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第六章 学園祭、その後……⑧
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八
「そういや、ハルトはまだ来ないのか?」
会話が一段落したところで、スオウが室内を見回して尋ねた。
誰もその答えを持ってはいないようで、スオウの質問に皆が首を振る。
スオウはスマホを取り出しながら続ける。
「アイツ、来ないって言ってたか?」
どうせスオウのことだから、出欠もメールでテキトーに確認したのだろう。というか、明人は来るかどうかすら聞かれていないことに今更気づいた。
(アイツ、一方的に始める時間と場所だけ送ってきやがったんだな、確か……。)
スオウがテキトーなのは今に始まったことじゃない。他のメンバーも、明人と似たような感想を持ったらしく、少々苦笑いをしていた。
スオウがスマホを操作し始める。
鈴木ハルトに通話でもするつもりなのだろう。
だが、それよりも先に、勢いよく多目的室の扉が外から開かれた。
「す、すみません!!遅くなりました!!」
息せき切った様子で、肩で息をしながら慌ててやって来たのは鈴木ハルトだった。
「どうした?ハルト。遅かったじゃねぇか?」
笑顔で鈴木ハルトを出迎えながら、スオウは尋ねる。
鈴木ハルトはバツが悪そうにえへへと笑い、息を整えながら答えた。
「あ、あの、…寝すぎちゃって。」
鈴木ハルトの登場で、室内にはウェルカムの空気が充満する。
すぐに場の中心に通され、生徒会メンバーの攻略キャラたちに囲まれる。
「ハルト、寝癖が付いているぞ。」
草薙ジンが穏やかに笑って指摘すると、鈴木ハルトは恥ずかしそうに髪の毛を抑えながら慌てる。
「ど、どこですか!?」
「鏡を見なかったのか?」
道明寺レイにそう尋ねられると、分かりやすくしゅんとする鈴木ハルト。
「寝過ごして、お、遅くなっちゃったので、鏡、見てないんです。」
「ははは。ハルトらしいな。ほら、これ使えよ。」
常備している手鏡を笑いながら渡すのはクラスメイトの南野タケルだ。寝癖がつくなどということは、鈴木ハルトにとって日常茶飯事なのだろう。明人にしてみれば、鈴木ハルトの寝癖よりも手鏡を持っている南野タケルの用意周到さに驚きを感じた。
皆の中心でへらへらしながら、いつも通り鈴木ハルトはころころと表情を変えている。
部屋の隅に陣取って、その輪に入ることもしない明人は、その光景を他人事のようにただ眺めていた。
(まるでアイドルだな……。いや、マスコットか?)
どちらにせよ人気があることは間違いない。
「よし!!これで全員揃ったな!」
嬉しそうにスオウが微笑む。
そして、今やって来たばかりの鈴木ハルトにも飲み物を渡すと、スオウは持っていた飲み物カップを掲げた。
「ごほんっ……。よしっ!改めて、お疲れ様!!皆よくやってくれた。乾杯!!」
咳払いをして場を仕切り直すと、会長らしく乾杯の挨拶をするスオウ。
明人も部屋の隅で、持っていた紙コップを掲げた。
中身はスオウがテキトーに用意した甘いジュースなので、さすがに飲みはしなかったが乾杯に水を差す気はない。
こうして慰労会ははっきりとしっかりと始まった。
鈴木ハルトを中心とした輪が賑やかに出来上がっているのを、部屋の隅から他人事のように眺めている明人。
(よく分からんが、ルートに入っているなら、どうせその誰かに寄ってくだろう。)
頭痛を少しでも緩和させようとこめかみを揉みながら、今後の成り行きを注意深く見守ることにして、今は現状をそう結論付けておくことにした。
「そういや、ハルトはまだ来ないのか?」
会話が一段落したところで、スオウが室内を見回して尋ねた。
誰もその答えを持ってはいないようで、スオウの質問に皆が首を振る。
スオウはスマホを取り出しながら続ける。
「アイツ、来ないって言ってたか?」
どうせスオウのことだから、出欠もメールでテキトーに確認したのだろう。というか、明人は来るかどうかすら聞かれていないことに今更気づいた。
(アイツ、一方的に始める時間と場所だけ送ってきやがったんだな、確か……。)
スオウがテキトーなのは今に始まったことじゃない。他のメンバーも、明人と似たような感想を持ったらしく、少々苦笑いをしていた。
スオウがスマホを操作し始める。
鈴木ハルトに通話でもするつもりなのだろう。
だが、それよりも先に、勢いよく多目的室の扉が外から開かれた。
「す、すみません!!遅くなりました!!」
息せき切った様子で、肩で息をしながら慌ててやって来たのは鈴木ハルトだった。
「どうした?ハルト。遅かったじゃねぇか?」
笑顔で鈴木ハルトを出迎えながら、スオウは尋ねる。
鈴木ハルトはバツが悪そうにえへへと笑い、息を整えながら答えた。
「あ、あの、…寝すぎちゃって。」
鈴木ハルトの登場で、室内にはウェルカムの空気が充満する。
すぐに場の中心に通され、生徒会メンバーの攻略キャラたちに囲まれる。
「ハルト、寝癖が付いているぞ。」
草薙ジンが穏やかに笑って指摘すると、鈴木ハルトは恥ずかしそうに髪の毛を抑えながら慌てる。
「ど、どこですか!?」
「鏡を見なかったのか?」
道明寺レイにそう尋ねられると、分かりやすくしゅんとする鈴木ハルト。
「寝過ごして、お、遅くなっちゃったので、鏡、見てないんです。」
「ははは。ハルトらしいな。ほら、これ使えよ。」
常備している手鏡を笑いながら渡すのはクラスメイトの南野タケルだ。寝癖がつくなどということは、鈴木ハルトにとって日常茶飯事なのだろう。明人にしてみれば、鈴木ハルトの寝癖よりも手鏡を持っている南野タケルの用意周到さに驚きを感じた。
皆の中心でへらへらしながら、いつも通り鈴木ハルトはころころと表情を変えている。
部屋の隅に陣取って、その輪に入ることもしない明人は、その光景を他人事のようにただ眺めていた。
(まるでアイドルだな……。いや、マスコットか?)
どちらにせよ人気があることは間違いない。
「よし!!これで全員揃ったな!」
嬉しそうにスオウが微笑む。
そして、今やって来たばかりの鈴木ハルトにも飲み物を渡すと、スオウは持っていた飲み物カップを掲げた。
「ごほんっ……。よしっ!改めて、お疲れ様!!皆よくやってくれた。乾杯!!」
咳払いをして場を仕切り直すと、会長らしく乾杯の挨拶をするスオウ。
明人も部屋の隅で、持っていた紙コップを掲げた。
中身はスオウがテキトーに用意した甘いジュースなので、さすがに飲みはしなかったが乾杯に水を差す気はない。
こうして慰労会ははっきりとしっかりと始まった。
鈴木ハルトを中心とした輪が賑やかに出来上がっているのを、部屋の隅から他人事のように眺めている明人。
(よく分からんが、ルートに入っているなら、どうせその誰かに寄ってくだろう。)
頭痛を少しでも緩和させようとこめかみを揉みながら、今後の成り行きを注意深く見守ることにして、今は現状をそう結論付けておくことにした。
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