55 / 187
第一部
第三章 SUR級モンスター 女子力の化身、襲来!!㉙『恐怖の女傑』
しおりを挟む
二十九
(今何て言ったの、この人!?)
沢崎直は戸惑いと衝撃で固まったまま動けない。
そんな沢崎直の様子を気に掛けることもせず、婚約者の美女は続けた。
「記憶喪失のフリなどと、いい加減大人になってください。」
呆れたような美女の口調に、沢崎直は核心を突かれたようで心臓が跳ね上がる。
(えっ!?中身が別人だってバレてる?だから、態度がおかしかったの?この人。)
しかし、次に続いた言葉で、沢崎直の今の予想が外れたことが知らされるのだが、それは更なる混沌を沢崎直にもたらした。
「一年も失踪していたと思ったら今度は記憶喪失などと……。私との婚約を破談にするためなら手段を選ばないおつもりですか?でしたら、直接ご両親にそうおっしゃればいいのに……。」
(ど、どういうこと!?何言ってるの、この人?)
冷え冷えとした視線で沢崎直を射抜き、微笑みを保ったまま凄んでくるマリア嬢。
混乱を来した上に記憶のない沢崎直には何も返すことが出来ない。
「ですが、一年前にもお伝えした通り、私は貴方と結婚する意志に変わりはございません。何をなさろうとあなたの勝手ではありますが、あまりこちらの手を煩わせないでくださいませ。まあ、貴方が何をなさったとしても、こちらも全力で貴方と婚姻を結ばせていただきますから。」
えげつないほどの美女のとどめの一撃のようなとびっきりの笑顔。
それは、とんでもない破壊力を持つ。
沢崎直は歯の根が合わぬほどの恐怖を感じて、思わず一歩後ずさった。
だが、開いた一歩を優雅に詰めてくるマリア嬢。
「私から逃げられると思わないでください、アルバート様。」
(お、お、お、おっかねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!)
底が知れない美女に笑顔で凄まれた沢崎直は恐怖で膝が笑い出していた。
猛禽類が獲物を前にしたかのような視線で沢崎直を捉え、その可憐でありながら扇情的な唇からはちろちろと赤い蛇のような舌が覗きそうだ。
沢崎直には目の前の美女がバケモノにしか見えなかった。
(聖女って、何ぃぃぃぃぃぃぃ!?)
沢崎直は心の中で絶叫した。
沢崎直は後に思い知る。
世間に流布されている噂などは信用できないと。
特に、自分が周囲からどう見えているかを自覚的に捉え、それを操作できるほどの有能さを持つ人物に関する噂というのは、当人が周りに対して作り出した幻影の宣伝に他ならないのだから。
皆に公平で優しいというのは一見すると素晴らしいことのようだが、それはただ義務を遂行しているだけで慈悲ではなく、誰の事も大切ではないということもあるかもしれない。
自覚的に周囲に対して聖女だと喧伝するのは、何を得るためなのか?
周囲の印象を徹底的に操り、一分の隙もなく常に立ち振る舞い、義務として慈善を行えるほどの女性。
そんなとんでもない女傑が、アルバート氏の婚約者であった。
後は蛇足ではあるが追記しておく。
この令嬢のミドルネーム。それは奇しくも沢崎直の世界における伝説級の毒婦の名前であったと。
(今何て言ったの、この人!?)
沢崎直は戸惑いと衝撃で固まったまま動けない。
そんな沢崎直の様子を気に掛けることもせず、婚約者の美女は続けた。
「記憶喪失のフリなどと、いい加減大人になってください。」
呆れたような美女の口調に、沢崎直は核心を突かれたようで心臓が跳ね上がる。
(えっ!?中身が別人だってバレてる?だから、態度がおかしかったの?この人。)
しかし、次に続いた言葉で、沢崎直の今の予想が外れたことが知らされるのだが、それは更なる混沌を沢崎直にもたらした。
「一年も失踪していたと思ったら今度は記憶喪失などと……。私との婚約を破談にするためなら手段を選ばないおつもりですか?でしたら、直接ご両親にそうおっしゃればいいのに……。」
(ど、どういうこと!?何言ってるの、この人?)
冷え冷えとした視線で沢崎直を射抜き、微笑みを保ったまま凄んでくるマリア嬢。
混乱を来した上に記憶のない沢崎直には何も返すことが出来ない。
「ですが、一年前にもお伝えした通り、私は貴方と結婚する意志に変わりはございません。何をなさろうとあなたの勝手ではありますが、あまりこちらの手を煩わせないでくださいませ。まあ、貴方が何をなさったとしても、こちらも全力で貴方と婚姻を結ばせていただきますから。」
えげつないほどの美女のとどめの一撃のようなとびっきりの笑顔。
それは、とんでもない破壊力を持つ。
沢崎直は歯の根が合わぬほどの恐怖を感じて、思わず一歩後ずさった。
だが、開いた一歩を優雅に詰めてくるマリア嬢。
「私から逃げられると思わないでください、アルバート様。」
(お、お、お、おっかねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!)
