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第五章 戦慄の学園祭、到来!!①
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第五章 戦慄の学園祭、到来!!
一
学園祭が間近に迫っていた。
生徒会の仕事は忙しさのピークを迎え、殺人的な量になっていた。一瞬でも気を抜けば、誰が倒れてもおかしくない。ここは、ブラック企業か何かなのかと半ば本気で明人は疑っていた。選ばれし攻略キャラとしてのポテンシャルがなければ、絶対に無理だと言える仕事量が毎日メンバーには降りかかっていた。
そんな中でも、主人公・鈴木ハルトは公私ともに充実した日々を過ごしているようだ。
もちろん、それは水嶋シュウ以外の攻略キャラたちとである。
たまに他の攻略キャラたちが会話をしている内容を漏れ聞いているだけに過ぎない明人だが、それでも鈴木ハルトはメンバー間で大活躍しているようだった。
(……揃いも揃って青春してんだよな……、皆。)
我一人関せずといった態度を涼しい顔で貫きながらも、生活が充実して楽しそうなメンバーの生き生きとした顔を横目で見ながら、明人は少しだけ疎外感を感じていた。
(……くそっ、早く俺も青春を謳歌したいっ!!……くっ、ここがBL世界でなければ……。)
他の攻略キャラたちとは違い、BL展開への抵抗意識が強い明人は、他の攻略キャラたちを羨ましく思いながらも、同じ道を歩もうとは決して思わないのであった。
そんな明人の気持ちを知る由もない主人公・鈴木ハルトは、生徒会に集まった他の攻略キャラたちの真ん中で実に幸せそうにしている。
明人が知っているだけでも、先週の土曜に南野タケルと遊び(デートだろ?それは、もう)に出かけて、日曜には草薙ジンの試合の応援に行き、差し入れのスポーツドリンクを差出し(マネージャーの仕事だろ?それは)、その上、学園祭の作品作りに行き詰っていた道明寺レイには、意図せず天啓のようなアドバイスを与え、そのおかげで作品のモデルにされていた。(モデルになっていることは、まだ本人は知らない。明人が偶然鈴木ハルトにしか見えないレイの作品を見ただけだ。)
先日、偶然遭遇したスオウのイベントのことを含めても、鈴木ハルトは主人公として(主に恋に)大忙しである。
仕事で大忙しの明人とは生活の潤い具合が百八十度違っていた。
(……何で、皆、揃いも揃ってアイツに夢中なんだよ……。変なフェロモンでも出てるのか?アイツは……。)
BL展開に何の抵抗も何の疑問も持たず、他の攻略キャラたちは鈴木ハルトとの仲を深めていく。
それを傍で見ている明人の方が疑問だらけになっていた。
(いや、近隣には女子だって大勢いるんだぞっ!?それとも、この学園には、同性愛の傾向がないと入れないのか?)
いくらここがBLゲームの世界で、彼らが攻略キャラであっても、あまりに自然に仲を深めていく展開には、明人は一言物申さずにはいられなかった。
ただ、それは明人の心の中に降り積もっていくだけで、決して外に出ることはない言葉である。
水島シュウのキャラに相応しくない他の言動と同様に、口に出そうとしても水嶋シュウの口からは零れ出ることは叶わなかった。
今日も今日とて忙しない生徒会室の中で、鈴木ハルトは甘やかされている。
もう一人の南野タケルとは大違いの成長速度でメンバーの足を引っ張ってばかりの鈴木ハルトであるというのに、指導係で会長のスオウをはじめ、メンバー全員が何かしらのフォローを入れている。
(……あんなに甘やかしたら成長しないだろうが……。)
心ではそう思っているが、口に出して関わりたくない明人は、今日も他のメンバーに鈴木ハルトの世話を丸投げして、自分の仕事に精を出すのだった。
一
学園祭が間近に迫っていた。
生徒会の仕事は忙しさのピークを迎え、殺人的な量になっていた。一瞬でも気を抜けば、誰が倒れてもおかしくない。ここは、ブラック企業か何かなのかと半ば本気で明人は疑っていた。選ばれし攻略キャラとしてのポテンシャルがなければ、絶対に無理だと言える仕事量が毎日メンバーには降りかかっていた。
そんな中でも、主人公・鈴木ハルトは公私ともに充実した日々を過ごしているようだ。
もちろん、それは水嶋シュウ以外の攻略キャラたちとである。
たまに他の攻略キャラたちが会話をしている内容を漏れ聞いているだけに過ぎない明人だが、それでも鈴木ハルトはメンバー間で大活躍しているようだった。
(……揃いも揃って青春してんだよな……、皆。)
我一人関せずといった態度を涼しい顔で貫きながらも、生活が充実して楽しそうなメンバーの生き生きとした顔を横目で見ながら、明人は少しだけ疎外感を感じていた。
(……くそっ、早く俺も青春を謳歌したいっ!!……くっ、ここがBL世界でなければ……。)
他の攻略キャラたちとは違い、BL展開への抵抗意識が強い明人は、他の攻略キャラたちを羨ましく思いながらも、同じ道を歩もうとは決して思わないのであった。
そんな明人の気持ちを知る由もない主人公・鈴木ハルトは、生徒会に集まった他の攻略キャラたちの真ん中で実に幸せそうにしている。
明人が知っているだけでも、先週の土曜に南野タケルと遊び(デートだろ?それは、もう)に出かけて、日曜には草薙ジンの試合の応援に行き、差し入れのスポーツドリンクを差出し(マネージャーの仕事だろ?それは)、その上、学園祭の作品作りに行き詰っていた道明寺レイには、意図せず天啓のようなアドバイスを与え、そのおかげで作品のモデルにされていた。(モデルになっていることは、まだ本人は知らない。明人が偶然鈴木ハルトにしか見えないレイの作品を見ただけだ。)
先日、偶然遭遇したスオウのイベントのことを含めても、鈴木ハルトは主人公として(主に恋に)大忙しである。
仕事で大忙しの明人とは生活の潤い具合が百八十度違っていた。
(……何で、皆、揃いも揃ってアイツに夢中なんだよ……。変なフェロモンでも出てるのか?アイツは……。)
BL展開に何の抵抗も何の疑問も持たず、他の攻略キャラたちは鈴木ハルトとの仲を深めていく。
それを傍で見ている明人の方が疑問だらけになっていた。
(いや、近隣には女子だって大勢いるんだぞっ!?それとも、この学園には、同性愛の傾向がないと入れないのか?)
いくらここがBLゲームの世界で、彼らが攻略キャラであっても、あまりに自然に仲を深めていく展開には、明人は一言物申さずにはいられなかった。
ただ、それは明人の心の中に降り積もっていくだけで、決して外に出ることはない言葉である。
水島シュウのキャラに相応しくない他の言動と同様に、口に出そうとしても水嶋シュウの口からは零れ出ることは叶わなかった。
今日も今日とて忙しない生徒会室の中で、鈴木ハルトは甘やかされている。
もう一人の南野タケルとは大違いの成長速度でメンバーの足を引っ張ってばかりの鈴木ハルトであるというのに、指導係で会長のスオウをはじめ、メンバー全員が何かしらのフォローを入れている。
(……あんなに甘やかしたら成長しないだろうが……。)
心ではそう思っているが、口に出して関わりたくない明人は、今日も他のメンバーに鈴木ハルトの世話を丸投げして、自分の仕事に精を出すのだった。
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