46 / 57
第六章 学園祭、その後……④
しおりを挟む
四
どこをどう歩いたか分からないが、寝起きにしては信じられないほどのスピードで明人は寮の自室まで戻っていた。
自室に戻った途端、バタンと閉めた扉に背を預け、頭を抱える。
(……えっ?結局、学園祭って、どうなった?)
学園祭当日は、かなり上手くいっていたはずだ。
明人は他の攻略キャラたちが次々とイベントを起こしていくのを見送り、ずっと安全圏からそれを眺めていた。それどころか次々にやって来るトラブルすらうまく捌き切り、学園祭も大成功だったはずだ。
フィナーレが始まった段階で、さすがにもういいだろ?と、生徒会室を抜け出し、全てからエスケープするために屋上へとやってきたとこまでは完璧だった。
(……屋上で、一人で、花火を見ていて……。)
その辺りから少しずつ気が抜けていたのだ明人は。
フィナーレのフォークダンスの会場から一番遠い屋上など、誰も来るはずがないと思い、しゃがみこんだら疲労で立ち上がれなくなったのだ。
このまま眠ってしまってもいいかなどと考えながら花火を見上げていたら、何故か一人のはずの屋上に水嶋シュウ以外の声が聞こえたのだ。
(………でも、いたよな?アイツ…。)
誰からも何からも逃げてきたはずの屋上に、最後の最後でやって来た主人公・鈴木ハルト。屋上からの花火の眺めに無邪気な声を上げていた。
(……えっ?あれって、どういうこと?どういう状況?フォークダンスのパートナーじゃないけど?)
必死に記憶を辿り、姉の言葉を手繰り寄せる。
(だって、姉ちゃん言ってたよな?ルート分岐の最終的な決定は、学園祭のパートナー選びだって……。)
そもそもフォークダンスの会場に明人は行っていないし、屋上で確か主人公・鈴木ハルトはフォークダンスがどうとか言っていたが、明人は疲労困憊でそれどころではなく踊ってなどいないはずだ。
昨夜の自分の行動も必死に思い出し、現状を理解しようとして必死に頭を回転させる明人。
(……というか、さっきのって、どういう状況?)
とりあえず屋上から全力で逃げ帰りはしたが、先程自分が陥っていた状況も未だ理解が追い付いていない。
明人は、がしがしと頭を掻き毟り、その場にしゃがみ込んだ。
「……くそっ。」
(あああああああ、もう全然わからんっ!!)
水嶋シュウのチート的頭脳をもってしても、現在の状況をゲーム展開的に正確に理解するのは酷く難解であった。
(……助けてくれ、姉ちゃん…。)
今はこの世界のどこにも存在しない姉に、明人は助けを求めたくて仕方なかった。
そんな明人のスマホに、着信を知らせる振動が起きる。
しゃがみこんだ姿勢のまま、スマホを取出し画面を確認する。
そこには、能天気なスオウのメッセージが表示されていた。
『打ち上げやるか?』
「……。」
明人はスオウのメッセージを未読スルーすることにした。
そして、扉の前から立ち上がる。
「……寝よう。」
とりあえず、全てを忘れて眠ることにして、明人は着替えとシャワーの準備を始めたのだった。
どこをどう歩いたか分からないが、寝起きにしては信じられないほどのスピードで明人は寮の自室まで戻っていた。
自室に戻った途端、バタンと閉めた扉に背を預け、頭を抱える。
(……えっ?結局、学園祭って、どうなった?)
学園祭当日は、かなり上手くいっていたはずだ。
明人は他の攻略キャラたちが次々とイベントを起こしていくのを見送り、ずっと安全圏からそれを眺めていた。それどころか次々にやって来るトラブルすらうまく捌き切り、学園祭も大成功だったはずだ。
フィナーレが始まった段階で、さすがにもういいだろ?と、生徒会室を抜け出し、全てからエスケープするために屋上へとやってきたとこまでは完璧だった。
(……屋上で、一人で、花火を見ていて……。)
その辺りから少しずつ気が抜けていたのだ明人は。
フィナーレのフォークダンスの会場から一番遠い屋上など、誰も来るはずがないと思い、しゃがみこんだら疲労で立ち上がれなくなったのだ。
このまま眠ってしまってもいいかなどと考えながら花火を見上げていたら、何故か一人のはずの屋上に水嶋シュウ以外の声が聞こえたのだ。
(………でも、いたよな?アイツ…。)
誰からも何からも逃げてきたはずの屋上に、最後の最後でやって来た主人公・鈴木ハルト。屋上からの花火の眺めに無邪気な声を上げていた。
(……えっ?あれって、どういうこと?どういう状況?フォークダンスのパートナーじゃないけど?)
必死に記憶を辿り、姉の言葉を手繰り寄せる。
(だって、姉ちゃん言ってたよな?ルート分岐の最終的な決定は、学園祭のパートナー選びだって……。)
そもそもフォークダンスの会場に明人は行っていないし、屋上で確か主人公・鈴木ハルトはフォークダンスがどうとか言っていたが、明人は疲労困憊でそれどころではなく踊ってなどいないはずだ。
昨夜の自分の行動も必死に思い出し、現状を理解しようとして必死に頭を回転させる明人。
(……というか、さっきのって、どういう状況?)
とりあえず屋上から全力で逃げ帰りはしたが、先程自分が陥っていた状況も未だ理解が追い付いていない。
明人は、がしがしと頭を掻き毟り、その場にしゃがみ込んだ。
「……くそっ。」
(あああああああ、もう全然わからんっ!!)
水嶋シュウのチート的頭脳をもってしても、現在の状況をゲーム展開的に正確に理解するのは酷く難解であった。
(……助けてくれ、姉ちゃん…。)
今はこの世界のどこにも存在しない姉に、明人は助けを求めたくて仕方なかった。
そんな明人のスマホに、着信を知らせる振動が起きる。
しゃがみこんだ姿勢のまま、スマホを取出し画面を確認する。
そこには、能天気なスオウのメッセージが表示されていた。
『打ち上げやるか?』
「……。」
明人はスオウのメッセージを未読スルーすることにした。
そして、扉の前から立ち上がる。
「……寝よう。」
とりあえず、全てを忘れて眠ることにして、明人は着替えとシャワーの準備を始めたのだった。
11
お気に入りに追加
32
あなたにおすすめの小説