底が知れない美女に笑顔で凄まれた沢崎直は恐怖で膝が笑い出していた。
猛禽類が獲物を前にしたかのような視線で沢崎直を捉え、その可憐でありながら扇情的な唇からはちろちろと赤い蛇のような舌が覗きそうだ。
沢崎直には目の前の美女がバケモノにしか見えなかった。
(聖女って、何ぃぃぃぃぃぃぃ!?)
沢崎直は心の中で絶叫した。
沢崎直は後に思い知る。
世間に流布されている噂などは信用できないと。
特に、自分が周囲からどう見えているかを自覚的に捉え、それを操作できるほどの有能さを持つ人物に関する噂というのは、当人が周りに対して作り出した幻影の宣伝に他ならないのだから。
皆に公平で優しいというのは一見すると素晴らしいことのようだが、それはただ義務を遂行しているだけで慈悲ではなく、誰の事も大切ではないということもあるかもしれない。
自覚的に周囲に対して聖女だと喧伝するのは、何を得るためなのか?
周囲の印象を徹底的に操り、一分の隙もなく常に立ち振る舞い、義務として慈善を行えるほどの女性。
そんなとんでもない女傑が、アルバート氏の婚約者であった。
後は蛇足ではあるが追記しておく。
この令嬢のミドルネーム。それは奇しくも沢崎直の世界における伝説級の毒婦の名前であったと。
21
お気に入りに追加
121
あなたにおすすめの小説

スナイパー令嬢戦記〜お母様からもらった"ボルトアクションライフル"が普通のマスケットの倍以上の射程があるんですけど〜
シャチ
ファンタジー
タリム復興期を読んでいただくと、なんでミリアのお母さんがぶっ飛んでいるのかがわかります。
アルミナ王国とディクトシス帝国の間では、たびたび戦争が起こる。
前回の戦争ではオリーブオイルの栽培地を欲した帝国がアルミナ王国へと戦争を仕掛けた。
一時はアルミナ王国の一部地域を掌握した帝国であったが、王国側のなりふり構わぬ反撃により戦線は膠着し、一部国境線未確定地域を残して停戦した。
そして20年あまりの時が過ぎた今、皇帝マーダ・マトモアの崩御による帝国の皇位継承権争いから、手柄を欲した時の第二皇子イビリ・ターオス・ディクトシスは軍勢を率いてアルミナ王国への宣戦布告を行った。
砂糖戦争と後に呼ばれるこの戦争において、両国に恐怖を植え付けた一人の令嬢がいる。
彼女の名はミリア・タリム
子爵令嬢である彼女に戦後ついた異名は「狙撃令嬢」
542人の帝国将兵を死傷させた狙撃の天才
そして戦中は、帝国からは死神と恐れられた存在。
このお話は、ミリア・タリムとそのお付きのメイド、ルーナの戦いの記録である。
他サイトに掲載したものと同じ内容となります。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。


【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。
この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。
ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。
少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。
更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。
そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。
少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。
どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。
少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。
冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。
すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く…
果たして、その可能性とは⁉
HOTランキングは、最高は2位でした。
皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )
初期スキルが便利すぎて異世界生活が楽しすぎる!
霜月雹花
ファンタジー
神の悪戯により死んでしまった主人公は、別の神の手により3つの便利なスキルを貰い異世界に転生する事になった。転生し、普通の人生を歩む筈が、又しても神の悪戯によってトラブルが起こり目が覚めると異世界で10歳の〝家無し名無し〟の状態になっていた。転生を勧めてくれた神からの手紙に代償として、希少な力を受け取った。
神によって人生を狂わされた主人公は、異世界で便利なスキルを使って生きて行くそんな物語。
書籍8巻11月24日発売します。
漫画版2巻まで発売中。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)
異世界に転生をしてバリアとアイテム生成スキルで幸せに生活をしたい。
みみっく
ファンタジー
女神様の手違いで通勤途中に気を失い、気が付くと見知らぬ場所だった。目の前には知らない少女が居て、彼女が言うには・・・手違いで俺は死んでしまったらしい。手違いなので新たな世界に転生をさせてくれると言うがモンスターが居る世界だと言うので、バリアとアイテム生成スキルと無限収納を付けてもらえる事になった。幸せに暮らすために行動をしてみる・・・
ダレカノセカイ
MY
ファンタジー
新道千。高校2年生。
次に目を覚ますとそこは――。
この物語は俺が元いた居場所……いや元いた世界へ帰る為の戦いから始まる話である。
――――――――――――――――――
ご感想などありましたら、お待ちしております(^^)
by MY
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる