背中越しに指示を出し続ける。
「目を閉じて。イメージしろ。身体の中のエネルギーを感じろ。」
 沢崎直はとりあえず目を閉じた。
(……イメージとか、エネルギーとか……。)
 よく分からないなりに、心の中で師匠の言葉を復唱する。
「手のひらが熱くなったら、目を開けて叫べ。ファイア!」
 目を開いて、沢崎直は言われるがまま叫んだ。
「フ、ファイア!」
「………。よし!」
 何がよしかは分からないが、師匠は頷いた。
 もちろん、沢崎直の手のひらからは何も具現化されなかった。
 虚空に向けて間抜けに叫んだだけの声が、近くの林に響いただけである。
 沢崎直は掲げていた手のひらを恥じらいながら、そっと下げた。
 昔、沢崎直がまだ夢見がちな少女だった頃、アニメの真似をして呪文を唱えていた頃はそれで魔法が出なくても首を傾げるだけで済んだ。だが、大人になり、魔法への憧れはあっても子供ではないのだからと口に出しにくくなってからは、一度もこんな羞恥プレイはしたことがない。呪文を唱えても何も起こらない現実は少しの期待があった分、思っていた以上の心理的ダメージを沢崎直にもたらした。
 見る見るうちに顔は赤く染まり、もじもじとし始める沢崎直。あまりの恥辱に悶絶しそうだった。
 師匠はそんな沢崎直の反応を全て確認した後、顔をポリポリと掻いた。
「……そういや、お前さんは他にも結婚のことを困ってたよな?」
 わざとらしいくらい唐突に、話題を切り替えてくる師匠。
 沢崎直はまだ赤い顔のまま、師匠に追い縋るように訴えた。
「師匠!」
(そりゃもちろん、そのことも困ってるけどぉぉぉぉぉ!)
「いや、魔法だろ?分かってるって。……だけどなぁ、お前さんに魔力はあると思うんだが……。イメージの問題か?」
 ぶつぶつ独り言のようにあらゆる可能性の検討を一人で始める師匠。
 沢崎直は師匠の考え事の間は何もすることがない。なので、魔法一つとってもままならぬ現実に少々いじけて、地面に転がる小石を蹴りながら、師匠に届くかどうか分からないくらいの声量で呟いた。
「……結婚の事も困ってますよぉ。もちろん。急にマリアさんと結婚しろって言われても、私、女だし……。もちろん、身体はアルバート氏ですから、男ですけど……。」
「まあ、結婚したら子作りに励めとか言われるしな。お前は困るわな。」
 独り言のつもりで呟いていた言葉に、師匠が優しい言葉を返して共感してくれる。
 沢崎直はさっきの恥辱プレイの事も忘れて、師匠のことを縋るように見つめた。
 師匠はさもありなんと頷いた後、にやっと笑って口を開いた。
「俺でよけけりゃそっちも相談に乗るぜ。何なら、股の間にぶら下がってるもんの使い方もレクチャーしてやろうか?手取り足取りよぉ。」
「……なっ!」
 不意打ちのような下ネタに、沢崎直の顔が再度真っ赤に染まっていく。
 花も恥じらう乙女の時期はとっくに過ぎたと思っていたのに、この師匠はワイルドで危険な男の魅力でもって沢崎直を花も恥じらう乙女に戻していた。
「フフフ。悪ぃ。冗談だ。……それにしても、本当に女なんだな、ナオ。何か、今ので改めて実感したぞ。」
 悪戯な笑みの後、あっけらかんとした謝罪。その後の朗らかな笑顔。
 師匠は手のひらの上で沢崎直のことを弄ぶかのようにからかう。
 沢崎直はまんまと師匠の術中に嵌まったようで、全然面白くなかった。
(セクハラだっ!!)
 まだ熱の引かない紅い顔で、この世界では全く通じなさそうな文句を心の中で師匠にぶつける沢崎直であった。
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