過食症の僕なんかが異世界に行ったって……
おがとま
BL
過食症の受け「春」は自身の醜さに苦しんでいた。そこに強い光が差し込み異世界に…?!
ではなく、神様の私欲の巻き添えをくらい、雑に異世界に飛ばされてしまった。まあそこでなんやかんやあって攻め「ギル」に出会う。ギルは街1番の鍛冶屋、真面目で筋肉ムキムキ。
凸凹な2人がお互いを意識し、尊敬し、愛し合う物語。

なんでも諦めてきた俺だけどヤンデレな彼が貴族の男娼になるなんて黙っていられない
迷路を跳ぶ狐
BL
自己中な無表情と言われて、恋人と別れたクレッジは冒険者としてぼんやりした毎日を送っていた。
恋愛なんて辛いこと、もうしたくなかった。大体のことはなんでも諦めてのんびりした毎日を送っていたのに、また好きな人ができてしまう。
しかし、告白しようと思っていた大事な日に、知り合いの貴族から、その人が男娼になることを聞いたクレッジは、そんなの黙って見ていられないと止めに急ぐが、好きな人はなんだか様子がおかしくて……。

せっかく美少年に転生したのに女神の祝福がおかしい
拓海のり
BL
前世の記憶を取り戻した途端、海に放り込まれたレニー。【腐女神の祝福】は気になるけれど、裕福な商人の三男に転生したので、まったり気ままに異世界の醍醐味を満喫したいです。神様は出て来ません。ご都合主義、ゆるふわ設定。
途中までしか書いていないので、一話のみ三万字位の短編になります。
他サイトにも投稿しています。

【完結】父を探して異世界転生したら男なのに歌姫になってしまったっぽい
おだししょうゆ
BL
超人気芸能人として活躍していた男主人公が、痴情のもつれで、女性に刺され、死んでしまう。
生前の行いから、地獄行き確定と思われたが、閻魔様の気まぐれで、異世界転生することになる。
地獄行き回避の条件は、同じ世界に転生した父親を探し出し、罪を償うことだった。
転生した主人公は、仲間の助けを得ながら、父を探して旅をし、成長していく。
※含まれる要素
異世界転生、男主人公、ファンタジー、ブロマンス、BL的な表現、恋愛
※小説家になろうに重複投稿しています

囚われた元王は逃げ出せない
スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた
そうあの日までは
忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに
なんで俺にこんな事を
「国王でないならもう俺のものだ」
「僕をあなたの側にずっといさせて」
「君のいない人生は生きられない」
「私の国の王妃にならないか」
いやいや、みんな何いってんの?

信じて送り出した養い子が、魔王の首を手柄に俺へ迫ってくるんだが……
鳥羽ミワ
BL
ミルはとある貴族の家で使用人として働いていた。そこの末息子・レオンは、不吉な赤目や強い黒魔力を持つことで忌み嫌われている。それを見かねたミルは、レオンを離れへ隔離するという名目で、彼の面倒を見ていた。
そんなある日、魔王復活の知らせが届く。レオンは勇者候補として戦地へ向かうこととなった。心配でたまらないミルだが、レオンはあっさり魔王を討ち取った。
これでレオンの将来は安泰だ! と喜んだのも束の間、レオンはミルに求婚する。
「俺はずっと、ミルのことが好きだった」
そんなこと聞いてないが!? だけどうるうるの瞳(※ミル視点)で迫るレオンを、ミルは拒み切れなくて……。
お人よしでほだされやすい鈍感使用人と、彼をずっと恋い慕い続けた令息。長年の執着の粘り勝ちを見届けろ!
※エブリスタ様、カクヨム様、pixiv様にも掲載しています

イケメンチート王子に転生した俺に待ち受けていたのは予想もしない試練でした
和泉臨音
BL
文武両道、容姿端麗な大国の第二皇子に転生したヴェルダードには黒髪黒目の婚約者エルレがいる。黒髪黒目は魔王になりやすいためこの世界では要注意人物として国家で保護する存在だが、元日本人のヴェルダードからすれば黒色など気にならない。努力家で真面目なエルレを幼い頃から純粋に愛しているのだが、最近ではなぜか二人の関係に壁を感じるようになった。
そんなある日、エルレの弟レイリーからエルレの不貞を告げられる。不安を感じたヴェルダードがエルレの屋敷に赴くと、屋敷から火の手があがっており……。
* 金髪青目イケメンチート転生者皇子 × 黒髪黒目平凡の魔力チート伯爵
* 一部流血シーンがあるので苦手な方はご注意ください

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる