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第一部

第三章 SUR(スーパーウルトラレア)級モンスター 女子力の化身、襲来!!①『到着』

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   第三章『SUR(スーパーウルトラレア)級モンスター 女子力の化身、襲来!!』

     一

「着きました、こちらです。」
 馬車が止まったと思った途端、颯爽と馬車の御者席から地上に降りた超絶イケメンは、馬車の扉から車内を覗き込み無駄のない動作で沢崎直に声を掛けた。
(……もうですか?)
 心の整理をつける時間すら与えられなかった沢崎直は、心の中でそう尋ねた。
 だが、表面上は素直なもので、超絶イケメンに促されるまま馬車を下りる。
 馬車の外に広がっていたのは、テレビの社長の豪邸訪問的な番組に出てきそうな広大な光景だった。今まで乗って来た馬車は、きちんと手入れされた広い庭に乗り入れられていて、三階建ての広い屋敷は荘厳なつくりだ。
 敷地内に存在する使用人の数も、今、入り口に立って見渡せるだけでも少なくない気がした。
 庭の先に視線を凝らしてみると、いつの間に開いて、いつの間に通ったんだと疑問を持ちたくなるような頑丈な門が聳えている。何か馬車の速度が変わらなかったけど、そんな簡単に入れるものなの?と、警備体制への疑問を沢崎直は他人事として感じていた。
「すぐにお医者様を呼びますので。」
 超絶イケメンは、沢崎直を先導するように進みながら、そう声を掛けた。
 初めて見る豪華な屋敷に、沢崎直は気もそぞろだった。
(……これって、本当に私が入っていいの?……何か間違いがあって、粗相でもしたらどうなるんだろう?……っていうか、アルバート様って人、こんなとこで暮らしてる人なの?……いや、むしろこの私が入ってるイケメン、アルバート様で間違いないの?)
 超絶イケメンとの邂逅から少し時間が経ち、舞い上がっていた沢崎直の気持ちも幾分落ち着いて来ていた。だが、そのおかげで、自分が現在陥っている状況が冷静に理解できるようになり、結局、沢崎直の心中は落ち着かなかった。
 勝手知ったるという堂々とした足取りで、超絶イケメンは豪華な屋敷の敷地内を進んでいく。
 その見惚れるほど引き締まった背中を見つめながら、沢崎直は心中で解決できない疑問を浮かべ続けていた。
(……勢いに任せて、この人に付いてきちゃったけど、この人って信用できる人なの?だいたい、首飾りの件だって、この人がそう証言しただけで、他に確たる証拠もなかったし……。あれ?この人、そもそも誰なの?)
 沢崎直は根本的なことを見落としていた自分に今更気づいた。
 超絶イケメンであることしか知らないこの男は、明らかに何らかの武術に精通していそうなこの男は、何なのか?
(……えっ?これ、うっかりイケメンについてったら、美人局とかないよね?)
 沢崎直は、超絶イケメンに舞い上がっていたせいで、全く慎重さを欠いていた自分の迂闊さを今更ながら呪っていた。
 敷地内を進む二人の傍を、一人の使用人の女性が通りかかる。
 そのメイド服を着た若い女性へと、超絶イケメンは通り過ぎざまに声を掛けた。
「シンシア、グスタフ先生をお呼びするようリヒターさんに伝えてください。」
「グスタフ先生ですか?」
「はい、至急お願いします。」
 知らない名前ばかりが出てきて、沢崎直は改めて知らないところに来ている実感が湧いていた。
 シンシアと呼ばれたメイドさんは、持っていた荷物をずらし、しっかりと超絶イケメンを視認して訪ねる。
「あ、あのー、ヴィルヘルムさん。どなたかお怪我でもされました?それとも、ご病気ですか?」
 ただ素直に尋ねたというよりは、その後の行動の手配のことを考えて尋ねたというような印象の疑問。使用人の若い女性ですら、しっかりと教育されているこの屋敷の凄さを、沢崎直は感じた。
「アルバート様だ。」
 単刀直入に無駄を一切省いて超絶イケメンは答える。
 その時、ようやくメイドさんの視線が超絶イケメンの背後で大人しくしていた沢崎直に向けられた。
 一瞬の沈黙。
 そして、
「あ、あ、あ、あ、あ、」
 目をカッと見開き、口を諤々と動かした後、メイドさんは大きく息を吸い込んだ。
「アルバート様!!!!!!」
 敷地内には、メイドさんの大絶叫が響き渡った。
 それは、バケモノを見た時に人が発する声に酷く似ていたと、沢崎直は思った。
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